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アルテミスの森の魔女
その11
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その師匠の杖の言葉にシュナンの寝ているベッドを囲む他の旅の仲間たちは驚き一斉に壁に立て掛けられた杖の方を見つめます。
みんなの注目を集める壁に立て掛けられた師匠の杖はその先端の円板についている大きな目を光らせながら仲間たちにある提案をしてきました。
「この先の森に住んでいる魔女を頼ろう。村人たちが言うことが事実なら彼女はわしの師匠である大魔術師マンスリー・グランドーラ様で間違いないはず。あの師匠なら必ずシュナンの病を癒すことが出来るだろう」
その後、しばらくして森の中をかき分けるように移動していた家獣は方向転換して先ほどそこを離れたばかりの人間の村からはほど近い木々に囲まれた空き地の様になっている場所まで戻りました。
そして再び家獣はその長い脚を折り曲げて森の中の草地に着地します。
脚をくの字に折り曲げて森の中にうずくまるその姿はなんだか小さな丘の上に建っている人里離れた一軒家みたいに見えました。
家獣の背中に建つ家の中にいた旅のメンバーたちは家の外に出るとその巨大な生き物の横腹についた階段を使って森の中の空き地へと再び降り立ちます。
地面にうずくまる家獣の巨体を背にして森の空き地に居並んだシュナン一行は夜の闇の中で身を寄せ合いこれからの事を話し合います。
ちなみにシュナン少年は巨人ボボンゴのたくましい背中の上に背負われていました。
ボボンゴに背負われたぐったりとしたシュナンの姿を周りにいる他の仲間たちがチラチラと心配そうに見ています。
やがて夜の闇を切り裂くようにメデューサが持っている師匠の杖が声を発します。
「それでは今からシュナンをこの先の森の奥に住まわれているはずのマンスリー様の家まで連れて行く事にする。わしの師匠である、かの大魔女の助力をあおぐのだ」
いつもの皮肉っぽい声とは違う冷静な口調で師匠の杖は旅の仲間たちに指示を飛ばします。
甲高いその声が夜の闇に包まれた森の空き地に響き渡ります。
そしてメデューサの手の中にあるその杖は今度は仲間の一人である巨人ボボンゴに対して指示を出しました。
「それじゃ、さっき言ったようにボボンゴはここに残ってくれ。他の者はシュナンを連れて森を抜けマンスリー様の元へと向かうとしよう」
しかしその言葉を聞いたボボンゴは首を振って言いました。
「俺も、行く。シュナン、心配」
けれどメデューサが持つ師匠の杖はその先端の円板についた大きな目を光らせ諭すような口調でボボンゴに答えます。
「すまん、気持ちはわかるがお主の外見は目立ちすぎる。人里近くに行くのだからなるべくリスクは避けたい。申し訳ないがこの場所に残ってくれ。それに家獣の見張り役も必要だ」
苦渋の表情を浮かべながらも納得したようにその太い首をうなずかせるボボンゴ。
「わかった・・・。仕方ない」
ボボンゴに留守役を頼んだ師匠の杖は次に最も重要なポジションー。
シュナン少年を運ぶ運搬役であるペガサスの少女レダに指示を出しました。
「レダ、ペガサスに変身してくれ。まずはシュナンを一番前に乗せてくれ。次にその後ろにデイスを乗せてシュナンの身体を背中から支えさせる。そして最後尾にわしとメデューサが乗る。かなり重いだろうが頑張ってくれ」
師匠の杖の要求はかなりの無理難題でしたがそれでもレダはコクリとうなずきました。
「わかったわ。完全に定員オーバーだけどね」
そしてレダは身につけた革製のビキニや肩パッドなどの防具更にはブーツや手甲も脱ぎ捨てて全裸になると仲間たちを背に乗せて運ぶためペガサスの姿に変身します。
レダの美しい裸身が光り輝き一瞬後には森の空き地に白い大きな翼を持つ美しいペガサスが出現していました。
そのペガサスの背中にボボンゴを除いたシュナン一行の仲間たちが次々と乗ります。
まずはぐったりとしたシュナンの身体をボボンゴが持ち上げてペガサスの背中の一番前にその長い首を捕ませるようにして乗せました。
そしてそんな風にぐったりとしながらレダのペガサスにまたがるシュナンの背中を支えるみたいに吟遊詩人デイスがその後ろに乗り更にその後ろのペガサスのお尻近くの位置には師匠の杖を抱えたメデューサがちょこんと乗りました。
男女合わせて三人が背中に乗ったレダのペガサスはさすがにちょっと重そうでしたがそれでもその大きな翼をはばたかせるといつもの飛矢の様な勢いは無いもののフラフラとした軌道を描きながら上空へと舞い上がります。
ただ一人地上に残されたボボンゴは空を見上げ森の中の空き地から飛び立ったレダのペガサスとその背中に乗った仲間たちの去りゆく姿を心配そうに見送ります。
地面にうずくまる家獣の黒々とした巨体を背にしたボボンゴが地上から見上げる中、レダのペガサスは病気のシュナンと他の二人の仲間を乗せながら夜の空を飛びやがてその白い身体は鬱蒼と茂る森の木々の上に広がる漆黒の闇の向こうへ溶け込むように消えて行きました。
