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第2章
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しおりを挟むフィオレンティーナは、なぜか留学生たちに何かと声をかけられていた。特にキャトリンヌから、好かれているようだ。それはフィオレンティーナにもわかった。なぜかまではわからないが。
(染め物って難しいし、大変なはずよね。それも、自分で育てた花で染めたんだもの。それと交換して気に入ってもらえるものがあるといいけれど……)
フィオレンティーナは、そんなことを思っていた。そんなことを思っていたら、料理をすすめられるままに食べて、その美味しさに驚いていた。
この国の料理は、特に貴族が食べる物は味付けが大雑把なのだ。見た目だけが豪華なものばかりだ。豪華に見えるだけで大雑把な分、あとから自分好みの味で誤魔化して食べるのだ。そして、あまり美味しくないから全部を食べずに途中で終わらせるのが一般的になっていた。
それに比べて平民の食事は、見た目が地味だがヘルシーで美味しいものがあった。最初フィオレンティーナは平民と間違われたところから、この学園の食堂で平民の食事を食べていたが、そこから貴族のものを食べることになった時にびっくりしてしまった。あれには驚かされた。
(ここの貴族は、食べきらずに残して食事を終えたがるのもよくわかるわ。私でも、残さず食べるのに苦労したもの。あんなもの食べるくらいなら、平民と一緒の方が断然いいわ。今は、貴族たちにも、そっちが人気になっているようだし。貴族たちも、あれを美味しいと思っていないのがわかって、ちょっとホッとしているのよね)
ここでの食事を食べて、そんなことを思っていたフィオレンティーナは、他所の国の食事に感激していた。
前世の料理に慣れ親しんでいて、覚えているフィオレンティーナにとっては、貴族の食事は残念でならなかったが、平民の食事で近づいていたが、更に美味しいものを口にできたことに懐かしさを更に感じていた。
そこに留学生を探していたフィオレンティーナの双子の妹のチェレスティーナが現れたのはすぐだった。
「こちらにいらしたのね」
「……」
チェレスティーナは、他では誰も話しかけてくれなくなっていて無視され続けて、プライドの無駄に高いチェレスティーナも、自分からは話しかけなくなっていた。
そこで留学生と仲良くしているとアピールできたら自慢できると思って探し回っていたところだった。
それなのになぜか、中々見つけられずにいたのだが、ようやく見つけたことに喜んでいたら、そこにフィオレンティーナが一緒にいるのを見て眉を顰めずにはいられなかった。
逆にチェレスティーナの登場に留学生たちの方が眉を顰めていたことには気づいていなかった。
妖精たちは、チェレスティーナが来た途端、どこかに行ってしまった。
その辺はお互いさまなところがあるが、チェレスティーナはそんなことで引き下がる令嬢ではない。
「フィオレンティーナ。何で、皆さんといるのよ!」
「えっと」
「迷惑なことして、恥をさらさないでよ。ただですら、我が家の恥なんだから!」
「むぅ!」
キャトリンヌは、フィオレンティーナが酷いことを言われたことに怒っていた。わかりにくいが、物凄く怒っていた。キャトリンヌが誰かのために怒ることは、とても珍しいことだった。
リュシアンも、ジョスランも、同じく怒りが込み上げていた。フィオレンティーナを侮辱することが許せなかった。血が騒いで仕方がなかったのだ。
妖精たちも、同じく騒いでいた。さっきまで、どこかに行ったのにすぐさま戻って来て、プンスカ怒っていた。
チェレスティーナを周りが親の敵のように睨んでいたが、フィオレンティーナは妹にそんなことを言われるのはいつものことになっていて怒るなんてことをすることはなかった。
「私たちが誘ったんですよ。今日は、このメンバーでピクニックしたい気分でしたので、あなたこそ邪魔しないでいただけますか?」
「っ、」
ジョスランは、すぐさまそんなことを言っていた。それも、珍しいことだった。
留学生たちに睨まれていることに気づいて、チェレスティーナはたじろいだ。留学生に嫌われては元も子もない。
それでも、すぐに引き下がるわけにはいかなかった。
「なら、次の時は……」
「その時の気分で決めますので、約束したくはありませんね。何より、次があろうとあなたをわざわざ誘う気はありません」
「っ、」
フィオレンティーナは、ジョスランの言葉に目をぱちくりさせた。
(えっと、怒ってる……?)
そんな態度をフィオレンティーナはされたことがなかった。
悔しそうにしながら、フィオレンティーナを睨んでチェレスティーナはどこかに行ってしまった。睨まれることも、色々と言われることにもすっかり慣れていたが、フィオレンティーナは、妹が一人でいる姿に首を傾げずにはいられなかった。
(いつも、友達といたはずなのに。一人でいるなんて珍しい)
それこそ、最近は一人でいるというのにそれにすらフィオレンティーナは気づいていなかった。
チェレスティーナがいなくなっても、留学生と妖精たちの苛立ちが消えることはなかった。
リュシアンは、気にしているのではないかとフィオレンティーナを心配げに見ていた。それは、彼にはとても珍しいことで、本人も気づいていないことだった。
「あの、妹が申し訳ありません」
「え?」
「あの方、妹さん、なんですか?」
「はい。双子の妹です」
「似てない」
「よく言われます」
フィオレンティーナは、困ったように笑った。
ふとリュシアンは、子爵家の庭と子爵令嬢のフィオレンティーナとが、何かしら関係性がありそうに思えてならなかった。
フィオレンティーナが悲しげにしていないのを見て、ホッとしていた。ポカポカした暖かい気持ちになるのだ。
キャトリンヌが、フィオレンティーナを気に入る理由が側にいるだけでよくわかった。
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