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10 やっぱり話の分かる王家の人たち
しおりを挟むうう……。違うの、違うんです! 私の悪意ではありません!! ご先祖様が作った呪文を読み上げただけなんですうぅぅ!!
とはいえ、元凶は私。悪いのも私。その場で土下座して、正気を取り戻した第二王子殿下と公爵令嬢に全ての事情を話して全身全霊で謝罪した。
王族に。しかも婚約者のいる王子に魅了魔法をかけたのだ。しかも、事故とはいえその婚約者をこうして命の危険に晒している。とてもじゃないが許されることではないだろう。
私は極刑も覚悟していた。
――が。
「ああ、そういう事情なら仕方ないな」
「ええ。そういう事情なら仕方ありませんわね」
「……へ?」
意外なことに。第二王子殿下は怒ることなく冷静に話を聞いてくださった。隣の公爵令嬢もウンウンと頷いていらっしゃる。
え。いいの? 問題ない……の?
「――って、いやいやいや、仕方ないで許されることではないですよね!?」
前にも見たなこの流れ。ってか、この国の王族どんだけ言い分聞いてくれるのよ。どんだけ理解があるの。心が広いにもほどがあるわ!!
「いや、だって。王宮内で壊滅的な魔法を使われるのを考えたらこの程度は許容範囲だろう」
「ええ。わたくしも同意見ですわ。特に被害もございませんし。ねえ、殿下」
流石は完全無欠の第二王子殿下。本人に加えてご婚約者まで人格者でいらっしゃる。こうして私の浅慮から始まった魅了騒動は幕を閉じた――筈だった。
「キャ――――♡」
……え。
親愛の情たっぷりの穏やかな笑顔を公爵令嬢から向けられて。堪らずといった感じで両手で顔を隠して走り去る第二王子殿下。目を見開いた公爵令嬢がギギッ…っと、錆びたからくり人形のように、ぎこちない動きで何かを言いたげに私を見る。
いえいえいえ! まさか!! 流石に私、このタイミングで再度魅了魔法を使ったりしませんて!!! 疑いの目線を跳ね返すようにブンブン首を振りつつ否定する。
「違っ! 違います!! 私、何もしてな……」
「ああ、懐かしいな。アイツ、昔はミーティス嬢からああやってよく逃げ回っていたっけ。まー二人とも小さかったから覚えてはいないだろうが」
「え?」
「は?」
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