コンビニ転生・ニートだった俺がどうやって業務用電子レンジを使いこなせるようになったか

超プリン体

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第一章・ハイテク・プリズン『電子レンジ地獄』

第九話・妖精セファの思い出

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 「ハイテク・プリズン」に拉致され、課せられたゲーム、『電子レンジ地獄』をステージ2までクリアした富樫は、疲れてしばらく眠っていた。ごろりと寝返りをうって横向きになり、ふっと目をあけると、目の前にコンビニ妖精セファの、小さな体があった。彼女も床で、自分の腕を枕にして眠っていた。富樫はそっと手を伸ばし、セファの肩にふれてみた。


(ちいさい。けど、しっかりと触れられる。夢や幻じゃない)


 セファの身長は30センチ弱、バービー人形とかリカちゃん人形を思わせる。


(服もちっちぇえええ、って、服の下はどうなってるのかな。あ、スカートがめくれて見えそう……。ちょっと直しといてやるか)


 富樫の手が、セファの肩から背中へ、そしてやわらかい腰へと、そろそろと移動する。そのとき、セファの目がぱちっと開いた。慌てて手をひっこめる富樫。


「セ、セファ! お、おはよう……」


 めくれたスカートを直し、じと目で富樫を見つめていたセファが、ぽつりと言った。


「エッチセンサー、働かなかったのかなぁ。ちょっと感度を上げとかなきゃ」


 セファが片手で空中にくるくると円を書くと、その円が緑色に輝いた。瞬間、富樫の耳に、かちっというかすかな音が聞こえた。


「エ、エッチセンサー?!」


「そうよ、誰かがあたしにエッチなことをしようとすると、張り巡らされたエッチセンサーが反応して、地下に隠されている大量のマシンガンがせり上がってきて、そいつを銃殺するようプログラミングしてあるの。オフにしたまま寝ちゃってたのね。危ない所だったわ、怖い怖い!」

セファは起き上がって身震いしてみせた。


「そ、そういえばあまちゃんも、センサーがどうとか言ってたが、それってホントにあるのか?」


「うん、あるよ。ただ、エッチな感情ってちょっとしたことで高まって、すぐにセンサーが反応しちゃうから、普段は切ってあったり、感度を下げてあったりするの」


「そ、そうか、さっきはせっかくスイッチが切れてたのに、残念なことをした」


 富樫は強がりを言いながら、起き上がった。本当にエッチセンサーが働くか、試してみたいと少し思ったが、そんなことのために無駄死を体験するのはまっぴらごめんだ。


「しかし、なんでマシンガンなんていう物騒なものを」


「そ……、それは、秘密よ」


「そうか……」


 一瞬セファの顔に走った悲痛な表情を見て、富樫はそれ以上の質問をやめた。そんな富樫の顔をちらっと見たセファは、言葉を続けた。


「少しだけ、話せる事だけ話すとね、あたしが生まれたのは、ドイツの森の中だったの。しばらくして戦争が起こって、罪もない人々が、たくさん殺されて……。あたしはね、そんな人達の復讐のために、このハイテク・プリズンを作ったの。民間人を虐殺した兵士たちを閉じ込めて、そいつらが使ってたマシンガンを、自動制御に改造して追い回して、その怖がる所を見て、あたしはわらってた。って、秘密にするつもりだったのに、全部言っちゃったよ、あはは」


「お、おう……。で、その時作ったものを、再利用してるんだな?」


「うん。女の子を泣かす男を、あたしは絶対に許さない」


 そうか、それでか、と富樫は気付いた。富樫と最初に会った時のセファの怒りはものすごかったが、そういう、過去の悲痛な体験からくるものだったのだろう。女性の涙は、セファの怒りの感情に火を付け、爆発させるのだ。ど、どこがホワイトニンフだ、と富樫は思ったが、怖くて黙っていた。


「ずっとあたしだけの秘密だったんだけど、話せて少しすっきりしたよ。聞いてくれてありがとうトガシ」


「いや、気にすんな。で、次はステージ3だけど、どんなお題か事前に教えてもらえるか?」


「うん、いいよ。さっきも言ったように、あなたの今の目標は、ダークニンフののテストに合格すること。だからそのテストに出そうな知識を、効率よく覚えていかないといけない。だからね、次はクレーマー対策にします」


「なに?」


 この世で最も怖いのは人間、そしてその人間の中で、最も怖いのがクレーマーだ。富樫の顔から、血の色が消えた。


「大丈夫だいじょうぶ、難易度は下げておくから。それに、失敗しても1回殺されるだけだから。それに、そのクレーマーは、トガシの大好きなあまちゃんだから!」


 セファがかわいく微笑んだが、富樫の脳裏には、富樫に拳銃を向けた時の、富樫を見下すあまちゃんの顔が浮かび、心の底から震えが走った。


(だめだ、今、死亡フラグが立ったよ)


と、富樫は絶望に目を閉じ、泣きたくなった。
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