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第2章

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ふと、ウィスタリアは自分が泣いていることにようやく気づいた。


(それを一番辞めたくはなかった。あんな妹ならいなくていいと思う自分が一番嫌だった。あの子さえいなければ、あの子のことを心配し続けていなければ、私はもっとやりたいことをやりたいだけやっていたと思って、その通りにしたから、あぁなったなんて、そんな風に思いたくなかった。数年、側にいなかっただけで、私がやりたいことをやっていた間に妹が、私の可愛い妹が、あんな風に人の心を失うとは思いたくなかった)


ずっと、心のどこかで自分は妹を煩わしく思っていたのかも知れない。そんなことを思ってしまった自分が、妹の願いだと受け入れるなんて……。


(なんて、愚かなことをしてしまったのだろう。あの子を人殺しにさせてしまった)


幼い頃、たどたどしくしか話せなかったプリムローズを思い出し泣いて、久しぶりに会った変わり果てた姿形をした妹を思い出して、その涙が引っ込んだ。


(あの両親はともかく、あの祖父母をそのままにしてしまったわ。あれが元凶のようなものなのに。私ったら、なんてことしてしまったの。妹があの後に頼るとしたら、祖父母になるのは目に見えているのに。他に頼れる人なんていないのに)


祖父母の甘やかし方は、おかしすぎた。自分たちは孫に何でもしてやっていて、周り、特に姉が一番悪い存在で、次に両親、更には周りのように刷り込まれていた。そんな甘やかし方があるだろうか?

そんなことを言われ続けて、周りもあの奇妙な格好のせいでドン引きしてしまって、頼れるのが祖父母だけになるようにされていた。あれは、どういうつもりだったのか。未だにウィスタリアには理解できないことだ。

それこそ、甘やかしているというよりも、都合よく手懐けていただけに思えてならない。

ウィスタリアは、殺されてもなお、姉を辞められそうもなかった。辞めたくなっていたはずが、妹になんてことをしてくれていたんだと祖父母のことを思い出すと怒りを覚えた。

友達がこの場にいたら、呆れてウィスタリアを見ていたはずだ。友達でなくとも、己を殺した相手にそんなことを思えるのはウィスタリアくらいだろう。

だが、彼女はまだ疲れていたようだ。

既に死んでいるのにそんなことをあれこれ考えているのだ。今の自分の状況に疑問を持つはずだが、それよりも妹がどうしているかが気になるところが、いい姉なのかはわからない。

一通り祖父母が何をするのかと頭を悩ませたが、ふとウィスタリアは……。


(何やってるんだろ。私は、妹にあんな無邪気な顔で、殺されたのに……。それを全て、祖父母のせいにしようとしてる。未だに妹は、幼いままみたいに守ろうとしてる。あの子は、私と1つしか違わないのに。私は、無邪気な願いだと思って疲れていたとはいえ、そんなことを叶えてやるよりも、とことん話し合わなければいけなかったのよね。両親も、祖父母も、あの子に正しいことを教えないのなら、私しかいなかったのに。それが、あんなことを受け入れるのが、姉だと思わせてしまった)


ウィスタリアは、それが上手くいったのだからと益々、周りに何かするかもしれない。しなくとも、都合よく記憶を書き換えてしまうかもしれない。

妹に謝罪させることと責任を取らせることを教えずにきたことを後悔していた。


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