見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

文字の大きさ
33 / 53

33

しおりを挟む

千沙都は、寧々に聞かれて一希の好みを口にした。これもまた、もう何回目になるかわからない。猫好きな千沙都は、口にするのもげんなりする言葉を口にした。


「犬好き」
「え? 犬好き??」
「そう、まずは無類の犬好きが必須条件」
「……そんなに犬が好きなの?」
「本人が、そう言ってるから。好み聞かれたら、そう言ってくれて言われてる」
「そんなこと言うんだ」


そう、顔の好みや性格やら体型やらではない。一希の1番上にいつもある女の子の好みは、犬をどれだけ好いているかなのだ。


(そこまで好きなのに。愛犬のことを忘れて自分だけで散歩してるのよね。それなのに無類の犬好きだって言えるのも、どうかと思うけど)


寧々は、千沙都の言葉に机に突っ伏していた。何やらショックだったようだ。


(この反応は、あんまり見なかったな。まぁ、顔だけは無駄にいいからな。寧々も、可愛いから隣に並んでるとお似合いに見えるけど、全く応援できないり全力でやめるように言っちゃうな。もっといい男が他にいるから早まるなって)


友達の反応に千沙都は、そんなことを思ってしまった。これもまた口にはしなかったが。そんなこと考えていたなんてわからないような何でもない顔を千沙都はしていた。寧々が見ていてもわからなかっただろうが、千沙都のことなど彼女は見てはいなかった。


「もう、そこで駄目だわ。私、猫好きだもの」
「だよね。私もよ。猫大好き! 趣味、猫カフェ巡りと猫溜まり探しだもの」
「え? そうなの? でも、やたらと猿渡くんの飼ってる犬の心配してない?」
「そりゃ、あの家のみんな、犬好きなんだけど、特殊だから」
「特殊……?」


寧々は、千沙都の言葉の意味を正しく理解するのに大して時間はかからなかった。ただ、その時は全く意味不明な顔をしていた。無理もないが。

だが、他のクラスメイトたちが千沙都たちの会話を聞いていたようで、これ幸いとばかり便乗することにしたようだ。その中の何人かの女子生徒は自分は犬好きだと言い出して、会話に入ってきたのだ。これも、よくあるパターンだ。本当に見た目だけがいい幼なじみがいると面倒くさくてかなわない。


「ねぇ、それ以外にないの?」
「ただの犬好きじゃ駄目。無類のってつくくらい犬好きじゃなきゃ、あいつは認めない」
「無類の犬好きって、わかりづらくない?」
「前にただの犬好きの女の子に次の好みを教えて、どんぴしゃだからってせがまれて紹介したら、つきまとわれたらしくて、とんでもない嘘つきを紹介したって、散々に言われたことあったから。これでわかると思うけど、嘘つきが好きじゃないわよ」


(でも、バレなきゃいいみたいだけど。相手にされるのは嫌でも、自分は嘘をつくのよね。そこが、私は気に入らないところだけど)


そんなことを思いつつ話せば、くいついて来た女子生徒はあてはまらないとしょげていた。そこまで、しょげるような対象ではないと千沙都は何とも言えない顔をして見ていた。


「あー、私には無理だな。犬は好きな方だけど、そこまでじゃないや」
「私は、好きな方だけど、無類のレベルがわからないな」
「犬の種類にやたらと詳しいとか。柴犬のことで、知らないことないくらい詳しいとか。あいつが語りだしたら、数時間は平気でしゃべるわよ」
「……それは、ついていけないかも」
「千沙都は、それよく聞くの?」
「まさか。私が猫好きなの知ってるから、幼なじみとしては大して語ってないつもりよ。それでも、最終的には、猫好きに無駄に語ったみたいに言われるけど」
「「「「……」」」」


それを聞いて、何とも言えない空気になっていた。猫好きに犬の良さなどわからないと思っていて、千沙都のことをその辺で一希は見下しているのだ。何なら猫好きすら、馬鹿にしているのだ。


(まぁ、その犬好きが蓋を開けるとおかしなことになってるんだけど、そこまで話すことではないわね。見た目で、良さげだと思うせいか。それでも、犬好きなふりをする強者も前はいたけど、この引きっぷりからするとそんな強者は、この中にはいなさそうね)


千沙都は、そんな風にクラスが一緒になった女子生徒を見ていた。


「……なんか、見た目と違って面倒くさそう」


ぽつりと呟いたのは、寧々だった。他の女子生徒も、そんな印象を持ったようだ。そうでなければ、このあと一希に自分を紹介してくれと千沙都は言われているところだ。そう言って来る女子がいないことに千沙都はホッとしていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...