90 / 99
第3章
20
しおりを挟む王は、いつもと同じように目立って関心を引きたかったようだが、いつもと違うことになっていたことに応用力が追いつかなかったのではなかろうか。
そうはいっても、花の守り手に挨拶さえ済ませれば、どうにか挽回できると思っていた。
それこそ、フィオレンティーナの養父も、王弟夫妻より、王が養父になった方がいいと思っていて、そのために今も待っていて、何ならフィオレンティーナの方がいくらでも待つと変な勘違いもしていた。王は、フィオレンティーナに会わずして、認められていると勝手に思っていたが、そんなことはなかった。
もっとも会う前から、小物そうだと思われていようとは、王弟の方は微塵も考えていなかった。
まぁ、そんなこんなで王は、わざと目立つようにして、フィオレンティーナのところに挨拶に向かうことにしたのだが……。
「何をしている。さっさとしろ。約束の時間に待にあわぬではないか!」
「それが、これ以上、すすめません!」
「何だと!?」
王の乗った馬車が、あるところから一向に動かなくなってしまったのだ。
それによって、悪目立ちすることになった。
「あれは、陛下の馬車よね?」
「やっと、フィオレンティーナ様に挨拶に行かれるみたいね」
「あぁ、今日だったのか」
街の人々は、何事かと見物に来ていた。王を一目見ようとしてのことではない。何やら面白いことになりそうだと集まりだした方が多かった。
それは、妖精たちもそうだ。
「でも、全然進んでいないな」
「何をしているんだ?」
王は馬車が故障したと思って降りた途端、馬車は普通に進んだ。お付きの面々もそうだ。ただ1人取り残されたのは、王だった。
その光景に街の人々は……。
「っ、まさか」
「あの噂は、本当だったのか?」
「信じられない。花の守り手にここまて近づけない者が、この国の王だなんて」
「っ!?」
噂が本当だったと知れ渡ることが、街中で起こっていた。
王は、そんなことないと必死にフィオレンティーナのところに行こうとしたが、観えない壁でもあるかのように進むことは叶わなかった。
それで、街の人々は呆れ果てて、そのうち笑われることになり、それに気づいて……。
「きゅ、急用ができた。王宮に戻るぞ!」
王が、先に進んでしまった者たちに声を掛けるも、あちらはフィオレンティーナに挨拶しないままでは戻れそうもなかった。
「何をしている!!」
「っ、も、申し訳ありません! 戻りたくても戻れません!」
「なっ、」
王を残してずんずんと進む行列に王は絶句した。
だが、街の人々の反応は、慌てる王たちとは違っていた。
「ありゃ、フィオレンティーナ様に挨拶済ませないと戻れないんじゃないか?」
「そりゃ、フィオレンティーナ様も、散々またされているんだ。堪忍袋の尾が切れるさ」
「花の守り手となられた方にこんな無礼を働くとは信じられないわ」
そこから、婚約者である王子が気に入らないからと特例も許さずにしていたことやらを言われて、それを聞いていられなくなり、王だけが王宮に逃げ帰ることになった。
何とも間抜けなことになり、とんでもない恥をかくことになった。
「おのれ、よくも、この私にこんな恥をかかせたな!!」
王は、フィオレンティーナがオギュストに頼んで何かしたと思っていた。所詮は人間の娘だ。花の守り手ににったのも、何かの手違いに違いないと思っていたこともあり、人間の小娘に馬鹿にされた怒りは凄まじいものがあったが、行列と共に出かけたはずが、王だけで戻って来たことで、門番たちも最初は……。
「国王を語る不届き者め!!」
「なっ、何を言うか! 私は……」
王を語るうちに偽物扱いされたりしたようで、それも街の人々に知れ渡って、恥の上塗りをすることになった。
フィオレンティーナは王不在で挨拶を済ませて戻って来るまで偽物扱いされたようだ。
王の顔をよく知る者たちも、そんな風に戻って来たのが本物だと思うわけもなく、そっくりなだけだと思っていたが、本物と聞いても慌てふためいて平謝りしたかというとそんなことはなかった。
ただ、気まずさと言ったらなかったが、王を語るは怒りで顔を赤くしていたが怒鳴り散らして、これ以上の笑いものにされまいとしたが、それは無理があった。
それもこれも、目立ちたがるなおうのせいでしかなかったが、そんなことをわざと広めたのも、オギュストたちの仕業と思っていたが、自分がそうさせることをしたとは思うことはなかった。
58
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ
もぐすけ
ファンタジー
シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。
あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。
テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。
追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~
まいめろ
ファンタジー
錬金術師のウィンリー・トレートは宮廷錬金術師として仕えていたが、王子の婚約者が錬金術師として大成したので、必要ないとして解雇されてしまった。孤児出身であるウィンリーとしては悲しい結末である。
しかし、隣国の王太子殿下によりウィンリーは救済されることになる。以前からウィンリーの実力を知っていた
王太子殿下の計らいで隣国へと招かれ、彼女はその能力を存分に振るうのだった。
そして、その成果はやがて王太子殿下との婚約話にまで発展することに。
さて、ウィンリーを解雇した王国はどうなったかというと……彼女の抜けた穴はとても補填出来ていなかった。
だからといって、戻って来てくれと言われてももう遅い……覆水盆にかえらず。
婚約破棄?それならこの国を返して頂きます
Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国
500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー
根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる