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しおりを挟む千沙都の幼なじみの酷さはわかったと思う。そんな彼の愛犬である麻呂サンについてだが、千沙都からすると物凄く美人、もとい美犬に見えるのだ。雄犬なのだが、雌犬のような美犬に見えるのだ。
それは千沙都の感覚がおかしいせいだと一希には散々なまでに言われていた。
「神山。お前、目、悪くないか?」
「眼鏡かけてる猿渡に言われたくない」
「そうだよな。目の良し悪しじゃなくて、中身の問題だな。そもそも、お前は犬好きではないんだし。犬より、猫が好きだなんて理解できないな」
「……」
(どうせ、私は猫好きよ! でも、何でもわかってるみたいに言わなくともいいのに)
一希は目が悪いせいじゃないのなら、犬好きではないからだとそんな風に嫌味な言われ方をして、よく鼻で笑われいた。ワンコのことでは、一希は自分の方が知識が多いと思っていて何なら犬好きの中でも自分はぶっちぎりのトップのようにすら思っているような男だ。そして、猫好きな千沙都のことを物凄く馬鹿にしてくるのもいつものことだ。
そもそも、猫好きなことすら馬鹿にしている気がしてならないが、それは幼なじみの千沙都に対して馬鹿にしているのか。猫好きを馬鹿にしているのか。はたまた両方なのかと千沙都は考えたことがある。恐らく、千沙都のことを馬鹿にしているのだ。
犬のことでは絶対に負けないという自信があるせいで、一希が一方的に犬の話をしていると段々と語ったところで、無駄なように言うのだ。なら、話をしなければいいと思うのだが、気兼ねなく語れる友達がいないせいで、毎回語りたくなると千沙都のところにやって来ては話すのだ。そのたび、腹が立って仕方がなくなるのは、いつも千沙都の方だった。
(本当にむかつく。高校に入ってから、女子会がなくなったせいで、語られることが増えて来てるし、何というか。前より酷くなってる気がする。これにずっと付き合い続けるなんて、したくないなぁ~。高校で、友達作ればいいのに。あ、できないのか。……なんて、馬鹿にしても付き合いきれないのは、私の方なのに麻呂サンが心配で、強く言えないのよね)
人を小馬鹿にしたような時は、外見がどんなに格好よくとも、腹が立つことには変わりない。むしろ、千沙都は格好いい見た目以上の中身の酷さを知っているから、そんな幼なじみに言われて頭にきて仕方がなかった。口にしないで色々とボロクソに言っていても、言葉にしないのは一希に思うところがあってのことではない。
彼のことを心配していることなんて欠片もない。
(わかってるなら、語らなきゃいいのに。本当にムカつく。幼稚園の頃までは、可愛かったのに。今は見た目が格好よくても、最悪すぎ)
頭にきても、そこから大喧嘩になることはなかった。頭にきてならないことを千沙都が言い返さないからだ。
それこそ、千沙都が猫好きなのを変えられないように一希が犬好きなのを変えられないからだ。
それに千沙都は、麻呂サンが心配でならなくて、幼なじみと距離を置くことにならないようにしておきたいのも相まって、一希を激怒させることを避けていた。そのせいで、幼なじみが図に乗るようになってきていることに益々腹が立って仕方がなかった。
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