[続く]
みんなの注目を集める壁に立て掛けられた師匠の杖はその先端の円板についている大きな目を光らせながら仲間たちにある提案をしてきました。
「この先の森に住んでいる魔女を頼ろう。村人たちが言うことが事実なら彼女はわしの師匠である大魔術師マンスリー・グランドーラ様で間違いないはず。あの師匠なら必ずシュナンの病を癒すことが出来るだろう」
その後、しばらくして森の中をかき分けるように移動していた家獣は方向転換して先ほどそこを離れたばかりの人間の村からはほど近い木々に囲まれた空き地の様になっている場所まで戻りました。
そして再び家獣はその長い脚を折り曲げて森の中の草地に着地します。
脚をくの字に折り曲げて森の中にうずくまるその姿はなんだか小さな丘の上に建っている人里離れた一軒家みたいに見えました。
家獣の背中に建つ家の中にいた旅のメンバーたちは家の外に出るとその巨大な生き物の横腹についた階段を使って森の中の空き地へと再び降り立ちます。
地面にうずくまる家獣の巨体を背にして森の空き地に居並んだシュナン一行は夜の闇の中で身を寄せ合いこれからの事を話し合います。
ちなみにシュナン少年は巨人ボボンゴのたくましい背中の上に背負われていました。
ボボンゴに背負われたぐったりとしたシュナンの姿を周りにいる他の仲間たちがチラチラと心配そうに見ています。
やがて夜の闇を切り裂くようにメデューサが持っている師匠の杖が声を発します。
「それでは今からシュナンをこの先の森の奥に住まわれているはずのマンスリー様の家まで連れて行く事にする。わしの師匠である、かの大魔女の助力をあおぐのだ」
いつもの皮肉っぽい声とは違う冷静な口調で師匠の杖は旅の仲間たちに指示を飛ばします。
甲高いその声が夜の闇に包まれた森の空き地に響き渡ります。
そしてメデューサの手の中にあるその杖は今度は仲間の一人である巨人ボボンゴに対して指示を出しました。
「それじゃ、さっき言ったようにボボンゴはここに残ってくれ。他の者はシュナンを連れて森を抜けマンスリー様の元へと向かうとしよう」
しかしその言葉を聞いたボボンゴは首を振って言いました。
「俺も、行く。シュナン、心配」
けれどメデューサが持つ師匠の杖はその先端の円板についた大きな目を光らせ諭すような口調でボボンゴに答えます。
「すまん、気持ちはわかるがお主の外見は目立ちすぎる。人里近くに行くのだからなるべくリスクは避けたい。申し訳ないがこの場所に残ってくれ。それに家獣の見張り役も必要だ」
苦渋の表情を浮かべながらも納得したようにその太い首をうなずかせるボボンゴ。
「わかった・・・。仕方ない」
ボボンゴに留守役を頼んだ師匠の杖は次に最も重要なポジションー。
シュナン少年を運ぶ運搬役であるペガサスの少女レダに指示を出しました。
「レダ、ペガサスに変身してくれ。まずはシュナンを一番前に乗せてくれ。次にその後ろにデイスを乗せてシュナンの身体を背中から支えさせる。そして最後尾にわしとメデューサが乗る。かなり重いだろうが頑張ってくれ」
師匠の杖の要求はかなりの無理難題でしたがそれでもレダはコクリとうなずきました。
「わかったわ。完全に定員オーバーだけどね」
そしてレダは身につけた革製のビキニや肩パッドなどの防具更にはブーツや手甲も脱ぎ捨てて全裸になると仲間たちを背に乗せて運ぶためペガサスの姿に変身します。
レダの美しい裸身が光り輝き一瞬後には森の空き地に白い大きな翼を持つ美しいペガサスが出現していました。
そのペガサスの背中にボボンゴを除いたシュナン一行の仲間たちが次々と乗ります。
まずはぐったりとしたシュナンの身体をボボンゴが持ち上げてペガサスの背中の一番前にその長い首を捕ませるようにして乗せました。
そしてそんな風にぐったりとしながらレダのペガサスにまたがるシュナンの背中を支えるみたいに吟遊詩人デイスがその後ろに乗り更にその後ろのペガサスのお尻近くの位置には師匠の杖を抱えたメデューサがちょこんと乗りました。
男女合わせて三人が背中に乗ったレダのペガサスはさすがにちょっと重そうでしたがそれでもその大きな翼をはばたかせるといつもの飛矢の様な勢いは無いもののフラフラとした軌道を描きながら上空へと舞い上がります。
ただ一人地上に残されたボボンゴは空を見上げ森の中の空き地から飛び立ったレダのペガサスとその背中に乗った仲間たちの去りゆく姿を心配そうに見送ります。
地面にうずくまる家獣の黒々とした巨体を背にしたボボンゴが地上から見上げる中、レダのペガサスは病気のシュナンと他の二人の仲間を乗せながら夜の空を飛びやがてその白い身体は鬱蒼と茂る森の木々の上に広がる漆黒の闇の向こうへ溶け込むように消えて行きました。
[続く]
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