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終末へと向かう足音
22-11
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(…誰だっ?)
そう疑問に思いながらも、未だ止まない男達の攻撃に対応することに精一杯で、その人物の顔をよく見ることが出来なかった。
だが、その人物も雅耶に加勢する形で、男達を相手に次々と技を繰り出していく。
(こいつ、なかなかやるな…)
その鮮やかな身のこなしに、雅耶は感心していた。
その人物が入ったことで、明らかにこちらが優勢になって来た頃、脇から一人の男が何事か指示を出し、男達はあっという間に引いて行った。
そして、そこには静寂が戻ってくる。
「……ふぅ…」
雅耶は一呼吸すると、拳で額の汗を拭った。
そして、同じようにその場に佇んで呼吸を整えている人物に目を向ける。
その人物は雅耶の視線に気付くと、ゆっくりとこちらを振り返って微笑みを浮かべた。
「えっ…?…お…前…、は…」
「雅耶…。お久し振り、だね…」
そこに居たのは…。
紛れもない『冬樹』…本人だった。
「冬樹…?ホントに冬樹なのかっ?」
信じられないと言う表情で雅耶はその人物の両肩を掴むと、顔を覗き込んだ。
「うん。幽霊…では、ないよ。残念ながら」
そう言うと、冬樹は悪戯っぽい顔をして笑った。
「バカ。残念な訳ないだろっ!お前っ…無事だったんだなっ。良かった…」
感極まって涙目になっている雅耶に。
「…雅耶…」
冬樹は眉を下げて微笑んだ。
再会を喜び合っていた二人だったが、今の状況を思い出して雅耶はハッとした。
「…っと。そうだ。夏樹を追い掛けないとっ」
慌てて夏樹が向かった道へと足を向ける。
冬樹も頷いて、それに続いた。
「でも、今…並木さんが向かってくれてるハズだから、きっと大丈夫だよ」
「…なみきさん?」
聞き慣れぬ名に、雅耶は思わず足を止めて冬樹を振り返った。
「うん。最強の助っ人…だよ」
微笑みながら冬樹が答えた、その時だった。
道の向こうから「冬樹っ」と、手を上げて走ってくる一人の人物が目に入った。
「あ…並木さんっ」
冬樹も、そちらに大きく手を上げて応えている。
(あれ…?あの人は…)
薄暗くて顔までは良く見えなかったが、街灯が照らすその背格好には見覚えがあった。
それは昼間夏樹を届けに来た、あの謎の男だった。
昼間見せていた柔らかな表情とは違い、男は険しい表情のまま傍までやって来ると、横にいる雅耶に気付いて「さっきは、どうも」…と、一瞬だけ表情を和らげた。
それにつられるように雅耶も軽く会釈を返す。
だが、その並木という男は、すぐに表情を引き締めると言った。
「やられた、冬樹…。向こうに車が待ち伏せしていたんだ…」
「…えっ?」
その言葉に、雅耶は愕然とした。
冬樹も、まさか…という表情で並木を見詰めている。
「面目ない…。俺が行った時には、もう遅かったんだ…」
「それじゃあ、もしかして…なっちゃんは…?」
二人が呆然と立ち尽くす中、並木は申し訳なさそうに瞳を伏せると、悔しげに言った。
「あの子は、神岡に連れて行かれた…」
(夏樹…っ!!)
「…くそっ!」
守りきれなかった悔しさに。
雅耶は、自らの拳をギリギリ…と握りしめるのだった。
そう疑問に思いながらも、未だ止まない男達の攻撃に対応することに精一杯で、その人物の顔をよく見ることが出来なかった。
だが、その人物も雅耶に加勢する形で、男達を相手に次々と技を繰り出していく。
(こいつ、なかなかやるな…)
その鮮やかな身のこなしに、雅耶は感心していた。
その人物が入ったことで、明らかにこちらが優勢になって来た頃、脇から一人の男が何事か指示を出し、男達はあっという間に引いて行った。
そして、そこには静寂が戻ってくる。
「……ふぅ…」
雅耶は一呼吸すると、拳で額の汗を拭った。
そして、同じようにその場に佇んで呼吸を整えている人物に目を向ける。
その人物は雅耶の視線に気付くと、ゆっくりとこちらを振り返って微笑みを浮かべた。
「えっ…?…お…前…、は…」
「雅耶…。お久し振り、だね…」
そこに居たのは…。
紛れもない『冬樹』…本人だった。
「冬樹…?ホントに冬樹なのかっ?」
信じられないと言う表情で雅耶はその人物の両肩を掴むと、顔を覗き込んだ。
「うん。幽霊…では、ないよ。残念ながら」
そう言うと、冬樹は悪戯っぽい顔をして笑った。
「バカ。残念な訳ないだろっ!お前っ…無事だったんだなっ。良かった…」
感極まって涙目になっている雅耶に。
「…雅耶…」
冬樹は眉を下げて微笑んだ。
再会を喜び合っていた二人だったが、今の状況を思い出して雅耶はハッとした。
「…っと。そうだ。夏樹を追い掛けないとっ」
慌てて夏樹が向かった道へと足を向ける。
冬樹も頷いて、それに続いた。
「でも、今…並木さんが向かってくれてるハズだから、きっと大丈夫だよ」
「…なみきさん?」
聞き慣れぬ名に、雅耶は思わず足を止めて冬樹を振り返った。
「うん。最強の助っ人…だよ」
微笑みながら冬樹が答えた、その時だった。
道の向こうから「冬樹っ」と、手を上げて走ってくる一人の人物が目に入った。
「あ…並木さんっ」
冬樹も、そちらに大きく手を上げて応えている。
(あれ…?あの人は…)
薄暗くて顔までは良く見えなかったが、街灯が照らすその背格好には見覚えがあった。
それは昼間夏樹を届けに来た、あの謎の男だった。
昼間見せていた柔らかな表情とは違い、男は険しい表情のまま傍までやって来ると、横にいる雅耶に気付いて「さっきは、どうも」…と、一瞬だけ表情を和らげた。
それにつられるように雅耶も軽く会釈を返す。
だが、その並木という男は、すぐに表情を引き締めると言った。
「やられた、冬樹…。向こうに車が待ち伏せしていたんだ…」
「…えっ?」
その言葉に、雅耶は愕然とした。
冬樹も、まさか…という表情で並木を見詰めている。
「面目ない…。俺が行った時には、もう遅かったんだ…」
「それじゃあ、もしかして…なっちゃんは…?」
二人が呆然と立ち尽くす中、並木は申し訳なさそうに瞳を伏せると、悔しげに言った。
「あの子は、神岡に連れて行かれた…」
(夏樹…っ!!)
「…くそっ!」
守りきれなかった悔しさに。
雅耶は、自らの拳をギリギリ…と握りしめるのだった。
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