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第八章 江東の小覇王と終焉の刻
第九十九話 王允の侍女
しおりを挟む“麗蘭”と名乗るその娘は、その日から王子師の屋敷で侍女として仕える事になった。
しかし、その美しい侍女の噂は忽ち街中に広まり、やがて董仲穎の知る所となったのである。
「王司徒、そなたの屋敷に仕える侍女は大層な美女だと、最近噂になっているそうではないか。」
「ははは…っ、董太師、長安の人々は噂をするのが好きなのです。わしからすれば、侍女はごく普通の娘に過ぎませんよ。」
朝廷に参内して来た子師を呼び止め、仲穎が微笑を浮かべて問い掛けると、彼は少し困った様に答えて笑い、その場を取り繕った。
すると、仲穎は鋭く眼光を光らせながら子師の顔を覗き込むと、
「“百聞不如一見”(百聞は一見に如かず)と申す。美女かどうかは、わしが判断しようではないか…!」
そう言って口の両端を歪め、にやりと笑う。
子師は彼の眼光を落ち着いた態度で受け止めたが、内心肝を冷やしていた。
急ぎ屋敷へと舞い戻った子師は、慌てて侍女の姿を探して回り、やがて庭先で掃き掃除をしている姿を見付けると、蒼白になりながら駆け寄り彼女の肩を強く掴んだ。
「孟徳殿…!いや、麗蘭殿!大変な事になった!」
「子師様、そんなに慌てて、どうしたのです?」
彼の慌て振りを見て、少し可怪しげに小さく笑う麗蘭は、明るい日差しに輝くその美しい微笑みも、しなやかな仕草も、まるで絶世の美女其の物である。
「今宵の宴に貴方を連れて来るようにと、仲穎から申し渡されてしまったのだ…!」
「董仲穎が…?!」
それを聞いて、麗蘭は思わず目を瞠った。
「貴方の正体が彼に知られれば、徒では済まされぬ…!やはり、危険を冒してまで長安へ来るべきでは無かったのだ…曹孟徳殿…!」
子師は頭を抱え、苦悶の表情で大きく嘆息する。
そんな彼の肩に手を乗せると、
「ご心配には及びません。長安では、曹孟徳は既に死んだと噂されています。まさか、子師様の屋敷で働く侍女が私だとは夢にも思いますまい…!」
「し、しかし…仲穎の勘の鋭さは侮れぬ。病と称して断るしか…」
「大丈夫です、私を信じて下さい…!」
弱気な態度を示す子師に、微笑を浮かべた麗蘭は、自信のある声色でそう答えた。
丁度同じ頃、仲穎の軍師である李文優は、ある人物の屋敷を訪れていた。
家人に案内されながら門を潜り、居室へと向かって続く長い廊下を歩いて行く。
やがて辿り着いた居室の扉が開かれると、そこで待っていた屋敷の主と面会した。
「呂奉先殿、突然お邪魔して申し訳ありません。」
文優は恭しく彼に向かって拱手し、丁寧にお辞儀をする。
その様子を黙って見詰めていた奉先だったが、
「軍師殿が、俺に何の御用でしょう…?」
と、少し訝しげな眼差しのまま彼に礼を返し、問い掛けた。
すると文優は顔を上げ、
「実は、少し気に掛かる事がありましたので…」
そう言って、彼は無表情のまま奉先をじっと見詰めた。
「雒陽に居た頃、貴方に陳公台殿の士官先を探して欲しいと頼まれ、地方官の職場を紹介したのですが…どうやら、そこに公台殿は現れなかった様なのです。ご存知でしたか?」
「…長安へ来てから彼とは連絡を取っておらず、知らなかった。」
文優に鋭い視線を注がれながらも、奉先は眉一つ動かさずそう答えた。
「そうですか…長安遷都で繁雑としておりましたが、公台殿の行方を調査させた所、その後どうやら曹孟徳の元へ奔たらしいのです。曹孟徳と公台殿の間に、何か関係があったのでしょうか…?」
「………」
奉先は黙って彼を見詰め返していたが、更に探る様な視線を送る文優に、次第に苛立ちを漂わせ、
「俺を疑っているのか?」
と言わんばかりの威圧的な眼差しで睨んだ。
