公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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「今すぐに返事をしなくてもいい。・・・私も迷っている。」

アンドレア様はそう言ったきり、考え込むように黙ってしまった。
きっと、迷っている何かをどう話すべきか頭の中で組み立てているのだろう。
鋭く早く迷いがない判断力、そう評価されているアンドレア様が迷っている。
どんな事なのか、少し怖い。

「・・・昨夜・・・シャンタル男爵とライラ・シャンタルが面会した。」

「えっ!ライラがライラのお父様と?」

少しでもアンドレア様の顔を見ようとして首を回すが見えない。
私の問いに何の返事もせずにアンドレア様が話を続ける。

「本来なら、牢から出るまで親子であっても会う事はできない。・・・ただ、今回の事に対してシャンタル男爵は責任を感じているようだ。男爵の爵位を返上する事を条件に面会は叶った。」

爵位を返上?
どうしてそんな大事に。

「ちょと待ってください。どうして?・・・・・・どうしてライラは、いつまでも牢にいるのです?単なる浮気・・・からの伯爵家同士の婚約が破談になっただけでしょ?」

自分で浮気と言って胸がきりきりとした。
言葉に出すとまだ辛い。
お腹に回っていた腕を解き、私を越して窓に近づくアンドレア様。
横の顔を見れば、窓よりどこか遠くを見ている気がした。

「あの日、あの部屋に入った時に何か感じなかったか?」

「え?・・・何かとは?」

急いで記憶を辿るが、全てが不の感情に支配され、どこか暗いイメージだけが浮かんでくる。
私の方に首だけで視線を合わせるアンドレア様が冷たく悲しそうに見える。

「・・・香りとか・・・。」

香り?
あの日、部屋に入る前にジェラールの香りを感じて、その部屋にいるのだと確信した事を思い出す。

「ジェラールの香りが部屋の前からしました。それは、部屋に入ると一層強くなったような・・・それが何か?」

アンドレア様の深い溜め息が聞こえた。

「・・・あの男は普段からその香りを身に纏っていたのか。気付かれないように、普段からそうしていたのだろう。」

「どういうことですか?ジェラールの香りがなんなのですか?」

意味がわからず、イラついてしまう。
少しアンドレア様に近づけば、身長差から顔を見上げることになる。
私と視線をしっかりと合わせゆっくりと口を開く。

「あの香りは、ヌハニアの花の香りだ。・・・知っているか?」

え?ヌハニアの花?
その花の名前で記憶を探る。

「ええ。・・・見た事はありませんが、ジェラールの家で栽培していて・・・その花から香油をつくることができるから、気に入って使っていると聞いたことがあります。」

急に話をそらされた感じがして眉を顰める。
確かにその花の香りは珍しい。
でも、それがなんだというのだろう。











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注意
このお話に出てくる人物・国・植物等はすべて架空です。
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