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『認められた皇女』
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しおりを挟むそこから、ディェリンが後宮に戻る前に皇帝が、すぐさま会いたいと言っているとして、ユーシュエンとハオランとディェリンの護衛の影も一緒に皇城に行くことになった。
ディェリンは、ここ最近やたらとガンラシュ国のことを聞かされていた。そこの王太子と婚約させたいのだ。それをしきりにディェリンに言っているのは、皇后だ。
ディェリンの実母ではない。今の皇后は、皇太子の実母だ。ディェリンの母よりも身分は下だが、他所から嫁いで来た。ディェリンの母が存命ならば、皇后はディェリンの母だったが既に亡くなり、ディェリンが生まれる少し前に皇子が生まれていた。
それが、皇太子となったことで皇后となり、数年が経つ。早いものだ。
そんな皇后が、最近やたらとディェリンを呼んでは、隣国の王太子のことを褒めちぎってばかりいた。そもそも、朝と夕に挨拶に赴くべきだった側妃の時からディェリンのところに来なかった人だ。
更には茶会をしても、誰が主催しても参加しなかった女だ。そんな者の呼び出しに皇女が付き合う必要はないのにしてやっていることにも皇妃は気づかずに好き勝手をしていた。
他にやるべきことが、山積みなのにやらずに余計なことばかりをしている。
皇后は、その国の出身だからこそ、褒めちぎっているのも血縁者のようだ。そんなことを皇后がしていることを陛下であるディェリンの父は知らないはずだ。
知っていたら、口出しするなと一喝しているだろうが、ディェリンは話す気にならなかった。ただですらお忙しい陛下を煩わせたくなかったからに他ならない。
皇太子を庇う気は全くないわけではないが、皇后を庇うなんて、ディェリンにはない。
ディェリンは、あの無礼千万な男がガンラシュ国から来たと聞いて内心で喜んだ。これで、断る口実ができたのだ。もっとも、最初から断れることを知らない皇妃にも、付き合いきれなくて、うんざりしていたからとんでもないことをしでかした子息に心から感謝した。
(ようやく、使えるわ。皇太子に色々言ってやろうとしたのにちっとも会えずにいるから、その分も上乗せして皇帝に処分してもらわなくては)
この時間が無駄ではなかったことにディェリンは喜んでいたが、ユーシュエンがハオランのことを気に入らないとばかりにしていることに気づきもしなかった。
ディェリンにとって、ユーシュエンは幼なじみのようなものだ。父である皇帝の護衛長の息子で、いずれはディェリンの護衛にならせようとする護衛長とその気でずっと色々してきたユーシュエンは、初めて自分の上をいく存在が現れた。
「殿下。ご気分は大丈夫ですか?」
「え?」
「あんなことを言われたのです。怖い思いもなさったはず。それに……」
「わけのわからない者を相手にするのは、慣れているわ」
「っ、そんな者がいるのですか?!」
「おい、声を荒げるな」
ユーシュエンは、そこを怒った。別のことで腹を立てればまだしも、いつもこうたま。
「っ、失礼しました。ですが」
「平気よ。それより、訓練の時間を台無しにしてしまった。それが申し訳ないわ」
「そんなこと、どうでも良いのです。殿下が、悲しい思いをなさるより大したことではありません」
ユーシュエンは、そんな2人の会話にイライラしていた。すっかりお邪魔虫になっている。
いつもなら、ユーシュエンがディェリンを後宮に送迎している。そこにハオランが加わって、ディェリンと楽しげにしているのに腹が立たないわけがない。
父からも、できるならば婚約者に選ばれるように頑張れと言われていたのに。あっさりとハオランのことをディェリンが気に入ってしまったのに焦ってもいた。
もっとも、ディェリンにとって男性と見られていないことにユーシュエンは気づいていなかった。幼なじみで、口やかましく気が利かない兄というより、弟のように思われていれば、それが恋愛に発展するはずがない。
大体、こんな風にディェリンのことを気遣えないのだ。あんなところで、空なんか見ているから、変なのに絡まれると内心でユーシュエンは思っているくらいだ。
そんなのより、こうして不器用ながらもディェリンのことを気にかけてくれる人の方を気に入るに決まっているのだが、その辺もユーシュエンはわかっていなかった。
ましてや、駆けつけるのに思いのほか息が上がってしまい休憩と身だしなみを整えているのをバッチリ見られていることにも気づいていなかった。
それで、護衛が務まるわけがない。そこが1番重要なのに気づいてはいなかった。
嫉妬して、妬んでいる場合ではなかったのだ。そんな余裕なんてユーシュエンにはない。護衛としてもいまいちなのだ。本物の護衛がつくことになれば、お払い箱は間違いないことがわかっていなかった。
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