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しおりを挟むヴィクトリアが、王女の逆鱗に触れたと聞いて、祖父母は我が身が大事になったようだ。
ティモフェイが、王女と婚約したのを吹聴して回り、鼻を高くしていたのが、一変したことに焦って見限ることにしたのだ。
それでも、出戻っても、交渉してヴィクトリアが戻るまではと居させたのも、もしかするとヴィクトリアが王太子の婚約者になれるかも知れないと祖父母が思ってのことだ。
子爵は、そうならなかったら、二度と2人の言うことを聞かないと言質を取っていた。だから、ここに彼らが現れることはない。
「そんな、待って。ここを追い出されても、行くところがないわ」
「そうなるようにしたのは、お前だろ。義兄が離婚しなかったのは、成人するまで面倒を見ようとしていたからだ。お前みたいなのを母親だからと側に置いていたせいで、悪化したと今は思っているようだが」
「っ、」
そこから、ヴィクトリアは母がどうにかしてくれると思っていたが、どうにもならなかった。
「お母様」
「……お前のせいよ」
「え?」
そこから、初めてヴィクトリアは母に怒鳴り散らされた。こうなった全ての元凶のように言われて、眉を顰めずにはいられなかった。
「アナスタシアのものくらい、簡単に取れるでしょうに。第1王子でも、王族なのよ。機転を利かすくらいしなさいよ」
「っ」
「それが、駄目でも戻って来たら終わりだってわかっていたでしょ! 修道院行きから逃れたら、勘当するって言われていたのに。そのまま戻って来るなんて、信じられない!」
「そんなこと言ったって、」
「黙りなさい!」
「っ、」
ヴィクトリアは、母に色々言われても、自分のせいだと思うことはなかった。
明日には、どうにかなっている。
いつもそうだった。どうにか周りがしてくれていた。だから、ほとぼりが冷めるまでおとなしくしていればいい。
でも、どうにもならないことが世の中にはあることを身を以て知ったのは、ここからだった。
ヴィクトリアの母は、使えない娘がいると自分の思う通りにいかないとわかって、すぐに見限った。
母が、どこかに行ってしまい、ヴィクトリアは焦ったかというと最初はそうはならなかった。
段々と月日が経って戻って来ないとわかるとようやく自分でどうにかしなくてはならないとわかっても、何をどうしていいかもわからなかった。
そんな中で、ティモフェイが王女と婚約破棄したと聞いて気分がよくなった。
「あんな女、お兄様には相応しくなかったのよ。これで、お兄様もよくわかったはずだわ」
自分のせいで台無しになったとは思うことはなかった。最低な女と婚約できなくてよかったと思っていると思っていて、父や兄が迎えに来てくれると思って期待していたが、それはなかった。
兄は、母と妹がいなくなってから、父が再教育を施して、少しまともな子息になった。少しだけでも前よりマシで、次の婚約者はしっかりしていて、前のように鼻を高くすることはなかった。
鼻を高くしていた祖父母は騒いでいたが、ティモフェイはそんな祖父母と前のように仲良くすることはなかった。
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