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第八章 寂しがりやに、さようなら
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来場客は一人につき一枚、ライブパネルと呼ばれる電子色紙を持参することを許されている。三十センチ四方の中に、アイドルの名前や応援のメッセージ、ときには似顔絵などをデジタルで描き、曲と曲のインターバルという限られた時間の中で大きく掲げてアピールするのが、ライブ会場のいつもの光景だ。
「どうして……?」
マイクを通さないただの呟きが、カナエの足元へ滑り落ちていく。
どうして、見つけてしまったのだろう。どうしてあれが、そこにあるのだろう。
扇形の階段状に開いた客席。その右手後方で輝く、三枚のライブパネル。複数の電子色紙を繋げて一枚の大きな絵を形成する手法は、特に珍しいものではない。
目を奪われたのは、その絵柄。その構図。
――氷の女王に立ち向かう六人の少年少女が、そこにいた。
六人。そう、六人だ。カナエもいる。まだ髪が長かったころの幼い自分が。五人の仲間と一緒にいる。マコトとエリヤと、まだ思い出せない三人の仲間と、一緒に戦っている。
デフォルトされたコミカルなタッチで描かれたイラストは、異世界に行ったことがある者にしか知り得ない光景をはっきりと映していた。どくどくと、カナエの心臓の鼓動が早まる。その音が氷の女王の眠りを妨げるとわかっていても、もう止めることができない。
「……どうして」
知らなかった。どんなに遠く離れていても、人と人の視線は出会うことができるのだ。三枚のライブパネルをそれぞれ掲げた三人の仲間の笑顔を見つめながら、カナエはぐっと強く奥歯を噛み締める。
ミサキちゃん。
タイシくん。
ユウくん。
思い出してしまった。全部、思い出してしまった。みんなと一緒だから楽しいと思えた、異世界でのすべての出来事を。
「どうして、来てくれるの……っ?」
会いたくないと言ったのに。きっと、傷つけてしまったのに。
それでも、彼らは来てくれた。
一緒に戦おう、と。ひとりで戦わなくていい、と。無言の叫びを掲げて、カナエに笑いかけてくれている。
――あの場所に行きたい。また、みんなと一緒にいたい。
「……、……っ」
絶対に口に出してはいけない想いが、喉元を駆け上がって今にも外に飛び出しそうになる。胸を抑えて必死にそれを押しとどめるカナエの視界が、突如として真っ白な光に覆われた。
「どうして……?」
マイクを通さないただの呟きが、カナエの足元へ滑り落ちていく。
どうして、見つけてしまったのだろう。どうしてあれが、そこにあるのだろう。
扇形の階段状に開いた客席。その右手後方で輝く、三枚のライブパネル。複数の電子色紙を繋げて一枚の大きな絵を形成する手法は、特に珍しいものではない。
目を奪われたのは、その絵柄。その構図。
――氷の女王に立ち向かう六人の少年少女が、そこにいた。
六人。そう、六人だ。カナエもいる。まだ髪が長かったころの幼い自分が。五人の仲間と一緒にいる。マコトとエリヤと、まだ思い出せない三人の仲間と、一緒に戦っている。
デフォルトされたコミカルなタッチで描かれたイラストは、異世界に行ったことがある者にしか知り得ない光景をはっきりと映していた。どくどくと、カナエの心臓の鼓動が早まる。その音が氷の女王の眠りを妨げるとわかっていても、もう止めることができない。
「……どうして」
知らなかった。どんなに遠く離れていても、人と人の視線は出会うことができるのだ。三枚のライブパネルをそれぞれ掲げた三人の仲間の笑顔を見つめながら、カナエはぐっと強く奥歯を噛み締める。
ミサキちゃん。
タイシくん。
ユウくん。
思い出してしまった。全部、思い出してしまった。みんなと一緒だから楽しいと思えた、異世界でのすべての出来事を。
「どうして、来てくれるの……っ?」
会いたくないと言ったのに。きっと、傷つけてしまったのに。
それでも、彼らは来てくれた。
一緒に戦おう、と。ひとりで戦わなくていい、と。無言の叫びを掲げて、カナエに笑いかけてくれている。
――あの場所に行きたい。また、みんなと一緒にいたい。
「……、……っ」
絶対に口に出してはいけない想いが、喉元を駆け上がって今にも外に飛び出しそうになる。胸を抑えて必死にそれを押しとどめるカナエの視界が、突如として真っ白な光に覆われた。
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