勘左衛門の猫

猫絵師

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荒れ寺の怪

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背の高い雑草を踏みつけて嘉恵の後を追うと、少し開けた場所に出た。

行き着いた先で猫の姿を探して提灯の明かりを掲げた勘左衛門だったが、その明かりで奇妙なものを見つけた。

それは、打ち捨てられた墓石のように見えた。

しかし、近寄ってよくよく目を凝らすと、それは古くなったボロボロの石段だった。それは斜面に埋もれるように並んでいて、確かに人為的なもののように見えた。

こんなところに?

表の道から随分と外れた場所だ。それがひどく気味が悪く感じられたが、勘左衛門はその違和感に吸い込まれるように石段に足をかけた。

手入れの悪い石段は半分土に埋まっていて、草も伸び放題だ。

すべらないように足元に気をつけながら石段を上がると、先に見えてきたのは荒れ放題な石段には似合わない小綺麗な小さい寺だった。

勘左衛門は生まれてからこの歳までこの町に住んでいたが、こんな場所にこんな寺があるなんて知らなかった。

足が勝手に動く。

孝太を探していたことも、嘉恵を連れ戻そうとしたことも忘れて、勘左衛門の歩みは目の前の寺に向かった。

操られるように寺に向かう勘左衛門の後ろから、ぱしっ、と何者が手を掴んだ。

その衝撃で勘左衛門は正気を取り戻した。

ぎょっとして振り返った彼の目に飛び込んできたのは、これまたこの場に似つかわしくない若い女の姿だった。

歳の頃は16、7といったところだろうか?

女の吸い込まれるような色の薄い瞳はまっすぐに勘左衛門を見つめていた。

いきなり現れた女は、驚きで言葉も出ない勘左衛門の手を強く握って、険しい顔で「いけませぬ」と彼を叱った。

「なんてことでしょう。勘左衛門様が誘われてしまうなんて…

あぁ、いけませぬ。こうなるならあたくしがあの禿鼠はげねずみをなんとかいたしましたのに…

どうぞ、どうぞ、小僧など忘れておかえり下さいませ。さぁ、さぁ」

女は痛いほど強く握った勘左衛門の手を引いて石段の方に足を運んだ。着物のすそから覗く女の足は何故か裸足だった。

ほっそりとした華奢な女の腕は信じられないほど力が強かった。

半ば引きずられるように石段に戻された勘左衛門だが、初対面であるはずの女が言った言葉に困惑していた。

“この女…何故、俺の名前を知っている?”

