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4話
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ふいに、アリシアが俺の手を取った。
小さな手だ。でもその指先には確かな温もりがある。
「エドワード様。今の私は、あなたにふさわしいでしょうか?」
その問いに、俺は初めてはっきりと答えた。
「……ああ、アリシアは、俺にとって特別な人だ」
彼女の瞳が揺れる。
そして、静かに微笑んだ。
——こうして、俺は初めて彼女を心から「愛おしい」と思った。
アリシアの微笑みを見た瞬間、胸の奥に熱が広がった。
これまで俺が見てきたどの笑顔よりも、彼女のその表情が愛おしく感じられた。
「エドワード様?」
彼女が小首をかしげる。
その仕草までもが、心を揺さぶる。
「いや……」
俺は小さく咳払いをして、ごまかした。
「そろそろ戻るとするか……」
アリシアがくすりと笑った。
夕陽の中、彼女の金色の髪が風に揺れる。
――それを見た、俺の心も揺れていた。
王宮の大広間は、きらびやかな灯りと花の香りに包まれていた。
シャンデリアの光が床に映り込み、豪華な衣装を着た貴族たちで溢れている。
俺は会場の入口で彼女を待っていた。
そして、彼女が現れる。
アリシア。
真紅のドレスをまとったアリシアは、今まで見たどの瞬間より美しかった。
派手な装飾に頼らずとも、彼女の持つ優雅さがすべてを引き立ていた。
長く伸ばされた金色の髪が、光を受けて柔らかく揺れる。
目が合うと、彼女は静かに微笑んだ。
「お待たせいたしました、エドワード様」
その笑顔はもう、作り物じゃない。
かつての彼女は打算と計算で微笑んでいた。
でも今は、どこか冷さのある微笑みとは違う、温かなものだった。
俺は、ゆっくりと彼女に手を差し出す。
「行こう、アリシア」
彼女が俺の手に重なる。
指先から伝わる体温に、胸が高鳴るのを感じた。
優雅な音楽が流れる中、俺たちはステップを踏む。
アリシアの動きはしなやかで、俺にぴたりと寄り添っていた。
「……ふふ」
小さく笑う声が、耳元に響く。
「どうした?」
「いえ。ただ、こうしてエドワード様と踊る日が来るなんて、昔の私なら想像もできなかったと思いまして」
アリシアは少し目を伏せ、静かに言葉を続けた。
「私はずっと、エドワード様の婚約者としての役割を演じることしか考えていませんでした。でも今は……こうして過ごす時間が楽しいと、心から思えます」
俺は思わず、彼女の瞳を覗き込む。
もともと美人だった。けれど、どこか冷たく、近寄りがたい印象があった。
でも今のアリシアは穏やかで、自然体で、その笑顔が俺の心に刺さる。
「もう演じる必要はない。そのままでいいんだ」
俺がそう言うと、アリシアの頬がわずかに染まる。
その反応に、不意に胸が熱くなるのを感じた。
舞曲が終わる。でも俺はアリシアの手を握ったまま、そっと囁いた。
「……俺は、今のアリシアが気に入っている」
彼女の瞳が揺れる、唇が微かに震え、言葉を探しているのが分かった。
「アリシアが変わったように、俺も変わったんだ。俺は今の幸せを失いたくないと思っている」
彼女の瞳が、大きく揺れる。
「エドワード様……」
俺はそっと彼女の手を引き寄せ、腕の中へと包みこんだ。
アリシアの細い肩が、かすかに震えている。
それでも、彼女は俺を拒まなかった。
「お前が望む未来を、俺と共に掴もう」
その言葉に、アリシアは静かに頷き、そっと俺の背に手を回した。
俺は、彼女を決して離さないと、強く心に誓った。
夜の静寂が、オレたちを包む。
遠くで響く楽団の演奏が、やけに心地良い。
どれほどそうしていただろうか。
やがて、アリシアがゆっくりと顔を上げた。
その頬には涙の跡が残っていたが、瞳には確かな光が宿っていた。
「……エドワード様、本当に、私と共に未来を歩んでくださるのですか?」
その問いに、俺は迷いなく頷く。
「当然だろ。アリシアは俺の婚約者だぞ?」
「……でも、それは、もともと私が策略で手に入れた立場で……」
「それがどうした?」
俺は彼女の手を取り、優しく指を絡めた。
「お前がどんな方法で俺の婚約者になったかなんて、もう関係ない。俺は今のアリシアを見ている。だから、過去のことは気にしなくて良い。これからは、前だけ見ていこう」
アリシアは目を見開き、少し戸惑ったように視線をさまよわせた。
そして、やがて小さく微笑む。
「……ありがとうございます」
その笑顔は、今まで見たどの笑みよりも儚く、美しかった。
俺はふと視線を上げる。
夜空には三日月が輝き、星星が散りばめられていた。
まるで、2人の新しい未来を祝福しているかのように。
「アリシア、今度の日曜、一緒に城下へ行かないか?」
「城下、ですか?」
「ああ、お前と二人でゆっくり過ごしたいと思ったんだ」
彼女は驚いたように瞬きをして、やがてゆっくりと笑みを浮かべた。
「……はい。喜んで」
俺はアリシアの手をそっと握る。
もう彼女は悪役令嬢じゃない。
破滅の未来が訪れることもない。
