高坂くんは不幸だらけ

甘露煮ざらめ

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「「「「「あ、ぅぅ」」」」」

 目の前には、変わり果てた五人の姿がある……。
 吐瀉物の上に倒れ込む者、側頭部を押さえる者、腰を押さえてぼんやり宙を眺める者たちに、痛みに負けて両足を押さえたまま沈黙した者。まるで地獄のような有様になってしまってあ。

「ど、どうして、こんなことに……」

 僅か数分間の出来事に、思わずそう呟いてしまう。

「これは……。もしかしてです」

 隣でサヤが顔をしかめ顎に手をやった。

「順平さんの不幸の力ではないでしょうか?」
「はい? 俺の不幸?」
「……昨日のナナさんと同じことが起こったのです。あの時はまだ不幸に免疫のないイキガミさんだけが影響を受ける程度でしたが、最大の不幸を間近に控えその威力も上昇し、普通の人間さんにまで及ぶようになってしまった。そう考えるのが自然です」

 確かに、俺たちが来た時は平然としていた人たちがこの状態なんだ。その推測は間違っていないだろう。

「なるほどな。と、いうことは俺が離れたらこの人たちは回復するというわけだ」
「恐らくは。距離ですが……そう広い範囲に作用するとは思えませんので、少し余裕を持って三階の部屋をお借りしましょう」
「だね」

 皆さんを介抱したいけど、酷くなるのなら逆効果。お部屋借ります、と聞こえてないだろうけど言ってから、階段を上って三階へ向かう。

「そういや、サヤは俺の不幸に当てられたりしないの?」
「私にとって、不幸は専売特許みたいなものですからねー。どんとこいです」
「そりゃそうか。納得」

 誇らしげに胸を張る姿がなんとも頼もしい。
 三階に着き、正面にある部屋にお邪魔する。十畳くらいで、ソファーが二つと大きなテーブル、壁には棚が二つあった。
 俺とサヤはテーブルを挟んで、向かい合って腰を下ろす。

「ふぅ~。これでもう安心ですね~」

 座ったままでノビをするサヤ。

「随分予定が狂ったけど、後はその時を待つだけだな」

 対して俺は背もたれに全体重を預け、安堵のため息を付いた。

「ところで、今の時間わかる?」
「お任せくださいよー。これには時計機能も付いていて、しかも秒単位まで確認できるのですよー」

 以前お世話になっていたスマホを取り出した。今は、ナナが来たことにより不幸の情報が不安定になっているからお役御免なのだ。

「へぇ、便利だね」
「はいっ。シガミ珠玉の一品ですからね! えとえと、今はですね……うぷ」
「お前も影響受けてるのか!? だ、大丈夫か!?」

 さっき効かないって言っていたから安心していた。やっぱり俺の不幸は、シガミでも無理だったか……。

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