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剣をかまえるその姿は、勇ましく、凛々しく、美しい。
子供の頃に読んだ神話の本の神々の挿絵みたいだ。

「アンドレア様!」

自由が利かない身体で一歩踏み出す。
絡みつくジェラールの腕がその動きを許さない。

「おっと!急に走ったら、転んじゃうよ。・・・な~んだ、ここも見つかっちゃったのか。案外この国の内報部もちゃんと仕事しているんですね、公爵様。」

ばかにするような物言いに、私はジェラールを睨んだ。

「・・・エルを返してもらおうか。」

アンドレア様の凛とした声が辺りに響く。
その声に絶望していた気持ちに、一筋の光が射す。

「返してというのは、自分の物って言うのが前提なんですけどね。・・・元々、エルは僕のだったはず。こっちが、奪われたのを取り返しただけの事。」

「・・・エルは自分からお前を切り捨てたと記憶しているが。お前が馬鹿なことさえしなければ・・・。」

決して相手の挑発にのらず、窘めるような言い方が冷静なんだとわかる。

「あんたが僕を捕まえたりするから、そうなったんだろ!あんたが僕たちの邪魔をしたんだ。」

その反対にジェラールは声を荒げる。
イライラしている事が目に見えてわかる。

「勝手な言い分はよせ。誰のせいでもない。お前自身が蒔いた種だ。・・・これ以上悪事を広げるな。逃げ切れるわけない。」

「どうかな?・・・やってみないとわからないだろ?味方は多い方なんでね。」

ニヤリと笑うジェラールは自信があるみたい。
今の私は、二人の会話を静かに見守るしかない。

「お前の思惑通りにはいかない。・・・悪いがここへはネーエルドからの迎えは来ない。我が国王よりネーエルドの王に釘を刺したからなあ。・・・お前の事は、知らないそうだ。」

「なに?!」

焦った声を出すジェラール。

「ネーエルドの歓楽街を取り仕切る『紅の蝶の館』の女主人を知っているだろう?お前に伝言だ。・・・『この件から手を引く』と。」

「! あんた、いったい何をしたんだ!」

さらに大きな声を出すジェラール。
『紅の蝶の館』の女主人・・・。
その人のことはわからない。
でも、この会話から恐らくジェラールが味方だと思っていた人たちは、そうではなくなった、という事なんだろう。




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