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しおりを挟む普通の貴族の娘なら、楽な嫁ぎ先を探してくれ、と願うのではないだろうか。
今、私の目の前にいる異世界の娘はそのような考えは微塵も無いようだと判断できる。
ついさっき浮かんだ黒い疑いを1人心の中ですまなく思う。
仕事がほしいと言い、その理由を述べるに連れ、その瞳は輝きを強くしていく。
キラキラと澄んでいて眩しい。
今朝、初めて会った時はあんなに不安に揺れていたのに…。
だが…。
「…嫁ぐ方が楽で簡単だと思うが。私なら、それができる。私がいなくなった後も心配が無いようにしっかりとした後ろ盾はもちろん付ける。」
「だから、それじゃダメなんです。誰かをいつまでも頼るのではなくて、ちゃんと自分で立っていたい。…そうやって、行こうと思って、学校でも勉強を頑張って、いろいろな資格も取って、社会人にもなったのに…昨日までの自分が…何もかも…無くしちゃったじゃないですか。」
唇に力が入り、噛むような仕草が目に入る。
音も無く穂乃香の瞳から一すじ雫が落ちた。
先ほどまで、強い輝きを放っていた瞳から違う強さ…悲しみの強さがあふれ出る。
その涙でさえキラキラして眩しくて、ずっと見ていたい気になる。
加虐心…私にはそういう嗜好も無い。
「また、そうなるかもしれないけど…今までみたいに自分がやってきたようにしていないと、不安でつぶれそうなんです…。それだけじゃないけど、ここで生きていくなら、生きていける自分になりたいんです。」
今までだって意志の強い女を見てきた。
ホノカの場合、意思が強いというより、志が高いというのだろうか。
見た目がこんなに幼く弱々しいのに、生きる力を感じる。
生きていく、という決意を。
命が亡くなる危険が迫っている訳ではないのに。
安全が保障されている事も理解しているように見えるが『生きたい』という願いが内側から見えるようだ。
自分にはなかった強く生きたいという感情が羨ましく…とても魅力的で惹かれる。
デフロットは穂乃香を静かに少し強引に己の胸へと抱き込んだ。
静かに穂乃香の背を摩る。
自分たちの行った行為で傷ついた心が癒え、涙が早く止まる様にと願って。
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