11 / 40
第11話
しおりを挟む
「ごめん、それは出来ない」
慎二は、話しにくそうにして視線を逸らした。
僕の心臓が、大きく跳ねたのは本日、二度目。
あ……、僕、調子乗っちゃったんだ。
その事実に気づいた僕は、さっきまで高揚していた気分が、一気に急降下する。
「実は今日……」
「そ、そうだよね。僕にご飯食べさせるのは良くても、食べさせられるのは気持ち悪いよね。ごめん、気付かなくて」
僕は慌てて立ち上がり、会社のビルに向かって走った。
調子に乗ってしまった。恥ずかし過ぎる。一秒だってここに居たくない。消えてしまいたい。
しかし、すぐに腕を掴まれて、足を動かしたくても、動かせなくなってしまった。
「離してッ」
「嫌だ」
「なんでッ……」
身体能力はアルファである慎二の方が、遥かに優れている。腕を振り払いたくても出来なかった。
「那月、逃げないで……」
後ろから聞こえた声は、震えていた。慎二の手に、ぎゅっと力が入る。
しかし、痛くはなかった。痛くないから困る。こんな時まで、僕のことを気遣う慎二に困ってしまう。
「那月がしてくれることで、俺が嫌だと思うことなんて何も無いよ」
その言葉は、嘘のようには聞こえなかった。
だけど、それでも――
僕はその慎二の言葉が信じられない。後ろを振り返らない。
「なら、なんでさっき断ったの?」
「それは……」
「今朝だって、無理だって言われて……断るなら、僕がメッセージ消した時点で見なかったことにすればいいじのに! わざわざ僕を傷つけて、何がしたかったの!?」
「違う! そうじゃない! 俺がしたかったのは、そうじゃなくて……いやごめん。まずは謝るべきだね。本当にごめんなさい」
腕が離された。
そして慎二の言葉に耳を疑った僕は、後ろを振り返った。
アルファがオメガに謝る? 嘘でしょ。どうせ言葉だけ。
しかし、目に映ったのは思っていた光景じゃなくて……信じられない。
慎二が深々と頭を下げていた。
「…………ッ!?」
僕は、一歩後ずさる。
おかしい。目の前の光景は、おかしい!
プライドが高いと言われるアルファが僕みたいなオメガにこんなッ、こんなやすやすと頭を下げるのか?
「分かった、分かったから、頭を上げて……」
「いやッ! 本当にごめん! あのメッセージ、那月を傷つけるつもりは本気でなかった。でも、そんなのは言い訳にならない。大切な番を傷つけた。本当にごめん!」
「分かった。分かったから。僕の方こそ話を聞かなくて、ごめんなさい。だから顔を上げて?」
僕はそう言って、慎二の肩に触れた。彼は、ゆっくりと顔を上げる。
「話をしても、いいの?」
僕はコクリと頷いた。
だってこんなの頷く以外、どうしようもないじゃんか。
慎二は、話しにくそうにして視線を逸らした。
僕の心臓が、大きく跳ねたのは本日、二度目。
あ……、僕、調子乗っちゃったんだ。
その事実に気づいた僕は、さっきまで高揚していた気分が、一気に急降下する。
「実は今日……」
「そ、そうだよね。僕にご飯食べさせるのは良くても、食べさせられるのは気持ち悪いよね。ごめん、気付かなくて」
僕は慌てて立ち上がり、会社のビルに向かって走った。
調子に乗ってしまった。恥ずかし過ぎる。一秒だってここに居たくない。消えてしまいたい。
しかし、すぐに腕を掴まれて、足を動かしたくても、動かせなくなってしまった。
「離してッ」
「嫌だ」
「なんでッ……」
身体能力はアルファである慎二の方が、遥かに優れている。腕を振り払いたくても出来なかった。
「那月、逃げないで……」
後ろから聞こえた声は、震えていた。慎二の手に、ぎゅっと力が入る。
しかし、痛くはなかった。痛くないから困る。こんな時まで、僕のことを気遣う慎二に困ってしまう。
「那月がしてくれることで、俺が嫌だと思うことなんて何も無いよ」
その言葉は、嘘のようには聞こえなかった。
だけど、それでも――
僕はその慎二の言葉が信じられない。後ろを振り返らない。
「なら、なんでさっき断ったの?」
「それは……」
「今朝だって、無理だって言われて……断るなら、僕がメッセージ消した時点で見なかったことにすればいいじのに! わざわざ僕を傷つけて、何がしたかったの!?」
「違う! そうじゃない! 俺がしたかったのは、そうじゃなくて……いやごめん。まずは謝るべきだね。本当にごめんなさい」
腕が離された。
そして慎二の言葉に耳を疑った僕は、後ろを振り返った。
アルファがオメガに謝る? 嘘でしょ。どうせ言葉だけ。
しかし、目に映ったのは思っていた光景じゃなくて……信じられない。
慎二が深々と頭を下げていた。
「…………ッ!?」
僕は、一歩後ずさる。
おかしい。目の前の光景は、おかしい!
プライドが高いと言われるアルファが僕みたいなオメガにこんなッ、こんなやすやすと頭を下げるのか?
「分かった、分かったから、頭を上げて……」
「いやッ! 本当にごめん! あのメッセージ、那月を傷つけるつもりは本気でなかった。でも、そんなのは言い訳にならない。大切な番を傷つけた。本当にごめん!」
「分かった。分かったから。僕の方こそ話を聞かなくて、ごめんなさい。だから顔を上げて?」
僕はそう言って、慎二の肩に触れた。彼は、ゆっくりと顔を上げる。
「話をしても、いいの?」
僕はコクリと頷いた。
だってこんなの頷く以外、どうしようもないじゃんか。
198
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
恋人がキスをしてくれなくなった話
神代天音
BL
大学1年の頃から付き合っていた恋人が、ある日キスしてくれなくなった。それまでは普通にしてくれていた。そして、性生活のぎこちなさが影響して、日常生活もなんだかぎくしゃく。理由は怖くて尋ねられない。いい加減耐えかねて、別れ話を持ちかけてみると……?
〈注意〉神代の完全なる趣味で「身体改造(筋肉ではない)」「スプリットタン」が出てきます。自己責任でお読みください。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる