【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
282 / 302
終止符ー ピリオド ー

23-1

しおりを挟む
連れて行かれた夏樹を追い掛ける為、雅耶は冬樹達に同行させて貰い、一緒に並木の車に乗って神岡の会社の本社ビルへと向かっていた。


「俺も一緒に連れて行って貰えませんかっ?」

急いで車で追い掛けようと話し合っている並木と冬樹に、雅耶は自ら同行を願い出た。
冬樹は、雅耶ならそう言うだろうと大体予想していたので、並木の出方を待っていた。並木は、雅耶の真剣な表情から僅かな感情の揺れさえも見逃さないというように、じっと見詰めると静かに確認を取るように言った。
「あの子のことが心配なのは分かるが…。これから行く場所は、言わば敵の本拠地だ。さっきの様子だと網代組の関係者にも応援を要請しているようだし、かなりの危険は避けられないぞ?それでも行くと言うのかい?」
その言葉に。
「危険は承知の上です。でも、あいつが危険な目に遭っているのに黙って家で待ってなんかいられないです!」
僅かな心の動揺も見せず、雅耶はキッパリと言い放った。
そんな雅耶の後押しをするように、横から冬樹が補足を加えた。
「雅耶は空手もやっているし、即戦力にはなると思うよ。その辺は、僕が保証するよ」
並木は、暫く迷っている風ではあったが、心を決めると。
「じゃあ、雅耶くん…だったね。一緒に行こう」
そう言って、同行を許可してくれたのだった。

家の方には、電話で連絡を入れておいた。
時間が時間なので、母親は何があったのかと心配して、当然のことながら、なかなか理由を言わないと許可してはくれない様子だった。
だが、冬樹の身に大変なことが起きたということだけ説明し、
『理由は後で、ちゃんと説明するから…。お願いだよ。今、動けずにいたら俺は一生後悔することになる!』
そう、自分の気持ちを伝えると。
すぐ後ろで聞いていたらしい父親が、許可を出してくれたのだ。
その代わりに、
『自分の言葉と行動に責任を持て』
『人様に迷惑は掛けるな』
『そして、絶対に無事に帰ってくること』
という、条件付きで。

有難いと思った。

自分を一人の男として認めてくれたようで。
今の時点では、理由さえも何も語れない自分の『本気』を信じてくれたことが、何もよりも嬉しかった。

(そんな両親に報いる為にも、俺は絶対に夏樹を救ってみせるっ!…待ってろよ、夏樹…。どうか…無事でいてくれっ!)

閑静な住宅地から、徐々に煌びやかな街へと移り変わって行く景色を眺めながら、雅耶は決意を固めるのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

本町絢 外伝 絢と僕の留メ具の掛け違い・・そして

すんのはじめ
青春
絢と僕の留めメ具の掛け違い・・そして  の本町絢の気持ちを綴った物語  水島基君、私の小学校3年のときから、ずーと同級生で席も隣が多かった。あることが、きっかけで私は彼のことを意識し始めて、それから彼の後ろを追いかけて・・  すれ違いもあったけど、彼の夢と私の夢を叶えるため、私は決心した。そして

イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~

川上とむ
青春
内川護は高校の空き教室で、元気な幽霊の少女と出会う。 その幽霊少女は雨宮と名乗り、自分の代わりにイラスト部を復活させてほしいと頼み込んでくる。 彼女の押しに負けた護は部員の勧誘をはじめるが、入部してくるのは霊感持ちのクラス委員長や、ゆるふわな先輩といった一風変わった女生徒たち。 その一方で、雨宮はことあるごとに護と行動をともにするようになり、二人の距離は自然と近づいていく。 ――スキンシップ過多の幽霊さんとスクールライフ、ここに開幕!

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

処理中です...