しかし、文優は怯んだ様子を一切見せず、切れ長な目を更に少しだけ細めると、
「公台殿は…病で任地へ行けなくなったと断り、別の者を行かせました。その事は揉み消しておきましたので、ご心配なさらず。」
そう言って、彼にしては珍しく小さくだが口元に笑みを浮かべる。
「……?!」
少し困惑した表情の奉先に、文優は更にこう言った。
「言った筈ですよ。私は、貴方の味方だと…」
「それは、どう言う意味です…?」
「私には最初から、貴方が此処へ来た理由が分かっています。」
訝しげに問い掛ける奉先に、文優は涼し気な表情のまま答える。
「全ては、丁将軍の計画だったのですから…」
「!?」
その言葉に、奉先は思わず瞠目した。
「父上の元へ刺客を送り込んだのは、貴方ではないのか?!」
「その通りです。」
稍々語気を荒らげて問い詰める奉先に、文優は冷静な口調で答える。
「それが、彼の望みだったからです。」
「望み…だと?!」
「丁将軍と私は、古くから親交がありました。私が董仲穎の臣下となったのも、丁将軍の計画の一部です。」
「………?!」
淡々と語る文優の言葉に、奉先は激しい目眩を感じ始めた。
「丁将軍は、自らの命を賭けて、仲穎抹殺の為の計画をお立てになったのです…!」
「ま、まさか…!そんな事が…」
全身から血の気が失せて行くのを感じ、奉先はその場に立っているのもやっとな状態であったが、激しい動悸を抑えながら鋭く文優を睨み付ける。
「父上は、最初から死ぬ積もりだったと言うのか…?!俺を騙そうと思っても無駄だぞ…!」
「貴方はご存知無いでしょうが…丁将軍は、不治の病に罹っておられました。余命が幾許も無い事を、自ら悟っておられたのです。」
強い衝撃を受けた奉先は言葉を失った。
脳裏に、在りし日の丁建陽の姿が鮮やかに蘇る。
彼は、奉先の前で一切その様な素振りを見せた事は無かった。
「董仲穎を斃すには、それ相応の犠牲は覚悟の上…丁将軍は自分が仲穎に殺されれば、きっと貴方は仇を討とうとするだろうと考えた。あの男を斃せるのは貴方しか居ないと、彼はそう信じておられたのです。」
奉先は目元を赤く滲ませながら、冷めた目付きで語る文優を黙したまま真っ直ぐに見詰めている。
「当初、私は貴方を故意に寝返らせる策を勧めましたが、丁将軍はそれに難色を示され、貴方には一切何も知らせず刺客によって殺される事を望まれたのです。暗殺計画に貴方を関与させたく無かったのでしょう…しかし、結果的に貴方はご自分で計画に関与し、有ろう事か自ら暗殺の首謀者となった。」
『お前に、辛い運命を背負わせてしまったな…赦してくれ…』
そう言って、最期に大粒の涙を流した建陽の姿を思い出すと目頭が熱くなる。
「俺は…父上の計画を、ぶち壊しにしたのか…」
呆然とその場に立ち尽くした奉先は、そう呟くと深く項垂れた。
文優は静かに彼に歩み寄り、その肩にそっと手を乗せ彼の耳元で囁く様に言った。
「ぶち壊しにした処か、貴方は見事に役目を果たして下さいましたよ。自ら裏切り者の汚名を被ってくれたのですから…董仲穎は今、貴方を最も信頼しております。」
「………」
「丁将軍の期待に応えられるよう…必ず、計画を成功させねば成りません…!」
最後に、文優は鋭い眼差しで彼の顔を覗き込みそう言うと、そのまま静かに居室から立ち去って行った。
居室に一人残された奉先は、項垂れたままやがて膝を折り、その場に跪いた。
強く瞼を閉じると、少し悲しげな眼差しで彼を見詰める父、建陽の姿が浮かび上がる。
父上は最期まで、俺の事を心配してくれていた…
そして…最期まで、俺を信頼してくれていたのだ…
これこそが、本物の父の愛というものであろう…!
そう思うと、胸の奥に熱いものが込み上げて来るのを感じ、赤く充血した目を開いて虚空を睨み付けた。
董仲穎を、必ず俺の手で抹殺する…!!
