【完結】英雄小学生アフター~氷の女王と春の歌姫~

森原ヘキイ

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第八章 寂しがりやに、さようなら

8-12

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「お客さんを悲しませること以外だったら、なんでもいいよぉ」椅子に腰掛けたまま、幼い子どものように足をぷらぷらさせてウララが笑った。

「わたくしも構いませんわ。カナエさんのパフォーマンスに、直接的な影響が出ないのであれば」
 豪奢に束ねた長い髪を、さらに指先で優雅にくるくるさせながら、ツヅルも同意を示す。「もっとも、カナエさんがミスをするなんて有り得ませんけど」

「ツヅルンってば、ホントにカナエンが好きだよねぇ。なのに、なぁんでファンの前では不仲営業してるのかなぁ?」
「好きでも営業でもありませんわよっ。単純に、あの方のアイドルとしての矜持を信頼しているだけですわ」
「ま、冗談はさておきだよ?」ぽんっと勢いをつけて椅子から遠く飛び上がると、ウララはそのままお正月の独楽のようにくるくる回る。

「初めて会ったときから、なぁんか呼吸がしづらそうな子だにゃあとは思ってたけどねぇ。これをきっかけに、カナエンの中で何かが変わるんだとしたら、それはウララも嬉しいよぉ」
「そうですわね。誰だって、大事な人には心の底から笑っていてほしいですもの。ファンの皆様だって、きっと同じ気持ちに違いありませんわ」

 ウララとツヅルの言葉に感激したヒカリが、二人をまとめて抱き締めるために両手を広げて飛びかかっていったのは言うまでもない。

 そうして、カナエには何も告げぬまま迎えたクリスマスライブ。直前リハでも、ライブが始まった今になっても、カナエにおかしな様子はない。いつも通りの完璧なパフォーマンスでファンを魅了している。特に体調が悪いということも、なさそうだった。

 けれど、エリヤたちは『カナエのソロ曲の前』と、ピンポイントで言及してきた。そのころには何かが起こるのかもしれないと、ヒカリも舞台袖から客席のほうを注視する。マコトが来ている可能性に胸を躍らせている暇もない。すると。

「あれれぇ? カナエンの様子、なんだかホントにおかしくないかい?」

 緊迫感のないウララの言葉で、急いでカナエに視線を戻した。確かに、客席の一点を見つめて、驚いたように目を見開いている。
 これが合図なのか。これが異変なのか。ほんの僅かな逡巡の後、ヒカリは待機していたスタッフのほうへ振り返った。

「っ、マネージャーさん! 頼んでいたこと、お願いします!」
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