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第6話 お隣

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 ここのアパートの人たちは優しい。わたしが独り暮らしなのを知って、よく夕ごはんのおかずを持ってきてくれる。とても助かる。

 実はお料理が苦手なのだ。包丁を取ると必ずといって、手を切るから親からも佐江ちゃんからも無闇に触らせてもらえなかった。そのせいで、お料理なんて全くしたことない。

 いつもコンビニ弁当だけじゃ、独り立ちできないよな。早く自立しないと。そのために独り暮らししたんだから。

 黄昏時。今日もアパートの住民さんから晩御飯のおかずを貰った。とてもありがたき。
「おお~今日は肉じゃがかぁ。おいしそ」
 わたしは早速いただくことに。
 この人の作る料理は美味しい。まるで母の味みたいだ。懐かしくて温かくなる。人の手で作った料理は、こんなにも美味しいなんて。

 佐江ちゃんはあぁ、言ってたけどやっぱりわたし、ここが好き。住民さんは優しいし、大学生活も順調。

 それから毎日のようにその人からいただくことに。とっても美味しいし、困ることはないのだけど、そろそろ肉じゃがは飽きてきた。申し訳ないけど。

 今日は偶々帰りが早くてコンビニにも寄らずに真っ直ぐ家に帰宅。すると、隣の家から美味しそうな香りが。また肉じゃがだ。でもこんなわたしのために作ってくれるなんて、ありがたいし、受け取らなかったらそれは失礼だ。

 でも何故だろう。
 血の匂いが濃ゆい。頭をガンガン狂わせて、嘔吐しそうなほど。もしかして、肉じゃがじゃなくて別の料理を作っていたりして。ほんの少し楽しみだ。

 期待した反面、いただいた品は肉じゃがだった。あの匂いは何だったのだろう。


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