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第2章
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しおりを挟むわがままばかりとなってしまったウィスタリアの妹。血の繋がったたった1人の妹。大事な可愛い芋。
それなのにあちらは、姉のことを殺すことすら何とも思わない娘になってしまった。たった数年で、彼女の中の姉はそんな風になってしまっていた。
(私が、もっときちんと向き合っていたら、変わっていたの……? それは、やり遂げたい夢を諦めきれなかったせい? ……それとも、私にはもう何もしてあげられないと思ってしまったあの先にまだ、私ができることはあったの? 死んだことで私は、あの子の役に立ったのかしら。人の心を取り戻すきっかけになれば、まだ救われるけど……。姉を殺しておいて、罪悪感に苛まれるなんてことはなさそうだけど……)
ウィスタリアがやり直したいことがあるとしたら、そこだった。
あの子がまともになってくれていたら、死んだ甲斐がある。……それもおかしな気がするが。姉を殺すことで得られる幸せに縋り付いたのだ。
それをわかっていて、欲しがる妹にウィスタリアは与えてしまったのだ。誰かを殺してでも得たいもの。そんなことをして幸せになれると本気で思っているのだ。
そんな妹のことをウィスタリアは案じずにはいられなかった。
汚点だからと王太子の婚約者の候補までなったのに妹のせいで選ばれないなんてことではなかったはずなのに。そう言いふらした者が言っていた通りに汚点のようになってしまったプリムローズ。
あんな風になったのは、ちゃんと教える人がいないせいで、おかしなことが常識のように刷り込まれたせいだとウィスタリアは思いたかった。そうであれば、姉を殺した後でもやり直せるはずだ。
でも、この時のウィスタリアは気づいていなかった。やり直すチャンスがあっても、おかしな常識を刷り込む者から離れない限り無理なことに気づかなかった。ただ、姉の死をきっかけに変わってほしいと思わずにいられなかった。
そう思ううちに涙が止まっていた。
すると突然、光輝く扉が見えた。
(天国の門……? そんなわけないか。妹を人殺しにさせるようなことをしたのだもの。私は抵抗しなかった。あの子の行き先と一緒のはず。今だって、あの子のせいに全部しようとしてしまいかけた。私が……、私みたいなのが天国に逝けるはずがない)
そう思っているとなぜか、光輝く門の方がウィスタリアに近づいて来た。それに苦笑してしまった。
(ここに長居するなって? そりゃ、そうよね。でも、私は……)
それでも、光り輝くその門は天国行きに思えてならなくて、全力で拒んだ。そんな人間は、そうそういないのだろう。門の方が痺れを切らしたのか。開いた扉の向こうが迫って来て、ウィスタリアは逃げる間もなく飲み込まれることになった。
(っ!? こんな風に天国に逝くなんて、私だけでしょうね。迷惑かけて、ごめんなさい。それでも、私は……)
完全に飲み込まれたウィスタリアが、何を言いたかったかはわからずじまいになった。
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