彼女の存在の違和感に気づいた瞬間、肌が粟立った。

提灯を捨てた勘左衛門の手は腰に差した脇差しに向かった。

鞘から飛び出した刃は、勘左衛門の手を引く女を襲った。

「ぎゃっ!」っと、女の口から恐ろしげな悲鳴が上がった。

目の前で血飛沫が上がったが、勘左衛門の手に残った手応えは浅かった。

彼女は人並み外れた反応で勘左衛門の放ったの刃から逃げおおせたようだ。

「何をなさいます?」

怪我を負った腕を抑えながら、女は彼の間合いの外から恨めしそうに勘左衛門を睨んでいた。

その顔からはすでに女の化けの皮が剥がれかけていた。

白いおもてには獣の毛並みが浮き出ており、目は爛々らんらんと野生の光を放っている。

赤い口元はいびつに釣り上がり、口の隙間から人間では考えられないような鋭い牙が覗いていた。

やはり人では無い。化生の者か…

女の姿で誘惑する化生の者は昔から物語にて語られる。本当にそんなものが目の前に現れるとは驚きだが、《神隠し》があるのなら化け物がいても不思議はない。

眼の前の女を敵と認識した勘左衛門は得物を取り替えた。

脇差しから刀に持ち直した勘左衛門の姿を見て女は怯えたように肩を震わせた。先ほど刃がかすめた右腕を庇うように抱いて、女は姿勢を低くして悲しげにうめいた。

「…あ、あたくしは…勘左衛門様のために…」と、なおも言い募る女を睨みつけ、勘左衛門はピシャリと言い放った。

「お前は俺を食うつもりだったのだろう?あいにく俺は《神隠し》でさらった子どものようにうまくはいかんぞ」

「あたくしは!子どもは食うておりません!誓って!人など食うてはおりません!」

「それはお前の首を跳ねてはらわたを確認すれば分かること。大人しく成敗されい!」

あやかしの妄言などに耳を傾ければおのが身が危ない。

刀を構えて前に出た勘左衛門の姿に、女は悲鳴を上げて逃げ出した。

女は兎のように高く跳躍すると、近くに生えていた木に飛び移り、あっという間に木の枝を揺らす音を残して夜闇に紛れてしまった。

その逃げ方はやはり人間のものではなく、化け物のそれだ。

あっけに取られて固まった勘左衛門だったが、すぐに気を取り直した。

逃げたとはいえ、どこかからこちらの様子を伺って、また襲いかかってくるかもしれない。月明かりはあるものの、それだけでは心もとない。

得物を手にしたときに投げ出した提灯の明かりは、地面に落ちたときに灯火を失っていた。

手にとって提灯を確認したが、中の蝋燭は問題なさそうだ。火を入れればまた使えるだろう。

灯りを用意しようと火打ち石を取り出したが、ぬるい風に阻まれてうまく灯りが育たない。

焦れば焦るほど手元が悪くなる。

風を避ける場所を探したが、木の影では先程逃げた妖怪が戻ってきて襲われるかもしれない。そうなると、あの怪しい寺の影で明かりを用意するしか無い。

刀を手にしたまま、用心して寺に近づいた。

全く…こんなつもりではなかったのに…

孝太や嘉恵を探すどころか我が身すら危ない。しかも刀まで抜いたのにくだんの妖怪にも逃げられてしまった。非常にまずい状況だ。

武士が刀を抜いたなら何もなしで終わらせることなど出来ない。片手でとっさに抜いたのが脇差しだったのが悔やまれた。刀なら確実に仕留めていただろう。油断していた勘左衛門自身の失態だ。

風を凌ぐために近づいた寺は遠目に見たら小綺麗に見えたが、やはり人の気配もなく、それなりに荒れていた。

寺の境内に足を踏み入れると、隠れていた鼠らしい生き物が鳴き声を上げながら侵入者から逃げ出した。

荒れた境内の板張りの床には、小枝のようなものがパラパラと散乱しており、勘左衛門の足元でパキパキと砕ける音を立てた。

足元に何も無い場所を選んで腰を落とし、すぐに手に取れるように刀を床に置いた。灯りを用意しようとして火打を打った。

カッと小気味良い火打ち石の音に火花が散る。火花は稲光のように一瞬周りの景色を浮かび上がらせた。

二度三度と打った火打から放たれた火花では安い蝋燭に灯りを灯すには足らなかったが、宵闇に慣れた彼の目に不穏な影を認識させるには十分だった。

一回目は目に入っただけだ。

二回目はもしかしてと思った。

三回目に打った石で確信した。

床板が軋むような「ぎ、ぎぎ」と不気味な音が耳に届く。

慌てて足元に置いた刀を拾おうと手を伸ばしたが、そこにあるはずの刀が無い。空振りした勘左衛門の手には代わりに白い枝のようなものが握られていた。

骨だ。

勘左衛門は医者でも学者でもないが、それが何かの生き物の骨の一部だと云うことぐらいはわかった。よく目を凝らしてみると、骨の表面には乾いた肉片のようなものと、何かで削られたような痕が残っている。

背筋に冷たいものを感じ、勘左衛門は骨を放り投げて刀を探した。提灯だけなら諦めてすぐ逃げることも出来たが、刀だけは捨てて逃げることはできない。

「探し物はこれですかな?」

突然、暗闇から老人の声がした。

しゃがれた男の声に驚いて顔を上げると、勘左衛門の視線の先に、両手で捧げるように刀を持つ僧侶の姿があった。

人がいたのか?それより、いつの間に刀を奪われたのだろうか?

「いけませんなぁ…御仏みほとけ御前ごぜんで、殺生をなさるおつもりですか?」

本堂に響くしゃがれた声はもっともらしく勘左衛門に説教した。ズルズルと布を引き摺る音を立てながら、声の主は勘左衛門との距離を縮めた。

装いに騙されそうになるが、眼の前の老人は明らかに僧侶などではない。その顔は人と名乗るには異様だった。

鼻面はなづらの長い顔。上唇から突き出した異様に長い前歯。顔の中心から離れた小さなまなこは左右に別れ、瞳の奥がほの暗く輝いている。ヒクヒクと忙しなく動く口元は鼠のそれに似ていた。

先程の女といい、勘左衛門は関わってはいけない世界に足を踏み入れてしまったようだ。

二人の足元を黒い塊がいくつも走り抜けた。

「ぢゅ、ぢゅぢゅ」と鼠の声が闇の中で蠢き、小さな足音が複数重なる。

暗闇にもかかわらず、僅かに届く月明かりを反射する視線が幾重にも重なって勘左衛門を取り囲んでいた。

冷や汗が全身から吹き出すのを感じる。

どんな真剣勝負でも気持ちでは負けたことの無い。そんな勘左衛門でもこの状況では腰が引けていた。唯一の得物である脇差しに右手を添えたものの、金縛りにあったように身体はピクリとも動かない。

とてつもない殺気に囲まれ、動いたら最後、そこに落ちている骨のように食い荒らされる姿が容易に想像できた。

「拙僧の寺を知られたからには、お侍様とて見逃せませんなぁ…

硬そうですが、我儘わがままは言いますまい。命は大切ですからな…」

「…こ、この骨は何だ?」

必死に喉から絞り出した言葉に、僧侶は怪しげに笑った。

「骨?さぁて?拙僧は腹を満たしただけの事。自然のことわりというものですよ。

あぁ、あのいくさの絶えなかった混沌の時代が懐かしい…

あの頃は同胞たちと心赴くままに腹を満たすことが出来ました。

今では人が一人消えれば騒ぎになる時代ですから、非常に生きづらい世になったものです。このねぐらも移らねばなりませんなぁ」

僧侶は過去を懐かしむようにゆっくりと言葉を続けた。

一歩、また一歩と近づく怪僧に従うように、周りの鼠も少しずつ勘左衛門との距離を詰めた。

胆力のある勘左衛門でさえ、この状況に発狂しそうになっていた。それでもみっともなく取り乱して無様をさらさなかったのは、彼の武士としての矜恃きょうじがあったからだ。

勘左衛門に魔を払う力など無い。打つ手などほぼ無いに等しいが、最後まで武士らしく、と覚悟を決めた。

脇差しを抜いた勘左衛門に鼠の波が一斉に押し寄せた。

身体を駆け上がってくる鼠に刃をふるったが、数が数だ。追い払えたのはほんのわずかで、焼け石に水とはこのことだ。

あっという間に群がった鼠は勘左衛門の全身に噛み跡をつけた。一つ一つの傷は浅いものの、全身に針を突き立てられるような痛みに襲われ、勘左衛門は悲鳴を上げた。

最後の希望である脇差しも取り落とし、全身で踊り狂うように抵抗したがそれも些細ささいな抵抗だ。払い落としても払い落としても鼠たちは諦める様子は無い。

暗い廃寺に響くあざけるような老人の哄笑こうしょうが恐怖心をあおった。

全身の痛みと恐怖で気が狂いそうだ。生きたまま食われるなど、まともな死に様ではない。

ここに打ち捨てられた骨の持ち主たち同じく、勘左衛門も骨を並べるかと思われた。

「ふぎゃー!!」

突然、本堂に響いた獣の声にその場の全ての動きが止まった。

ズドン、と大きな音を立てて、天井から何かが降ってきた。その衝撃に驚いた鼠たちが勘左衛門への攻撃を緩めた。

天井から降ってきたのは先程逃げられた女の姿を借りた妖怪だ。

女は恐ろしげな顔で勘左衛門を睨むと彼に飛びかかった。

この好機にさっきの仕返しに来たのだと思ったが、女は怒りの形相で勘左衛門に張り付いた鼠を追い払った。

きゃぁきゃぁ、と悲鳴を上げて逃げる鼠を掴んで床に叩きつけ、素足で踏みつける。牙の除く口に捉えた鼠を真っ二つに噛みちぎり、あっという間に鼠を蹴散らした女はギラギラ光る眼で怪僧を睨んだ。

