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3:ダンジョンクローラーになろう
338:龍脈の回廊、ふたたびのオルコトリア
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町中の料理人と大道芸人、それとギルド職員たちが右往左往する中。
新ギルド会館最上階では――
「ルリーロちゃぁん、ミノタウ素材のぉー分配なんだけどさぁ、シガミーがぁ戻ってからでぇもぉー平気ぃー?」
フェスタ景品の食事会でも使われた、立派なバンケットテーブル。
その縁を、てちてちてちり♪
歩幅2センチで走る、美の女神御神体。
頭に巻かれた、やたらと長い鉢巻きには――『痩身♡美白』の文字。
てちてちてち、てちてちてちた♪
鉢巻きの端が地面につかない、ギリギリの速度を保っている。
「はぁい、平気でぇすぅー。聞いてる素材の半分わぁ猪蟹屋へ。残りはガムランと央都で協議の上、市井にも配るつもりですのでぇー♪」
御神体に併走する、年の頃は18、9の若い娘。
然してその正体は――江戸の世を闊歩した齢200歳の化け狐である。
元・五穀豊穣の眷属にして――稲荷のミドルネームを冠する――現・辺境伯コントゥル家名代。
「そぉぅわのぉーん? ふぅ、ふぅ――けっこう走ったねぇー♪」
スタート地点らしき扇子を振りかえる、御神体。
その距離はせいぜい3シガミー――子供三人分。
イオノファラーで言うなら、24イオノファラーだ。
この根菜か丸茸か、まるでやや大きめな料理の付け合わせは――
この世界を統べる美の女神、イオノファラーの仮の姿である。
神々の船の故障により、神々の世界へ帰還不能になった彼女。
その存在を消滅の危機から救うため――美の女神関係者シガミーの手により作られた、疑似アーティファクト。
「その調整にぃわぁー、半年ぃかぁかぁりぃーそぉーおぉーでぇーすものぉー」
立派な魔法杖。グルリと渦を巻く先端に寄りかかり――
なかば浮かんだ状態で御神体と会話する、伯爵夫人ルリーロ。
「それじゃあ、ふぅー。ミノタウのぉ角ならぁ沢山あるからぁー、はぁはぁ――国王さまぁと騎士団とぉ……ギ術開発局だっけぇ? それと、ふぅひぃ――ラプトル姫さまのぉ四本程度おぉー、先にお渡ししてもぉ、はひぃ、ふはぁ――構いませんけれどもぉん?」
はやくも息が上がる、御神体。
「えっ!? じゃぁわたしにもぉー、ちょぉうだぁいぃー!」
腰まで有るクルクルした巻き毛と、ふっさふさの狐の尻尾が――
わっさわっさと揺れうごき、からまり気味に跳ねる。
「はぁひぃ――でわぁ、ルリーロさまもいれてぇー、ふぅひぃ――角5本をさきにぃ、お渡ししましょおぅ♪」
ふぅーい。走った走ったと、ぺったりぺったり歩きだす御神体。
「イオノファラー、『痩身♡美白』ノ四文字が泣いていまスよ」
「いーのよっ! 元の体わぁ、BMI標準値を維持してたしねぇーん♪」
よっこらせぇー♪
とうとう、その場にゴロリ。
「ふウ、伯爵夫人。主要ナ希少部位ノ一部ヲ装備一式分ニ必要なだケ特別にオ渡しシた場合、先日ノ〝家宝ニ匹敵すル一式装備〟納品クエストが完了したりハしませんか?」
へたり込んだ女神の代わりに、その眷属がおうかがいを立てる。
「あ、それは駄っ目でぇーすっ! 元々ぉ、カラテェー君のぉーたぐい希なるぅ職人とぉしてのぉ、腕ありきのお話なのでぇー――ココォォン♪」
意気銷沈する女神と眷属。
その時だった。
それはまるでシガミー――行儀の悪い方のシガミーが、最初に見せた大道芸。
その最後に放った、大爆発のような。
ズドッゴッガァァァァァァァァァァッ――――――――――!!!!!!!!!!
ガラガラガラガラゴドゴガッシャパリパリィン!!!
「ギャッ!? 何ごと!? 痛ったっ!?」
突然の号砲に倒れる、丸茸御神体。
「杖よ!」
寄りかかっていた、山菜のような一本杖を――――パシリとつかむ伯爵夫人。
飛ぶ棒迅雷が腕を伸ばし、丸茸御神体をひとつ回収する。
粉塵が晴れたとき――ペントハウスの一画は崩れていた。
綺麗な円形。床と天井に、大穴が空いている。
草原に落ちた球から出てきた、名物受付嬢には擦り傷ひとつ無かったと――報告が入ったのは、ギルド会館から全員が退避した後だった。
新ギルド会館最上階では――
「ルリーロちゃぁん、ミノタウ素材のぉー分配なんだけどさぁ、シガミーがぁ戻ってからでぇもぉー平気ぃー?」
フェスタ景品の食事会でも使われた、立派なバンケットテーブル。
その縁を、てちてちてちり♪
歩幅2センチで走る、美の女神御神体。
頭に巻かれた、やたらと長い鉢巻きには――『痩身♡美白』の文字。
てちてちてち、てちてちてちた♪
鉢巻きの端が地面につかない、ギリギリの速度を保っている。
「はぁい、平気でぇすぅー。聞いてる素材の半分わぁ猪蟹屋へ。残りはガムランと央都で協議の上、市井にも配るつもりですのでぇー♪」
御神体に併走する、年の頃は18、9の若い娘。
然してその正体は――江戸の世を闊歩した齢200歳の化け狐である。
元・五穀豊穣の眷属にして――稲荷のミドルネームを冠する――現・辺境伯コントゥル家名代。
「そぉぅわのぉーん? ふぅ、ふぅ――けっこう走ったねぇー♪」
スタート地点らしき扇子を振りかえる、御神体。
その距離はせいぜい3シガミー――子供三人分。
イオノファラーで言うなら、24イオノファラーだ。
この根菜か丸茸か、まるでやや大きめな料理の付け合わせは――
この世界を統べる美の女神、イオノファラーの仮の姿である。
神々の船の故障により、神々の世界へ帰還不能になった彼女。
その存在を消滅の危機から救うため――美の女神関係者シガミーの手により作られた、疑似アーティファクト。
「その調整にぃわぁー、半年ぃかぁかぁりぃーそぉーおぉーでぇーすものぉー」
立派な魔法杖。グルリと渦を巻く先端に寄りかかり――
なかば浮かんだ状態で御神体と会話する、伯爵夫人ルリーロ。
「それじゃあ、ふぅー。ミノタウのぉ角ならぁ沢山あるからぁー、はぁはぁ――国王さまぁと騎士団とぉ……ギ術開発局だっけぇ? それと、ふぅひぃ――ラプトル姫さまのぉ四本程度おぉー、先にお渡ししてもぉ、はひぃ、ふはぁ――構いませんけれどもぉん?」
はやくも息が上がる、御神体。
「えっ!? じゃぁわたしにもぉー、ちょぉうだぁいぃー!」
腰まで有るクルクルした巻き毛と、ふっさふさの狐の尻尾が――
わっさわっさと揺れうごき、からまり気味に跳ねる。
「はぁひぃ――でわぁ、ルリーロさまもいれてぇー、ふぅひぃ――角5本をさきにぃ、お渡ししましょおぅ♪」
ふぅーい。走った走ったと、ぺったりぺったり歩きだす御神体。
「イオノファラー、『痩身♡美白』ノ四文字が泣いていまスよ」
「いーのよっ! 元の体わぁ、BMI標準値を維持してたしねぇーん♪」
よっこらせぇー♪
とうとう、その場にゴロリ。
「ふウ、伯爵夫人。主要ナ希少部位ノ一部ヲ装備一式分ニ必要なだケ特別にオ渡しシた場合、先日ノ〝家宝ニ匹敵すル一式装備〟納品クエストが完了したりハしませんか?」
へたり込んだ女神の代わりに、その眷属がおうかがいを立てる。
「あ、それは駄っ目でぇーすっ! 元々ぉ、カラテェー君のぉーたぐい希なるぅ職人とぉしてのぉ、腕ありきのお話なのでぇー――ココォォン♪」
意気銷沈する女神と眷属。
その時だった。
それはまるでシガミー――行儀の悪い方のシガミーが、最初に見せた大道芸。
その最後に放った、大爆発のような。
ズドッゴッガァァァァァァァァァァッ――――――――――!!!!!!!!!!
ガラガラガラガラゴドゴガッシャパリパリィン!!!
「ギャッ!? 何ごと!? 痛ったっ!?」
突然の号砲に倒れる、丸茸御神体。
「杖よ!」
寄りかかっていた、山菜のような一本杖を――――パシリとつかむ伯爵夫人。
飛ぶ棒迅雷が腕を伸ばし、丸茸御神体をひとつ回収する。
粉塵が晴れたとき――ペントハウスの一画は崩れていた。
綺麗な円形。床と天井に、大穴が空いている。
草原に落ちた球から出てきた、名物受付嬢には擦り傷ひとつ無かったと――報告が入ったのは、ギルド会館から全員が退避した後だった。
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