不死者転生 -救いのない物語- 転生した不死者は生きる為に侵略し美しい眷属を従える

ボロン

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宗教国家オセの悲劇

不死者転生43 盲目の子羊

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 聖都ノベルが原因不明の大厄災で滅んだ後、森を抜けた先に位置していた為に厄災を逃れたオセはその正当後継として、周辺国の保護の元、ノエル教の自治領として存続することになる。

 僅かに200年、周辺国の中ではかなり新しく、また国ではない独自の自治領であり、元が地方都市である。本来なら武力侵攻なりを受けて存続などできなかっただろう。しかし、全国に教徒を持つが故に、永世中立として武力を持たない稀有な領地の存続が許されている。
 
 統べるのは教皇であり、政治、法、生活習慣に至るまで教典が支配する。この世界には濃淡の差こそあれ必ず瘴気が潜んでいる。先進的な国でさえ、原因不明の病や、自然現象の多くは瘴気による呪いだと今でも信じられている。だからこそ、瘴気を浄化するノエルの秘技は神秘に満ちたものとして神聖視され支持を得ているのだ。

 また、事実上最大勢力であるノエル教の威光を利用すべく王位を得た新王は教皇からの祝福を受ける事で治世の安定を計ったが為に、その伝統がある意味で王とは別軸ながら、一国の王を超える権威を生み出したといえる。そう、不必要なはずの権威を与えてしまったのだ。

 現在はの教皇は、第67代教皇であるシェムハザムという。齢60の老人であり、敬虔な信徒でもある。歴史的に宗教などは一般の信徒程、純粋であり、地位を持つ者は腐敗する傾向にある。だが、彼は腐敗や不正とは無縁でありその高潔な精神性を持って歴代最高の教皇として知られている。何もなければ、後世に至るまでその精神性は語り継がれ聖者として讃えられた事だろう。そう、何もなければ、、、。


 まるで造り物だと思える程、均整のとれた顔立ち。慈愛に満ちた瞳は澄んだ青空よりも蒼く、生命力に溢れたふくよかな唇、雪のように白い肌は清純さを象徴するようだ。そして、太陽の輝きを閉じ込めたような金髪がたなびく度に爽やかな香りを振りまくのだ。

 彼女の名は、カーラ。歳は21、敬虔な修道女であり、高齢となった教皇の世話係として一月前から働いている。修道女の服は白を基調としたローブであり質素かつの対象として見られないよう身体を強調しない余裕のある造りをしている。にもかかわらず後ろ姿でさえも情熱的であり、彼女の瞳を見た者は統べからず魅了される始末だ。だからこそ、彼女が望んだ教皇の世話係にすんなりなることができた。

 教皇シェムハザムは高い精神性もあるが、その年齢から若い頃、自身を苦しめた性欲から完全に解放され神の祝福を受けるに値する清潔さを身につけたと感じていた、、そう、この魅惑の美女カーラを一目見るまでは。

 彼女は決して、シェムハザムを誘惑していない。だが、その視線を向けられると二度と離さないで欲しいと感じるのだ。そのか弱い手で私に触れる度、、直接その体温を感じさせてくれと願うのだ。言葉を紡ぐ度に、私以外にその声を向けないでくれと心が叫ぶのだ。

 幼少より神に仕える身として、異性は誘惑の、、堕落の入り口と考えていた。だがらこそ、、、この誘惑に戸惑い、だが、どうしても欲しいと心が叫ぶのをどうなだめれば良いのかがわからない。

 彼女の全てを見たい。あの白く分厚いローブの中に一体どれ程のものが隠れているのだろう?私自身が、、奮い立つなど、まだそのような力があったのかと自笑する毎日だ。だが、これは決して知られてはいけない。

「教皇様?体調がよろしくないのですか?」

「いや、、気にしないで良い。カーラさん、いつも心遣いありがとう。」

誰に対しても敬う教皇は下の立場の者へも名を呼び接するのが常だ。良し悪しもあるがそれがシェムハザムの信念でもある。神の前に身分などあってないようなものなのだから。

「ですが、、出過ぎた真似をお許しください。」

そういうとカーラはその華奢な腕で教皇を支えるように寄り添う。

 我が身を案じるこの敬虔な信徒に欲情している事が伝わりそうでシェムハザムは心の中で叫ぶ。だが、身体も本心では抗えない。分厚いはずの布を通して彼女の温もりが伝わる。決して大き過ぎないが、だが確かに感じたことのないような柔らかな感触が腕に伝わる。この瞬間が途切れない事を本心では願っているではないか。

「あぁ、、カーラさん。私は、、」

「どうされたのですか?」

カーラの眼差しは暖かく慈愛に満ちていた。その微笑みは全てを許す神の微笑みではないだろうか?神は私のこの想いを許してくれるだろうか?

「いや、、なんでもないよ。すまなかったね。その椅子に座らせておくれ。」

「かしこまりました。ただ、、もう少しだけ支えて差し上げたいのです。お許し、、いただけますか?」

ハッとしてカーラを見るとその瞳は潤み、、、少しだけ頬が赤く染っているように見えた。まるで愛しい人を見るようなその表情にシェムハザムの自戒は脆くも崩れ去るのを感じていた。

「あぁ、、カーラさん、、この老ぼれの懺悔を聞いてくれるか?」

「わたしで、、よろしければ」

「年甲斐もなく、、私はあなたに特別な、、、想いを感じてしまったのです。教皇であり、神に添い遂げるべき私が、、なんと罪深い事だろう。あなたをそのような目で見てしまうのです。」

 シェムハザムの、、老人の独白はもう止まらなかった。

「あなたはこの滑稽な男を笑いなさい。私は、、この想いであなたまでも汚してしまうことが怖いのです。あぁ、、神よ、、、どうしてこのような試練を、、、」

カーラはただただ微笑み、とその瞳で受け止める。

「明日からは、、この任を解きましょう。あなたの為だけでなく、私の為でもあるのだ。本当に、、本当に申し訳ない。ただ、、ただ今だけあなたの寛大な慈悲を持って許して欲しい。」

カーラは真っ直ぐにシェムハザムを見つめると問いかける。

「神は、、人の愛を讃え、その営みを祝福してくださいます。産まれた赤子は神の洗礼に祝福され、死してはその懐に抱かれるのですよ。あなた様の想いは、、その純粋な想いを神が否定するでしょうか?むしろ慈しみを持って微笑まれます。」

「だからこそ、私は教皇様を、、いいえ、シェムハザム様を1人の男性としてお慕いする事を許してくださいます。」

「今、、あなたはなんと、、、なんと申されたのですか?私を?この老人を、、慕っていると?」

「ええ、そう言いました。お慕いしております。」

そう呟くように言い終わるとカーラは教皇の萎れた腕を持ち、あろうことかそのふくよかな胸に誘う。怯えたような老人は争う事なく、、思い焦がれた母性の象徴に触れ、、その枯れた唇をカーラに捧げる。

60年だ。耐え忍び、律し戒めたはずの60年の欲情が解放されてしまった。魔人の誘惑にこの愚かな教皇は身を委ねたのだ。止まるだろうか?いや、無理だ。彼は彼の幸せの為に、数多の信徒に死を運ぶ呪いを振り撒く事になる。

魔人シュトリたるカーラを心から欲した教皇シェムハザムは、後日1人の男を新たな高位司祭とし任命する事になる。だからこそ、彼は高潔な聖人としてではなく、悪夢を運んだ愚かな教皇のとして歴史に名を残す事になるのだ。数多の信徒の無残な屍の上に、、、。
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