公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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少しだけ目を見開き、すぐにゆっくりと目を伏せたバルド。
外の鳥の囀る声だけがこの広い応接間に響く。

「そうでしたね・・・。お疲れでしょうから、先に休まれますか?アンドレア様がお帰りになるまで。・・・お屋敷のご案内は私ではなく、やはりアンドレア様の方がよろしいでしょうから。」

その話は終わり、と言わんばかりに、話しを変えてしまったバルド。
初めて来た場所、初めて会う人に、私はこれ以上何が聞けるだろう。
バルドにわからないように溜め息をつく。
その時、目の端で何か動く物が見えた。
それは、窓の外。
綺麗に刈られた芝上。
よく見ようと窓の方に顔を上げる私。

「・・・どうされました?」

バルドの声に、振り向けば少しだけ眉間に眉を寄せてこちらを窺う表情をしていた。

「窓の外に・・・何か動く物が見えて・・・。」

もう1度窓を見て、自信なさげに言う。

「どの辺りですか?」

窓に近寄りながらバルドが聞いてくる。
バルドの後に付くように、ソファから腰を上げ、窓へと移動し指差す。

「あの東屋の近くの・・・低い木と低い木の間の芝の所です。白い何かが・・・。」

「あーあれは、ウサギでございます。」

「ウサギ?」

私の方を振り返り、バルドは外の光を浴びて少し逆光で見えにくいが、やわらかく微笑んでいる表情で話し出す。

「そうです。野のウサギでございます。こちらは、エルヴィナ様が住んでいらっしゃった王都でも賑わいのある所ではございませんので、いろいろな動物たちが木をつたったり、穴を掘ったりして、庭を訪れてくれるんですよ。アンドレア様を始め、この屋敷の者は生き物が好きで、時折、パンくずなどを与えたりするものですから、余計に集まって来ましてね。・・・エルヴィナ様は生き物はお好きですか?」

そういえば、この国の四大公爵と言われる王家筋の公爵家は、それぞれ東西南北に居を構え、城を守っていた事を思い出す。
それぞれの敷地は広く、森や山、小さな湖を含む土地もあると聞く。
ユーゴ公爵は城の裏手に位置する北を守る家だ。
大きな森を所有していると聞いた事がある。
その森に、たくさんの野生の動物がいるという事?

「はい!大好きです!!・・・ごめんなさい、大きな声を出してしまって・・・。」

「いいえ、元気なお声で大変ようございます。・・・私と2人だけですので、どうぞ遠慮なさらず。」

はしたない娘、公爵夫人に相応しくない、と評価されたらどうしよう、と焦ってしまった。
でも、そんな私の心を読んだのか、バルドはさらに優しく微笑んでくれる。
そんなに簡単に人を信用してしまってどうかと思う部分もあるが、早くこの屋敷の人たちとも仲良くなりたいとも思う。
バルドの言葉を信じ、息を吐いて、肩の力を抜く。

「・・・お言葉に甘えます。・・・私、特に馬が好きで、自分でブラッシングや餌やりもしていたんです。もちろん馬にも乗れます!でも、家族から、はしたないし危ないと言われて最近は乗馬も禁止されてしまって・・・。」

昔は、バスケットにお昼に食べるパンや果物を詰めてもらって、お兄様と遠乗りをした。
馬との一体感になれる事や風の気持ちよさなど、最高に気分が良かった感覚を覚えている。
最後に馬に乗ったのはいつだっただろう。

「そうですか。・・・では、アンドレア様とご一緒に馬に乗ってはいかがですか?」

良い事を思いついいた、とばかりにバルドはニッコリと提案してくれる。

「できるなら私はご一緒したいのですが・・・はしたない、と思われないでしょうか?」

手を左右に振りながら、バルドは笑顔だ。

「それぐらいレディのたしなみとして許していただけると思いますよ。むしろ、エルヴィナ様の笑顔が見れたり、2人きりの時間を持てるので、お喜びになる事でしょう。どうぞ、おねだりしてくださいませ。」

「はい!ありがとうございます。・・・あのウサギとも仲良くなりたいので、私もパンくずをあげたいのですが・・・。」

窓の外でピョンピョン跳ねる白いウサギを指差し、早速、控えめにお願いする。

「ようございますよ。・・・では、今より少々身軽なドレスに着替えられたはいかがですか?その方が動きやすいかと。」

自分の服装を見れば、初めて公爵家へ上がる為の相当なおめかしドレスを着ていた事を思い出す。

「そうですね。・・・よろしくお願いします!」

コテっと頭を下げて、2人で目が合えば少しだけ声を出して笑った。
ウサギのお蔭で緊張も取れたし、バルドとも少しだけ気も許しあえた。
公爵家の一日目としては、順調だと思い心が軽くなった。

「・・・随分と楽しそうだな。」

その声にびっくりして、声のする方を見れば、ドアノブに手を掛けているアンドレア様がいた。

「お帰りなさいませ。」

すぐにバルドがアンドレ様に腰を折って挨拶をし近づいていく。





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