公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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ガラスが無い小さな窓が高い位置にある。
そこから射す光だけで部屋は、登ってきた階段より明るかった。
だから、ハッキリとライラの顔が見れた。
その表情からは何も読み取る事ができない。
この塔に入る時に教えられた通り、ライラは簡素な木の椅子に座り、手も足も縄で縛られていた。
アンドレア様は私たち2人を見張るように壁際に立った。
この部屋に入った時から、私たちのお互いの視線は合っていた。
睨む訳でも、観察する訳でもなく、視線を外す事もせずに、ただ見合っていた。

「・・・来てくれないと思っていた。ジェラールとのあんな所を見られて、もう友達ではないでしょ。それに、・・・別の方と結婚が決まったんでしょう?だったら、元でも婚約者を奪った女として、あなたにとって憎む価値の無い女だと思ってたから。」

ライラが静かに話し出す。
何も無い部屋のだからか、声が少し響く感じがする。
独り言のように始まった話しに、なんと言っていいのかわからず、口を開かずにいれば、ライラは続ける。

「私がここに来てから、そんなに経ってないのに・・・。ジェラールと婚約していた時も可愛かったけど、今はキレイになったね。愛されてる自信なんでしょうね。どこか偉い人に望まれて結婚するんですって?」

「え?」

「お父様が来た時に教えてくれたの。もう、私が簡単に会う事ができない、偉い方の奥方になるんだって。・・・ねえ、ジェラールの事、好きじゃなかったの?」

「・・・」

「そんなにすぐに別の人の所にいけるの?知っていたんだよね?・・・私がジェラールをずーと好きだった事。」

やっぱりそうだったのか、と心の中でため息を吐く。
ライラは、ヌハニアの中毒症状に苦しんでいたとアンドレア様が話してくれた。
ジェラールにヌハニアで操られていたのだと言っていたが、それだけでは無い気がしていた。
以前、ライラがジェラールを見つめる目に疑問を感じた事を思い出した。
少し苦しそうな瞳の色に、身体の具合でも悪いのかと心配を口にすれば、何でも無いと返してくれた事を。

「・・・ジェラールは、ライラの気持ちわかってたんだね。」

自分に言うように、小さく言葉が出た。
だから、あなたの気持ちに応えてくれたんでしょ?

「知ってよ。・・・それを利用されたの。それでもかまわなかった。」

「利用?」

少し申し訳なさそうに、瞳が揺れている気がした。

「・・・始まりは偶然だったの。・・・エルが来なかった夜会で、ジェラールが取引の話をしてるのを偶然聞いてしまって、誰にも言わないでくれ、と頼まれたの。エル、あなたも知らない事を私が知っていて、それをあなたにも言うなって言われた事が・・・嬉しかった。2人だけの秘密を持ったみたで。」

ライラが初めて視線を外した。
まるでその時の事を思い出すような、少しだけ嬉しそうに夢見るような表情で。

「だから、私は本当に誰にも言う気がなかったの。・・・でもね、ジェラールは信じなかった。」

再びライラが私を見据える。
その瞳の奥に何か鈍い光が見え、私は少し怖くなった。
足が僅かに震える。
でも、側にアンドレア様がいてくれる。
それで怖さが無くなる訳じゃないけど、心強いのはたしか。
唇を引き結んで、身体に力を入れる。





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