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アルフリーダは身構えていたが、シーグリッドは……。


「お従姉様、来てくださったんですね!」
「シーグリッド」


会いに来てくれただけでも、嬉しそうに笑顔になり、結婚したことを祝福していいのかわからないと素直に言うのにアルフリーダは何一つ変わってはいないと思って苦笑してしまった。


「シーグリッド。その前にきちんと謝罪させて。あなたから届いた招待状に返事を書いて出したのは、私なの。両親は知りもしなかったの。お相手が誰かも知らず、私の結婚式と同じ日にちなのも見ずにあんなことをしたのは、私なの。本当にごめんなさい」


それにとアルフリーダは、エーヴェルトのことを教えてくれたのに読みもせずにいたことやらを包み隠すことなく話した。

シーグリッドは、それを黙って聞いていた。


「でも、結婚式の前に読んでいても、私、結婚式を取りやめにはしていなかったわ」
「そこまで、好きだったのですね」


何とも言えない顔をシーグリッドはした。シーグリッドにとっては元婚約者だが、アルフリーダには夫なのだ。悪く言えないとばかりに切なそうにした。


「そう、思っていたけど、今思うと違うみたい」
「?」
「意地になっていたのよ。あなたが、結婚すると聞いて。……私の方が、年上なのに先に結婚するなんてって、そればっかりで結婚式も式場が格安にしてくれるから、あの日にしただけなの」


それを聞いて、シーグリッドはきょとんとした。ベックストレーム侯爵であるアルフリーダの父親は、その話をシーグリッドにしなかったようだ。


「それが、ハネムーンを終えて戻る時になって、エーヴェルト様が跡継ぎではないと言い出して、やっと彼が破棄されまくっていた理由がわかったの」
「え、跡継ぎの話をしていなかったのですか?」
「えぇ、だから、これから彼の実家で話し合いをすることになっているわ」


それを聞いて、シーグリッドはアルフリーダの手を握った。


「お従姉様、応援させてください!」
「っ、」
「私にできることがあれば、何でも言ってください。これまで、破棄になった令嬢とも仲良くしているんです。みんな、あの方のことで証言してくれるはずです。みんな、あの方のことで散々な目にあっているから、味方してくれます」
「シーグリッド」
「嘘をついて、結婚までして、あの家に婿入りするのを強行するなんて、もってのほかです。ありえません」


シーグリッドは、憤慨していた。それこそ、アルフリーダは初めて従妹が怒っている姿を見た。それに泣きそうになっていた。







そんなことがあってから、オングストレーム公爵家であるシーグリッドの実家である叔父たちのところにアルフリーダは向かった。

シーグリッドが許しているのもあって、すんなりと謝罪を受け入れてくれた。


「お前、変わったな」
「え?」


クリフトフェルの言葉にアルフリーダが目をパチクリさせた。従兄は、シスコンなところがあって、許したとしても口も聞いてくれないかと思っていたが、話しかけられて驚いてしまった。


「まぁ、お前のは完全に自業自得だが、シーグリッドのことを傷物にした男だ。私も、何かできることがあれば、手伝ってやる」
「っ、」


そんなこんなで、アルフリーダは心から謝罪して回ったことで、身にしみて感激することになった。

そもそも、変なプライドを持たずにシーグリッドと仲良くしていたら、破棄し続けることはなかったのだ。シーグリッドに負けたくないとか。他の令嬢の誰々には負けたくないと思って対抗意識を持って動いていなければ、とっくの昔に良縁に恵まれていたはずなのに本人は全く気づいていなかった。

そう、そこさえなくなれば、申し分のない令嬢だったのだ。負けたくないと頑張ってきたのが無駄になってはいなかった。


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