11 / 12
11
しおりを挟む戻って来た護衛にヴィクトリアが、子爵家に行ったのを聞き、その後がどうなったかをヴァシーリーは知っていた。
見届けたくないが、今後に関わる。
母親はヴィクトリアを捨てて後妻となったのに呆れていた。
「……娘は、どうなった?」
「どうにかしてくれるのを待っているようです」
「……誰か、宛でもあるのか?」
「これまで、通りに母親や兄たちが、どうにかしてくれるのを待っているようです」
そんな報告を聞いて、ヴァシーリーは……。
「ある意味、幸せな頭をしているな」
ヴィクトリアは、兄の婚約を台無しにしてもなお、自分の手柄のようにしていたと聞いて、無表情になった。
王女の持っているものを奪うのに味をしめたのが、義妹になるなんて嫌に決まっている。
そんなのと縁を切ったと言われても、それまで味方していたことに変わりはない。その辺を調べ直して、やっぱり無理となったのだ。
ちゃんと調べていたら、そうはならなかっただろうが、王女は恋に恋していた。ティモフェイほど、素敵な人はいないと恋にのぼせて周りの言うことを聞かなかったのだ。
そのツケのように婚約破棄することになり、王女は物凄く落ち込んでしまったようだが、そのおかげで新しい婚約者を見つけて、今は相思相愛になっている。
ティモフェイの方も、父親に再教育されることになり、ちょっとはマシになって、次に婚約した令嬢はとても良さげだと聞いて、ヴァシーリーは落ち着いたなと思っていた。
従兄まで、勘当それることになれば、アナスタシアが気にしていた。仲はいまいちでも、アナスタシアが気にすることになるのは困る。
「まぁ、どうあがいても、もう、こちらには来れないだろうが」
ヴィクトリアは、その日、食べるものにも困る生活をしていた。そのため、働き続けなければならない状況になって、周りをあてにできないと、ようやく悟ったようだ。
そんな生活が続いて、もう誰かを頼ったところで助けてくれないとわかるのにかなりかかって、アナスタシアから奪えばいいなんて発想には至ることはなかった。
そうなっても、そうなるのなら、ヴァシーリーがもっと遠くに追いやっていただろうが、そこまでになることはなかった。
アナスタシアに少しでも申し訳なかったと思えば、まだしも何もなかったことにできるのに腹が立ったが、その仕返しは母親の方にしておいた。
すぐに後妻となった彼女は、ただのお飾りでにこにこと立っていればいい。余計なことはするな。考える必要もないと再婚相手に言われて、幸せな結婚生活とは無縁の毎日を過ごすことになった。
最後まで、娘を見捨てずにいたら、公爵がそれなりのところで雇ってもらえるようにしようとしていたが、そうはならなかった。
467
あなたにおすすめの小説
身勝手の王子様の新しい婚約者が私ですって? 普通に嫌なので拒否します
こまの ととと
恋愛
長くて短い学園生活も終わり。卒業記念パーティーで思い出に花を咲かせる卒業生達。
そんな心温まる場面を破壊したのは、王子のある言葉からだった。
「この日をもってお前との婚約は破棄にする。そして!」
何故か肩を抱かれる私。私が新しい婚約者!?
冗談じゃない、もう相手が居るっての。
身勝手な言い分ばかり並べる王子は、果たしてどんな報いを受けるのか?
【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)
婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました
青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。
しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。
「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」
そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。
実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。
落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。
一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。
※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております
【完結】さっさと婚約破棄してくださいませんか?
凛 伊緒
恋愛
公爵令嬢のシュレア・セルエリットは、7歳の時にガーナス王国の第2王子、ザーディヌ・フィー・ガーナスの婚約者となった。
はじめは嬉しかったが、成長するにつれてザーディヌが最低王子だったと気付く──
婚約破棄したいシュレアの、奮闘物語。
悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~
希羽
恋愛
「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」
才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。
しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。
無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。
莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。
一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。
婚約を破棄して気づけば私は悪役令嬢でした。
hikari
恋愛
妹に婚約者を奪われて狼狽していたら、自分はある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気づく。
妹のナタリーがヒロイン。両親は妹の味方。唯一の味方が弟のルイでした。
しかも、何をしてもダメ出しをする間抜けな平民のダメンズに言い寄られ、しつこくされています。私に分相応なのはこの平民のダメンズなの!?
悪役令嬢ものは初めてです。
今作はギャグがメイン
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる