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違和感の先にあるもの
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「ただ、気になるのが…さ…」
直純が言葉にするのをどうしようか迷っている風な素振りを見せる。
「そいつが現れるのは、冬樹がいる時だけなのかも知れない…って、最近、気付いたんだ…」
「…冬樹くんの後をついてまわっている…ってことか?」
その言葉に、直純はうーん…と唸ると。
「分からない…。俺の考え過ぎであればいい…とは思う」
珍しく真面目な面持ちを崩さずに話す直純に。
「でも、実際…お前がそんな顔してるってことは、その想いとは反対のことが起きているのかもな…」
「………」
その言葉を否定しない辺り、直純自身もそう思っているのだろう。
仁志は掛けていた眼鏡を外すと、エプロンのポケットからクロスを取り出し、レンズを拭きながら言った。
「…ストーカーの類か何かか?冬樹くんなら有り得る話かも知れないが…」
「…にしては、ちょっと…うーん…」
顎に手を当てて考え込んでいる直純に。
「お前は違うとみてる訳か…」
仁志は小さく息を吐いた。
仁志が先程から自分の表情を読みながら話を進めていることに気付いた直純は、クスッ…と笑うと。
カウンター越しに、仁志の方を振り返って言った。
「よく…分かんないんだけどさ、もっとそういうのに慣れてる感じがするんだ」
「そういうのって…?…尾行にか?」
磨いた眼鏡を掛け直しながら眉間にしわを寄せている仁志に、直純は小さく「ああ…」と、頷くと言った。
「あれは多分…その手のプロだ…」
冬樹はバイトを終えた後、いつも通り自分のアパートへと向かって歩いていた。
家までの道のりは、店から徒歩20分程度だが、駅前から少し離れてしまえば殆ど住宅街の中を歩くことになる。時刻はもう夜9時を回っているので、周囲を見回してみても人通りは殆どない。
(帰ったら、とりあえずシャワー浴びて、今日はテスト範囲の課題を全部終わらせちゃおう…)
いよいよ明後日から期末テストが始まるのだ。その為、テスト前日に当たる明日からバイトはお休みを貰っている。
冬樹は、気持ち少しだけ足を速めると自宅を目指した。が…。
(何だ…?)
突然、異様な殺気を感じて、冬樹はビクリ…と足を止めた。
咄嗟に後ろを振り返るが、周辺には誰もいない。
(なんだ…?この感じ…。…どこかで…)
誰かに見られている感じがする。
(でも…何処から…?)
蒸し暑い中なのに、ザワザワと鳥肌が立つような感覚が冬樹を襲う。
嫌な予感がした。
冬樹は震えそうになる身体を奮い立たせると、思い切って駆け出した。
自分の心音と足音だけが、妙に大きく耳に届いていた。
直純が言葉にするのをどうしようか迷っている風な素振りを見せる。
「そいつが現れるのは、冬樹がいる時だけなのかも知れない…って、最近、気付いたんだ…」
「…冬樹くんの後をついてまわっている…ってことか?」
その言葉に、直純はうーん…と唸ると。
「分からない…。俺の考え過ぎであればいい…とは思う」
珍しく真面目な面持ちを崩さずに話す直純に。
「でも、実際…お前がそんな顔してるってことは、その想いとは反対のことが起きているのかもな…」
「………」
その言葉を否定しない辺り、直純自身もそう思っているのだろう。
仁志は掛けていた眼鏡を外すと、エプロンのポケットからクロスを取り出し、レンズを拭きながら言った。
「…ストーカーの類か何かか?冬樹くんなら有り得る話かも知れないが…」
「…にしては、ちょっと…うーん…」
顎に手を当てて考え込んでいる直純に。
「お前は違うとみてる訳か…」
仁志は小さく息を吐いた。
仁志が先程から自分の表情を読みながら話を進めていることに気付いた直純は、クスッ…と笑うと。
カウンター越しに、仁志の方を振り返って言った。
「よく…分かんないんだけどさ、もっとそういうのに慣れてる感じがするんだ」
「そういうのって…?…尾行にか?」
磨いた眼鏡を掛け直しながら眉間にしわを寄せている仁志に、直純は小さく「ああ…」と、頷くと言った。
「あれは多分…その手のプロだ…」
冬樹はバイトを終えた後、いつも通り自分のアパートへと向かって歩いていた。
家までの道のりは、店から徒歩20分程度だが、駅前から少し離れてしまえば殆ど住宅街の中を歩くことになる。時刻はもう夜9時を回っているので、周囲を見回してみても人通りは殆どない。
(帰ったら、とりあえずシャワー浴びて、今日はテスト範囲の課題を全部終わらせちゃおう…)
いよいよ明後日から期末テストが始まるのだ。その為、テスト前日に当たる明日からバイトはお休みを貰っている。
冬樹は、気持ち少しだけ足を速めると自宅を目指した。が…。
(何だ…?)
突然、異様な殺気を感じて、冬樹はビクリ…と足を止めた。
咄嗟に後ろを振り返るが、周辺には誰もいない。
(なんだ…?この感じ…。…どこかで…)
誰かに見られている感じがする。
(でも…何処から…?)
蒸し暑い中なのに、ザワザワと鳥肌が立つような感覚が冬樹を襲う。
嫌な予感がした。
冬樹は震えそうになる身体を奮い立たせると、思い切って駆け出した。
自分の心音と足音だけが、妙に大きく耳に届いていた。
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