俺達の未来は、これから始まっていくんだ。
小さな手だ。でもその指先には確かな温もりがある。
「エドワード様。今の私は、あなたにふさわしいでしょうか?」
その問いに、俺は初めてはっきりと答えた。
「……ああ、アリシアは、俺にとって特別な人だ」
彼女の瞳が揺れる。
そして、静かに微笑んだ。
——こうして、俺は初めて彼女を心から「愛おしい」と思った。
アリシアの微笑みを見た瞬間、胸の奥に熱が広がった。
これまで俺が見てきたどの笑顔よりも、彼女のその表情が愛おしく感じられた。
「エドワード様?」
彼女が小首をかしげる。
その仕草までもが、心を揺さぶる。
「いや……」
俺は小さく咳払いをして、ごまかした。
「そろそろ戻るとするか……」
アリシアがくすりと笑った。
夕陽の中、彼女の金色の髪が風に揺れる。
――それを見た、俺の心も揺れていた。
王宮の大広間は、きらびやかな灯りと花の香りに包まれていた。
シャンデリアの光が床に映り込み、豪華な衣装を着た貴族たちで溢れている。
俺は会場の入口で彼女を待っていた。
そして、彼女が現れる。
アリシア。
真紅のドレスをまとったアリシアは、今まで見たどの瞬間より美しかった。
派手な装飾に頼らずとも、彼女の持つ優雅さがすべてを引き立ていた。
長く伸ばされた金色の髪が、光を受けて柔らかく揺れる。
目が合うと、彼女は静かに微笑んだ。
「お待たせいたしました、エドワード様」
その笑顔はもう、作り物じゃない。
かつての彼女は打算と計算で微笑んでいた。
でも今は、どこか冷さのある微笑みとは違う、温かなものだった。
俺は、ゆっくりと彼女に手を差し出す。
「行こう、アリシア」
彼女が俺の手に重なる。
指先から伝わる体温に、胸が高鳴るのを感じた。
優雅な音楽が流れる中、俺たちはステップを踏む。
アリシアの動きはしなやかで、俺にぴたりと寄り添っていた。
「……ふふ」
小さく笑う声が、耳元に響く。
「どうした?」
「いえ。ただ、こうしてエドワード様と踊る日が来るなんて、昔の私なら想像もできなかったと思いまして」
アリシアは少し目を伏せ、静かに言葉を続けた。
「私はずっと、エドワード様の婚約者としての役割を演じることしか考えていませんでした。でも今は……こうして過ごす時間が楽しいと、心から思えます」
俺は思わず、彼女の瞳を覗き込む。
もともと美人だった。けれど、どこか冷たく、近寄りがたい印象があった。
でも今のアリシアは穏やかで、自然体で、その笑顔が俺の心に刺さる。
「もう演じる必要はない。そのままでいいんだ」
俺がそう言うと、アリシアの頬がわずかに染まる。
その反応に、不意に胸が熱くなるのを感じた。
舞曲が終わる。でも俺はアリシアの手を握ったまま、そっと囁いた。
「……俺は、今のアリシアが気に入っている」
彼女の瞳が揺れる、唇が微かに震え、言葉を探しているのが分かった。
「アリシアが変わったように、俺も変わったんだ。俺は今の幸せを失いたくないと思っている」
彼女の瞳が、大きく揺れる。
「エドワード様……」
俺はそっと彼女の手を引き寄せ、腕の中へと包みこんだ。
アリシアの細い肩が、かすかに震えている。
それでも、彼女は俺を拒まなかった。
「お前が望む未来を、俺と共に掴もう」
その言葉に、アリシアは静かに頷き、そっと俺の背に手を回した。
俺は、彼女を決して離さないと、強く心に誓った。
夜の静寂が、オレたちを包む。
遠くで響く楽団の演奏が、やけに心地良い。
どれほどそうしていただろうか。
やがて、アリシアがゆっくりと顔を上げた。
その頬には涙の跡が残っていたが、瞳には確かな光が宿っていた。
「……エドワード様、本当に、私と共に未来を歩んでくださるのですか?」
その問いに、俺は迷いなく頷く。
「当然だろ。アリシアは俺の婚約者だぞ?」
「……でも、それは、もともと私が策略で手に入れた立場で……」
「それがどうした?」
俺は彼女の手を取り、優しく指を絡めた。
「お前がどんな方法で俺の婚約者になったかなんて、もう関係ない。俺は今のアリシアを見ている。だから、過去のことは気にしなくて良い。これからは、前だけ見ていこう」
アリシアは目を見開き、少し戸惑ったように視線をさまよわせた。
そして、やがて小さく微笑む。
「……ありがとうございます」
その笑顔は、今まで見たどの笑みよりも儚く、美しかった。
俺はふと視線を上げる。
夜空には三日月が輝き、星星が散りばめられていた。
まるで、2人の新しい未来を祝福しているかのように。
「アリシア、今度の日曜、一緒に城下へ行かないか?」
「城下、ですか?」
「ああ、お前と二人でゆっくり過ごしたいと思ったんだ」
彼女は驚いたように瞬きをして、やがてゆっくりと笑みを浮かべた。
「……はい。喜んで」
俺はアリシアの手をそっと握る。
もう彼女は悪役令嬢じゃない。
破滅の未来が訪れることもない。
俺達の未来は、これから始まっていくんだ。
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面白いと言って頂いてとても嬉しいです。