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「『ライラも秘密を作ろうよ』・・・そう言って、気がついた時は、あの薬を飲ませられていた。そして、あの人に抱かれたの。あの人は犯したつもりかもしれないけど。私は違う。・・・自分からあの薬の宣伝の手助けを何度もしたのよ。」

「宣伝?」

この話しに不似合いな言葉に疑問を持った。

「あの薬を飲んであの人に抱かれる所を欲しいと思っている人に見せるの。」

「!!」

想像もしていなかった2人の事に驚いて、息をするのも苦しくなる。
なのにライラはニッコリ微笑んでいた。
その微笑の意味がわからない。

「私だって、人前でなんてイヤだったけど、その度にあの人が私に触れてくれるなら嬉しかった。あの人も、私が薬を欲しがるようになり従順にできるし、宣伝もできるしで、一石二鳥だって喜んでたわ。・・・あなたが見たあの晩もそうだったのよ。」

ライラには好きだと言う感情があったけど、ジェラールには無かったと言う事?

「おどろいた?エル、あなたにはできないでしょ?ジェラールを好きな私だからできたのよ。フッフッフッ。」

しばらく静かに笑うライラの声だけが部屋に響いた。

「あ~スッキリした。・・・私の罪を軽くする為に、お父様はが爵位も返上して、今までの仕事も国に献上して国営化しちゃったんだって。2人で田舎で静かに暮らそうって言うんだもの。まるで軟禁よ。そうなるかはわからないけど。・・・だから、もう二度とできないでしょ?こういう女の子同士の恋の話し。してみたかったのよ。今までは秘密だったから、誰にもできなかったじゃない。だから、来てもらったの。付き合ってくれてありがとう。」

身体の自由がきかないから、ニッコリ笑って首だけコクンと曲げて礼をするライラ。

「ジェラール、逃げたんでしょ?会わない方がいいわよ。・・・会ったらきっとあなたをもう離さないから。」

そう言って今まで見たことの無い、意志の強さを感じる鋭い視線を私に投げた。

「・・・話しは終わり。」

そう言われても、どうしたらいいのかわからなかった私はその場に立ち尽くした。
ライラが私と話をしたい、と言ったから会った。
私は何も話していない事に少しの気まずさを感じている。
ジェラールの事が好きだったのか、というライラに聞かれた質問さえ答えていない。
私は、家族や兄妹に対する親愛の情があるだけで、ライラほどの感情をジェラールに持ち合わせていない。
なのに、何の疑問も持たずに婚約者の立場に立っていた事が、ライラに悪い事をしていたみたいに思える。
ちゃんと素直に答えるのが誠意のような気がした。

「・・・ライラ。ごめ・・」

謝る言葉は最後まで言わせてもらえなかった。

「謝って欲しいわけじゃないの。・・・知ってほしかったの。私がジェラールを好きな事。私がエルにとってどんなに酷い友達かを。そして・・・ジェラールがどれだけ酷い男かを。」

そう言ったライラの瞳が、今までで一番悲しそうで、辛そうだった。
でも、綺麗な静かな光を奥に感じた。
これも本当の事なんだ。
ジェラールへの思いを抱えながら、自分を酷い友達だと思いながら、きっと私の側にいたんだ。
胸が締め付けられるように苦しなって目を閉じた。
ここで涙をライラに見せるのは違うと思った。
ゆっくりと1つ呼吸をし、自分を落ち着かせた。
少しだけ早くなった胸の音が大人しくなる。
これが彼女と最後なら、私なりの気持ちを返したいと思った。
言葉ではない何か。
だとしたら、最後までちゃんとした私を見せようと思う。
一歩下がって、一番綺麗に見えるようにゆっくりとした淑女の礼をした。
ずーとだまって側にいてくれた感謝の気持ち。
ライラの気持ちを気付く事ができなかった事への謝罪。
そして、これからのライラの人生が平穏である事への願い。
姿勢を正す。
身体の向きを変え、ライラを見ることなく、一歩、一歩、しっかりとした足取りでその場を離れた。




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