「よくも、よくも!この禿鼠はげねずみ!あたくしの、あたくしの大切な勘左衛門様に手を出したな!」

女の乱れた髪の隙間からピンと尖った三角の耳が覗いた。着物の裾から覗く白い足の他に、二股に別れた猫の尾が揺れている。

その先の黒い尻尾の色合いに、覚えがあった…

「…か、嘉恵…か?」

恐る恐るその名を口にすると、女は「はい」と答えて振り返った。

振り返ったその顔は柔らかい女の面に変わっていた。

先程までの恐ろしげな妖怪の面構えとは似ても似つかぬ愛らしい顔に化け、媚びるような表情で嘉恵は微笑んでいる。

「お側を離れたあたくしが悪いのです。こんなところに迷い込んでしまって…」

そんなしおらしい事を言いながらも、嘉恵は勘左衛門に近づこうとした鼠を見つけて素早く足で踏み潰した。

彼女は目玉や臓物を撒き散らして絶命した鼠を行儀悪く足で片付ける一方で、勘左衛門には媚びるような愛想を向けた。

「すぐ済みますから」と言って、彼女はまた怪僧に向き直った。

「この禿鼠。あたくしの縄張りの外と黙っていたら好き勝手しよって。子どもが消えるぐらいなら黙っていたけど、勘左衛門様に手を出したとなればぶち殺してくれる!」

シャァ!と吠えて嘉恵が坊主姿の妖怪を襲った。

慌てて逃げ出そうとする怪僧だったが、ズルズルと引きずっていた僧侶の衣装が動きを鈍らせたようだ。

怪僧の従えていた鼠たちも化け猫を恐れて我先にと逃げ出していた。

怪僧は逃げるのに邪魔な法衣を脱ぎ捨て、身軽になって逃げようとした。

服を脱ぎ捨てて逃げようとしたのは、子牛ほどの大きさのある巨大な黒い鼠だった。

逃がすまじと襲いかかった嘉恵ともつれるように本堂の床を転げ回り、化け鼠と化け猫の取っ組み合いが始まった。

お互いに殴る蹴る噛むの無茶苦茶な喧嘩だ。

嘉恵は果敢かかんに大鼠と戦っていたが、どこか動きがぎこちない。

よく眼を凝らして見れば、嘉恵は勘左衛門が脇差しで傷つけた右腕をかばうように戦っていた。

これはまずいと悟った勘左衛門は辺りを見回した。

化け鼠の脱ぎ捨てた法衣の下に、月明かりを反射する刀が見えた。

妖怪は刃物が苦手と聞いたことがある。脇差しは嘉恵を傷つけたし、刀を奪ったということは、これが化け鼠に通じる武器だからだと思いたかった。

取り返した刀を手に、取っ組み合う嘉恵たちに駆け寄った。

刀を手に駆け寄った勘左衛門を見て、化け鼠が「ひいっ!」と悲鳴を上げた。

「逃がすものか!」と化け鼠に食らいついて離さない嘉恵を信じて、掲げた刀身を思い切り振り下ろした。

一刀目が鼠の太い首に当たって骨に食い込む手応えを残した。

それでもまだ大鼠は諦め悪く暴れた。嘉恵が振り払われて床に転がった。

柔らかそうな胴を狙って勘左衛門は全力で二刀目を振るった。

刀身が黒い鼠の腹に沈み、化け鼠は汚いはらわたを撒いて動かなくなった。

廃寺の本堂は合戦の痕のような様相になっていた。

化け鼠を倒して、緊張感が緩み、うずくまって動けなくなった勘左衛門の背を何かがコツンと小突いた。

はっと、振り返ると、元の三毛猫に戻った嘉恵が勘左衛門に甘えるように鳴きながら額をこすりつけていた。

怯えたように耳を畳んで尾を巻いているのは、勘左衛門が彼女の正体を知ってしまったからだろう。

勘左衛門は刀をしまうと、嘉恵に向き直って胡座あぐらを作った。

「俺達の勝ちだ。ようやったな、嘉恵」

勘左衛門の言葉に、嘉恵は甘えるように鳴いて膝に乗った。

ゴロゴロと喉を鳴らす猫も、優しく撫でる男も満身創痍と言った様子だ。

でも生きてる。

それがとても尊いことに思えて、勘左衛門は今夜見たことを夢と思うことにした。
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