奉先は拳を固く握り締め、決意を新たに誓った。
「奉先…」
振り返ると、部屋の入口に雲月が心配げな眼差しで立っている。
「どうした?」
「董仲穎が、今宵宴を開くので出席する様にと、使者の者から伝達が…」
「今宵?急だな…」
奉先は眉を顰めて呟いたが、やがて目を細めて妻の姿を見詰め、優しく声を掛ける。
「分かった、直ぐに支度をしよう。お前は最近、体調が優れぬと言っていたであろう。休んでいなくて大丈夫か?」
すると、雲月は少し言い出し難そうに視線を逸らすと、
「…それなのだが、実は…」
と言って、奉先の傍らに腰を下ろし、口元に手を翳して彼の耳に小さく何かを囁いた。
「…え?本当か…?!」
彼女の言葉に驚きを示し、奉先は目を瞠って彼女の顔を見上げた。
雲月は少し恥じらいながら、頬を紅く染め小さく頷く。
「医師に診てもらったら、間違いないと言われた。」
「そうか…それは良かった…!」
少し戸惑いつつも奉先は顔を綻ばせ、雲月の体を持ち上げて自分の膝の上に乗せると、その体を優しく抱き締めた。
雲月は両腕を彼の肩に回し、憂いのある眼差しで囁く。
「奉先、お前の事が心配だ。お前には、私だけでは無い…貂蝉や俊たちも居るであろう?忘れないでくれ…」
「ああ、分かっている…俺は今まで、色々なものを失って来たが、その分多くの掛け替えのないものを手に入れた。お前たちが俺を支えてくれている…これからも、側で支え続けていて欲しい…」
そう言って、雲月の背中に掛かる艷やかな髪を撫でると、雲月はうっとりと彼の肩に頭を凭れながら小さく頷き瞼を閉じた。
夜、仲穎の屋敷を訪問すると既に多くの来客があり、会場となった大広間は賑わっていた。
仲穎の姿はまだ無かったが、屋敷の使用人が奉先を仲穎のすぐ隣の席へと誘う。
周りを見渡すと、向かいの席には軍師の李文優の姿もあった。
目が合うと、彼は無表情のまま奉先を見詰め小さく頷く。
「………」
奉先も彼の切れ長な目を見詰めると、黙ったまま同じ様に小さく頷いて見せた。
やがて大広間に仲穎が姿を現すと、辺りは水を打った様に静まり返り、来客は皆、腫れ物に触れぬ様にと怯えた様子で頭を低く下げ、悠然と席へ向かって歩く仲穎を見送っている。
どいつもこいつも、腰抜けばかりよ…
仲穎はそんな来客たちを一瞥し、ふんっと鼻を鳴らして侮蔑の表情を浮かべた。
やがて席に着くと、
「皆よく集まってくれた。今宵は、存分に愉しんでくれ。」
そう言って相好を崩し、美女たちを呼び寄せて客たちに酌をさせて回らせる。
「それから、今日は特別な嗜好を用意した。」
更に、仲穎が楽しげな声で言うと、皆興味を示し彼に注目した。
その様子を見ると、仲穎は満足気な笑みを瞳に湛え、にやりと口を歪めて笑う。
「王司徒の屋敷に仕える美しい侍女が町中で噂になっているそうだが…今宵は、その美女をここで披露してもらう…!」
広間に響き渡る大声でそう言うと、客たちからは騒めきが上がった。
王子師の侍女の噂は皆知ってはいるが、間近でその姿を見た者は数少なく、その場にいる客の殆どは目にした事が無かったのである。
「その侍女が本当に美女かどうか、わしがこの目で判断してやる…もし、その娘が美女では無かったら…」
仲穎はそう言って徐に立ち上がり、腰に佩いた剣を抜き放つ。
その光景に、客たちは皆驚き息を呑んだ。
「町の者を騙した欺瞞の罪で、わしがこの場で斬り捨てる…!」
仲穎は眼光を鋭く光らせると、剣先を客たちに向けて言い放つ。
「………!」
隣の席に座っていた奉先も、眉を顰めて仲穎の姿を見上げていた。
やがて王子師が広間に現れ、仲穎の前へ進み出て彼に揖礼し深々と頭を下げる。
「太師、お約束通り私の侍女を連れて参りました。先ずは、御目通り願いたく…」
「前置きは良い。早く侍女を此処へ連れて参れ…!」
仲穎は稍々苛立った様に怒鳴り、目の前に跪く子師を睨み付ける。
青褪めた子師は小さく体を震わせ、少し狼狽えながら額に大粒の汗を浮かべていた。
「か、畏まりました。では…」
そう言うと、子師は躊躇いがちに仲穎の前から退き、使用人に短く耳打ちをする。
暫くの後、漸く広間に現れたのは、色鮮やかな唐紅の着物に身を包み、長い艷やかな黒髪を肩に流した美しい侍女の姿であった。
「おお…!」
仲穎の前まで進み出る美しいその侍女の姿に、来客たちからは感嘆の声と溜め息が漏れ聞こえる。
侍女は仲穎の前で跪き、丁寧に礼をした。
その所作の美しさ、優雅さも見る者の目を惹き付ける。
「董太師、今宵は私の琴をご披露致します。」
そう言って、携えていた布の包みを広げて琴を取り出し膝の上に置くと、侍女は長い睫毛を伏せ、靭やかな指先で弦を弾き始めた。
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