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一章

第2話 『ご愁傷様』

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久しぶりの再会だった。
王家特有の、ブロンドの髪に、エメラルド色の瞳、高い鼻立ち。その容姿は、改めて見ても、なかなかに美しい。

はじめは見とれてしまうこともあったが、今はもう、視線を合わせたくもなかった。

私たちの関係は、北の海に浮かぶ氷塊くらいには、冷え切っている。

だから無言で会釈だけ交わして、主催者席に並んで座り、夜会の幕が切って落とされるのを待つ。

進行に関して、事前の打ち合わせなどはしていなかった。
だが、こういう派手な場所だけは得意なのが、彼だ。

「この度は我が国においでいただき、誠にありがとうございます。ぜひ本日はぜひお楽しみください」

主催者挨拶を立派にやり遂げて、拍手を一身に浴びる。
これには、

「若いのに立派なもんだ」

なんて声も一部からは聞こえてきていた。
そう、こういうところだけを切り抜けば、彼は本当に優秀な王なのだ。

「ありがとう」

挨拶が終わったのち、私は一応の礼儀として、彼のほうへとグラスを傾ける。
最近は、これを無視されることも多かった。だが、来賓の手前、体裁を気にしたのか彼は、軽くグラスをぶつけて、それに応えてくれた。

互いのグラスにワインを注ぎ足して、そこからは挨拶回りへと出る。

とまぁ、ここまではよかったのだけれど。
要人にだけ挨拶を済ませると、

「あとはよろしく頼む。僕は少し用がある」

彼は会場の端の方へとしけ込んでいく。

それを目で追ってみれば、彼が向かったのは、顔を覆わんくらいボリュームのある長い髪をした女性、私の妹・ハンナの元だ。

変装をしているようだったが、私と同じ緋色の瞳が見えたから間違いない。

こんな場にまで連れ込んでいたらしい。

ふと、ハンナと視線が合う。
すると彼女は軽く頬を綻ばせて、軽く会釈をしてきた。それから、違う方向を振り向いた際、その唇はたしかにこう動いた。

『ご愁傷様』

と。

昔なら、言い返していたところだ。私とハンナとは、歳が三つしか離れておらず、仲良くしていた頃もあったのだ。

その頃のハンナは、なんでも私の真似をしていた。服も髪型もアクセサリーも、とにかく全部お揃いにしてくる。

その頃はそれが可愛かったけれど、それが行き過ぎた結果、次は男だというなら、笑える話じゃない。

「あの男のどこが気に入るんだか」

私はつい、こう独り言ちる。

そこへ、横手から隣国の要人に話しかけられて、私は気持ちを切り替えた。
くだらないことを考えていてもしょうがない。

王があの調子で、私が王妃である以上、とりあえずは目の前の仕事をしっかりやるしかないのだ。

私は挨拶回りを徹底して行う。
そうしているうち夜は深まっていき、夜会は十の刻には終了となった。

日頃の蓄積か、ひどく身体が疲れていた。
ややもすれば歩いたまま、瞼を閉じてしまいかねないくらいで、酒も相まって、最悪の調子だった。

私は王城から少し離れたところにある自屋敷に帰るなり、ベッドに崩れ落ちるようにして、眠りにつく。


――そして、目を覚ましたら、部屋が燃やされていた。
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