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第一章・ハイテク・プリズン『電子レンジ地獄』
第八話・ホワイトニンフとダークニンフ
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「は!」
富樫が気づくと、彼は再びセファのいる暗闇に横たわっていた。身体を起こすと、セファが鼻先に近づいてきた。
「ステージ2のクリア、おめでとう。報酬はどうだった?」
「報酬? ああ、ドリアとお茶はおいしかったよ」
「そうじゃなくて、あまちゃんとのデートのことよ。楽しかった?」
「え? あ、ああ……。楽しかったよ、ありがとな」
一瞬、どう答えようかと考えた富樫だったが、正直な気持ちを伝えた。これからこのゲームが何ステージあるのかわからないが、その報酬として、またあまちゃんとデート出来るものならしてみたかったからだ。
「よかった。じゃあまたどこかにデートの報酬を入れることにするね」
「お、おう! そう言えばこのゲームって、何ステージまであるんだ?」
「それは……、ホントは秘密なんだけど、教えてあげようかな。このゲームはね、コンビニにとって邪魔になったり、コンビニと敵対するような人を閉じ込めて、無害になるまで人格改造をしてから、元の世界に戻してあげるっていうものなの」
「な……、人格改造、だと? ひでえな……」
「それでね、ステージ1しかクリアしてなくても、もう充分反省していたり、無害になったってあたしが判断すれば、それ以上、このゲームを続ける必要はないのよ」
「そ、そうなのか……。じゃあ、俺はまだ、お前に許されていないってことなのか?」
「うーん……。正直ステージ1で一度死んじゃったときの、トガシの様子を見て、ちょっとやりすぎたかなあって思ったし、さっきのデートで、あまちゃんに謝りたいと思ってるのもわかったから、もう大丈夫かなって思ってるんだけど……」
「けど?」
腕組みをしながら、難しい顔で考えているセファは、富樫の真剣な表情を見て、しょうがなく次の秘密を明かし始めた。
「あなたを元の世界に戻すために、2つ大きな試練を受けてもらわないといけないの。一つは、あたし以外のもう一人のコンビニ妖精の、テストに合格しないといけないの。そのテストの内容は、あなたが現実で犯した罪の、重さによって決められる」
「テスト……、か。俺が嫌いな言葉だ。やっぱり俺には無理かもな」
富樫はごろりと横になって、両手で顔をおおった。
「ちょ……、いつもあきらめるの早すぎ! と言っても……、あなたのテストを行うのは、たぶんあたし達ホワイトニンフと仲の良くない、ダークニンフの娘だから、もしかしたらいじわるされるかも。はぁ……」
初めて聞いたセファの深いため息に驚いた富樫は、ちらっとセファの様子を盗み見た。その視線に気づいたセファは、寝転がる富樫の顔近くに舞い降り、漆黒の床の上に、膝をくずして座り、富樫にほほ笑んだ。
「あたしが気弱になっちゃダメだね。ごめんトガシ。まあ要するに、あたしがいくらあなたを許しても、そのダークニンフの娘を納得させないと、元の世界に戻るチケットがもらえないの。でも安心して、あたしがなんとかするから。時間はたっぷりあるんだから」
「セ、セファ……、お前やさしいな」
「まあね、こう見えてもホワイトニンフだからね」
「あきらめたらそこで終わり、だよな。がんばらなきゃ。がんばって元の世界にもどって、あまちゃんに謝らなきゃ……」
富樫はそう言いながら、肩を抱いて目を閉じ、すうすうと寝息を立て始めた。セファは思う。この空間には、昼も夜もなく、いつも真っ暗闇だ。時間の概念なんてないから、寝たい時に寝ればいい。疲れたら休めばいい。その代わり、起きたらまたがんばるんだよトガシ……。そう、このハイテク・プリズンでの富樫の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
富樫が気づくと、彼は再びセファのいる暗闇に横たわっていた。身体を起こすと、セファが鼻先に近づいてきた。
「ステージ2のクリア、おめでとう。報酬はどうだった?」
「報酬? ああ、ドリアとお茶はおいしかったよ」
「そうじゃなくて、あまちゃんとのデートのことよ。楽しかった?」
「え? あ、ああ……。楽しかったよ、ありがとな」
一瞬、どう答えようかと考えた富樫だったが、正直な気持ちを伝えた。これからこのゲームが何ステージあるのかわからないが、その報酬として、またあまちゃんとデート出来るものならしてみたかったからだ。
「よかった。じゃあまたどこかにデートの報酬を入れることにするね」
「お、おう! そう言えばこのゲームって、何ステージまであるんだ?」
「それは……、ホントは秘密なんだけど、教えてあげようかな。このゲームはね、コンビニにとって邪魔になったり、コンビニと敵対するような人を閉じ込めて、無害になるまで人格改造をしてから、元の世界に戻してあげるっていうものなの」
「な……、人格改造、だと? ひでえな……」
「それでね、ステージ1しかクリアしてなくても、もう充分反省していたり、無害になったってあたしが判断すれば、それ以上、このゲームを続ける必要はないのよ」
「そ、そうなのか……。じゃあ、俺はまだ、お前に許されていないってことなのか?」
「うーん……。正直ステージ1で一度死んじゃったときの、トガシの様子を見て、ちょっとやりすぎたかなあって思ったし、さっきのデートで、あまちゃんに謝りたいと思ってるのもわかったから、もう大丈夫かなって思ってるんだけど……」
「けど?」
腕組みをしながら、難しい顔で考えているセファは、富樫の真剣な表情を見て、しょうがなく次の秘密を明かし始めた。
「あなたを元の世界に戻すために、2つ大きな試練を受けてもらわないといけないの。一つは、あたし以外のもう一人のコンビニ妖精の、テストに合格しないといけないの。そのテストの内容は、あなたが現実で犯した罪の、重さによって決められる」
「テスト……、か。俺が嫌いな言葉だ。やっぱり俺には無理かもな」
富樫はごろりと横になって、両手で顔をおおった。
「ちょ……、いつもあきらめるの早すぎ! と言っても……、あなたのテストを行うのは、たぶんあたし達ホワイトニンフと仲の良くない、ダークニンフの娘だから、もしかしたらいじわるされるかも。はぁ……」
初めて聞いたセファの深いため息に驚いた富樫は、ちらっとセファの様子を盗み見た。その視線に気づいたセファは、寝転がる富樫の顔近くに舞い降り、漆黒の床の上に、膝をくずして座り、富樫にほほ笑んだ。
「あたしが気弱になっちゃダメだね。ごめんトガシ。まあ要するに、あたしがいくらあなたを許しても、そのダークニンフの娘を納得させないと、元の世界に戻るチケットがもらえないの。でも安心して、あたしがなんとかするから。時間はたっぷりあるんだから」
「セ、セファ……、お前やさしいな」
「まあね、こう見えてもホワイトニンフだからね」
「あきらめたらそこで終わり、だよな。がんばらなきゃ。がんばって元の世界にもどって、あまちゃんに謝らなきゃ……」
富樫はそう言いながら、肩を抱いて目を閉じ、すうすうと寝息を立て始めた。セファは思う。この空間には、昼も夜もなく、いつも真っ暗闇だ。時間の概念なんてないから、寝たい時に寝ればいい。疲れたら休めばいい。その代わり、起きたらまたがんばるんだよトガシ……。そう、このハイテク・プリズンでの富樫の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
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