119 / 302
違和感の先にあるもの
9-10
しおりを挟む
「ただ、気になるのが…さ…」
直純が言葉にするのをどうしようか迷っている風な素振りを見せる。
「そいつが現れるのは、冬樹がいる時だけなのかも知れない…って、最近、気付いたんだ…」
「…冬樹くんの後をついてまわっている…ってことか?」
その言葉に、直純はうーん…と唸ると。
「分からない…。俺の考え過ぎであればいい…とは思う」
珍しく真面目な面持ちを崩さずに話す直純に。
「でも、実際…お前がそんな顔してるってことは、その想いとは反対のことが起きているのかもな…」
「………」
その言葉を否定しない辺り、直純自身もそう思っているのだろう。
仁志は掛けていた眼鏡を外すと、エプロンのポケットからクロスを取り出し、レンズを拭きながら言った。
「…ストーカーの類か何かか?冬樹くんなら有り得る話かも知れないが…」
「…にしては、ちょっと…うーん…」
顎に手を当てて考え込んでいる直純に。
「お前は違うとみてる訳か…」
仁志は小さく息を吐いた。
仁志が先程から自分の表情を読みながら話を進めていることに気付いた直純は、クスッ…と笑うと。
カウンター越しに、仁志の方を振り返って言った。
「よく…分かんないんだけどさ、もっとそういうのに慣れてる感じがするんだ」
「そういうのって…?…尾行にか?」
磨いた眼鏡を掛け直しながら眉間にしわを寄せている仁志に、直純は小さく「ああ…」と、頷くと言った。
「あれは多分…その手のプロだ…」
冬樹はバイトを終えた後、いつも通り自分のアパートへと向かって歩いていた。
家までの道のりは、店から徒歩20分程度だが、駅前から少し離れてしまえば殆ど住宅街の中を歩くことになる。時刻はもう夜9時を回っているので、周囲を見回してみても人通りは殆どない。
(帰ったら、とりあえずシャワー浴びて、今日はテスト範囲の課題を全部終わらせちゃおう…)
いよいよ明後日から期末テストが始まるのだ。その為、テスト前日に当たる明日からバイトはお休みを貰っている。
冬樹は、気持ち少しだけ足を速めると自宅を目指した。が…。
(何だ…?)
突然、異様な殺気を感じて、冬樹はビクリ…と足を止めた。
咄嗟に後ろを振り返るが、周辺には誰もいない。
(なんだ…?この感じ…。…どこかで…)
誰かに見られている感じがする。
(でも…何処から…?)
蒸し暑い中なのに、ザワザワと鳥肌が立つような感覚が冬樹を襲う。
嫌な予感がした。
冬樹は震えそうになる身体を奮い立たせると、思い切って駆け出した。
自分の心音と足音だけが、妙に大きく耳に届いていた。
直純が言葉にするのをどうしようか迷っている風な素振りを見せる。
「そいつが現れるのは、冬樹がいる時だけなのかも知れない…って、最近、気付いたんだ…」
「…冬樹くんの後をついてまわっている…ってことか?」
その言葉に、直純はうーん…と唸ると。
「分からない…。俺の考え過ぎであればいい…とは思う」
珍しく真面目な面持ちを崩さずに話す直純に。
「でも、実際…お前がそんな顔してるってことは、その想いとは反対のことが起きているのかもな…」
「………」
その言葉を否定しない辺り、直純自身もそう思っているのだろう。
仁志は掛けていた眼鏡を外すと、エプロンのポケットからクロスを取り出し、レンズを拭きながら言った。
「…ストーカーの類か何かか?冬樹くんなら有り得る話かも知れないが…」
「…にしては、ちょっと…うーん…」
顎に手を当てて考え込んでいる直純に。
「お前は違うとみてる訳か…」
仁志は小さく息を吐いた。
仁志が先程から自分の表情を読みながら話を進めていることに気付いた直純は、クスッ…と笑うと。
カウンター越しに、仁志の方を振り返って言った。
「よく…分かんないんだけどさ、もっとそういうのに慣れてる感じがするんだ」
「そういうのって…?…尾行にか?」
磨いた眼鏡を掛け直しながら眉間にしわを寄せている仁志に、直純は小さく「ああ…」と、頷くと言った。
「あれは多分…その手のプロだ…」
冬樹はバイトを終えた後、いつも通り自分のアパートへと向かって歩いていた。
家までの道のりは、店から徒歩20分程度だが、駅前から少し離れてしまえば殆ど住宅街の中を歩くことになる。時刻はもう夜9時を回っているので、周囲を見回してみても人通りは殆どない。
(帰ったら、とりあえずシャワー浴びて、今日はテスト範囲の課題を全部終わらせちゃおう…)
いよいよ明後日から期末テストが始まるのだ。その為、テスト前日に当たる明日からバイトはお休みを貰っている。
冬樹は、気持ち少しだけ足を速めると自宅を目指した。が…。
(何だ…?)
突然、異様な殺気を感じて、冬樹はビクリ…と足を止めた。
咄嗟に後ろを振り返るが、周辺には誰もいない。
(なんだ…?この感じ…。…どこかで…)
誰かに見られている感じがする。
(でも…何処から…?)
蒸し暑い中なのに、ザワザワと鳥肌が立つような感覚が冬樹を襲う。
嫌な予感がした。
冬樹は震えそうになる身体を奮い立たせると、思い切って駆け出した。
自分の心音と足音だけが、妙に大きく耳に届いていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】俺を振った元カノがしつこく絡んでくる。
エース皇命
青春
〈未練たらたらな元カノ×エロ教師×超絶ブラコン姉さん〉
高校1年生の山吹秋空(やまぶき あきら)は、日曜日のデート後に彼女である長谷部千冬(はせべ ちふゆ)に別れを切り出される。
同棲してくれるなら別れないであげる、という強烈な条件に愛想を尽かし別れることを了承した秋空だったが、それからというもの、千冬のしつこい絡みが始まることになる……。
頭のおかしい美人教師と、秋空を溺愛する姉、秋空が千冬と別れたことで秋空を狙うクラスメイトの美少女たち。
クセの強い友達に囲まれる、秋空の苦悩に満ちた学校生活!
※小説家になろうにも投稿しています。
【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!
as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。
しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
遠い空のデネブ
雪鳴月彦
青春
僕たちは夢を追う。
その夢が叶うのか、道半ばで挫折するのか。
そんなありきたりで残酷な不安や憂鬱感を引きずりながら、それでも未来を目指す僕たちにとって、妃夏はきっと遠い空に輝く道標のような存在だったのかもしれない――。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】君が消えた仮想世界と僕が願った並行世界
ユキノ
青春
ローファンタジーアニメの設計図。30分尺のシナリオが1クール分。
理系アニメオタクがろくに読んだこともないのに小説を書いたらこうなった。
◆魂の入れ替わり
◆心の声を聞く力
◆予知能力!?
◆記憶の干渉における時間の非連続性
◆タイムリープ
◆過去改変の観測
◆異能力バトらない!?
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる