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9.レインボーのカッパ

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「ちょっと寝るから、後ろに乗ってもいい?」

 そう言って助手席ではなく後部座席に乗り込んだ僕は、眠るふりをして目を閉じた。念のため、ヘッドフォンをつけることも忘れずに。
 正直に言うと、車はまだ怖い。大きなトラックを見てしまうと、体が震え出す。だから車に乗るときは、できるだけ外を見ない。窓も開けずに、走行音を遮断する。
 そんな僕のことなど、お母さんはきっと全部お見通しなんだろう。おしゃべりなお母さんは、きっと車の中でも僕と話をしたいに違いないのに、僕の希望を拒むこともなく、理由を聞くこともなく、笑顔で「いいよ」とうなずいてくれた。

 ようやく迎えた大型連休。僕は現実世界でレインボーのカッパを――コロを、探しに行く。

「迷惑かな」とか「びっくりするかな」とか「怖がらせるかな」とか「いや、会えないかも」とか「いやいや、会えるわけないよ」とか、いろいろなことを考えたけど、それでも気持ちは止められなかった。

 普通のお別れなら、まだいい。メイくんのように、興味をなくしてしまっても、それでいい。けれど、バイタルアラームは別だ。現実世界のコロの肉体に、大変なことが起きているのは間違いない。
 なにもしないでいるなんて、できるわけがなかった。
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