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しおりを挟む姉と妹だけでなくて、シーラに激怒し始めた人物が増えていた。
王妃に媚びを売っていたのに一人帰されることになり、更にはもう来なくてもいいと言われた伯爵家の夫人だ。あの一件でシーラに恥をかかされたと激怒していた。
王妃の出身国のことを全く知らなかった無知を披露することになっただけでなくて、自国の喪中の色合いもわかっていなかったのだ。それに王妃の言葉を自分が遮っていたせいだと思うことなく、ひたすらシーラが目立ちたいだけのせいで、そんなシーラにみんなが騙されていると思っているようだ。
全てをシーラのせいだと思い込み、とんでもない格好をして目立って媚を売ることに成功したかのように周りには話していた。
それこそ、そんなことを言って回れば、今の王妃は小娘にまんまと騙された見る目のない女性だと触れ回っているようなものなのだが、自分の恥をどうにかしてシーラに向けようとしているようだ。そもそも、なぜ帰されたのかも全く理解できていないようだ。
シーラの婚約者の子息のラーシュは、母親がそんな目にあわされたことに激怒していた。
息子が母親の話を真に受けて、シーラの話や公平に何があったかを見ていた面々の話も聞くことなく、婚約を破棄すると言い出したのは、すぐのことだった。
「母上に恥をかかせるような女と婚約していたくないんだ。君のようなのとは破棄して、リネーアの方と婚約することにした」
「妹と、ですか?」
「そうだ」
「……」
シーラたちの母が亡くなって喪中だというのにどちらもやる気でいるのはいいが、流石のシーラもすぐに実行するとは思っていなかった。破棄するならすぐでもよかったが、婚約までその日の内に済ませてしまうとは、殆どの者が思っていなかったことだろう。
それでも、婚約者が喪に服しているとわかっていながら、そんな話を平然とするこの子息にも呆れ返ってしまう。そんなことを言ったことが周りに知られれば、それなりの恥をかくことになるが、そんなこと気にしていないようだ。
婚約者のことを考慮するより、母親の方を優先したのだ。そんな子息だと周りに知らしめることになることを全く自覚してもいないようだ。
「君が、母上に恥をかかせたのを気にして、泣きながら謝罪に来てくれたんだ。母上も、大層気に入ってる。どっかの誰かと同じ血が通っているとは思えないくらいまともな令嬢だ」
「……」
シーラは、それに眉を顰めたくなった。リネーアが、そんなことをしていたことにも、それを信じきったことにも驚かされていた。
(妹が、まとも……? そう見えるのね)
シーラは、彼に何があったかを言うことなく、婚約破棄することになった。それも、喪が明けるのを待つなんてこともせず、もうしばらく後にすることもなく、その日の内にリネーアと婚約までしていた。
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