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再々
第59話 晴れ
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図書館から近いファミレスで昼食をとることに。四葉さんは蕎麦を。俺はカツ丼にした。昼飯時もあって人も多い。ガヤガヤと賑わってる。ガラガラ空いてる田舎とは大違い。
「ここ、多いすね」
話しかけると返事がなかったから顔を上げてもう一度話しかけてみた。
「昼飯時もあって人多いすね」
再度話しかけたらようやく反応してくれた。きっと周りの音で俺の声が届かなかったのだろう。
「え? あ、うん。わたしもここ初めてきた」
「今度行きつけのトコ行ってみたいべ、じゃなかった、です」
まずった。都会の大ど真ん中で田舎語喋ったら変な目見られるかも。この方言は封じないといけないのについつい出てしまうべ。
四葉さんは何か喋りたそうに口をパクパクしながらも、ポツリと呟いた。今まで聞いたことない弱弱しい声。
「今度、バイトじゃない日に行こう。だから」
「あー! ラインの交換! 都会では仲良くなったらまずそれをするのが定番だったんべ! 四葉さんとは部活の先輩だしな、何で忘れてんだ」
俺はポケットからスマホを取り出す。四葉さんも慌てて鞄からスマホを取り出した。お互いのスマホを翳し、俺のスマホの中に四葉さんの連絡先が入った。
数少ない連絡先の中に四葉さんの名前と可愛らしい動物のアイコン。
「これ、可愛いすね」
「か、飼ってる猫。ミナていうの」
「猫飼ってるんすね。実家は犬べ」
実家で飼っている老犬の雑種犬の写真を四葉さんに見せる。茶色で毛先は白いよく近所から狐だっていわれる。ケージの布団の中で丸まって寝ている写真。
「わ、可愛い」
「ふっふっ、近所の子供から大人気なんべ。噛まないし、懐くし」
「へぇ~噛まないんだ。じゃあミナを連れて行ってもいいのね。わたし、全然猫派寄りじゃないから犬派もいけるし」
「ん?」
「あ、こっちの話だから! 気にしないで!」
四葉さんはスマホを大事そうに握りしめて恍惚に笑った。
人も多くなって外で並ぶ人も出てきた。ご飯も食べたし長居すれば後の人たちが困るだろう。会計を済ませて外へ出る。
「すいません。お金、出してもらって」
「全然いいよ。バイトやりながら節約してる子に出せなんて言う先輩じゃないからね」
ふふっと四葉さんは笑ってくれたがお金は後々尾を引く。
「今度、奢らせてください」
「え、それはデートの誘い?」
四葉さんは目をうるうるさせて上目遣いで言ってきた。
「で、で~と……」
あ、あれ? そんな誘い方だったか? 今度奢らせてくれ=どっか二人で遊びに行く、ということはこの言葉の解釈でいえば確かにこれはデートの誘いだ。無自覚でデートの誘っちまった。俺が言葉の咀嚼をしている間に四葉さんは話を続けてきた。
「えっと、じゃあ来週の土曜日で。二人きりで。みんなには内緒ね」
唇に人差し指を翳して四葉さんは今まで見たことないほど幸せに笑った。う、うわー! デートの約束までしちまった。どうしよ。そんな大人ぽいやり方できねぇべ。
店を出て再び暑さに晒される。ちょっと動いただけでも汗をかいている。鉄板の上にいるかのような暑さで頭上では太陽とミンミンゼミがけたましく鳴る。まるで、合戦のように鳴り響く。
デートの話だけで頭がいっぱいだ。来週はどうするかもんもんと考えていると背後から忍び寄る影が。
「お、そこにいんのはろくろっちとパイセン⁉」
この高い声は振り向かなくても知っている。振り向くと案の定、奴らは揃いも揃ってる。こんな都会で大勢がいる街中で誰も学校の人とはあっていないのに何故、この二人とは鉢合わせるのか。
「伊礼くんに琉巧くん」
四葉さんが小さく手を振った。
二人は人を避けながらこちらに寄る。
伊礼は金髪さながらにアロハシャツにサンダル、グラサンかけて何処かのチンピラのような格好。対して隣にいる琉巧は今流行りの黒いシャツに肩にウエストポーチをかけている。ピアスもしてて大人ぽい。
「二人して何何? デートとか?」
「お前らこそ二人してこんなところであうとは思わなかった」
伊礼はニヤニヤしグラサンを額の上にあげた。つぶらな瞳が出てくる。
「へぇ。そんな仲良かった? あ、もしかして邪魔だっかな? 僕たちは普通に買い物だよ」
琉巧も細目で笑っている。揶揄っているな。仲良いのは本当じゃがまるで恋人のように扱われたらそりゃ、四葉さんが一番困るだろ。勘違いをされたら四葉さんが可哀想べ。
「こらこら! 勘違いしてはならんべ! 俺と四葉さんは仲のいい先輩後輩だべ」
「ふーん」
「ほぉ」
伊礼と琉巧は適当に流す。立ち話もなんだし、どこか涼しい場所に。
「ほーん。そんならろくろっちのボロアパート行くぜ!」
「はっ⁉」
有無を言わさずに三人は街から出ようとしている。まるで意図してきたかのような段取りと軽快な足取り。
「おいおいおい! 待ち!」
三人のあとを追う。びっくりして体が動けなかった。なんで涼しむ場所が俺んボロアパートなんだ。エアコンもないべ。
「ここ、多いすね」
話しかけると返事がなかったから顔を上げてもう一度話しかけてみた。
「昼飯時もあって人多いすね」
再度話しかけたらようやく反応してくれた。きっと周りの音で俺の声が届かなかったのだろう。
「え? あ、うん。わたしもここ初めてきた」
「今度行きつけのトコ行ってみたいべ、じゃなかった、です」
まずった。都会の大ど真ん中で田舎語喋ったら変な目見られるかも。この方言は封じないといけないのについつい出てしまうべ。
四葉さんは何か喋りたそうに口をパクパクしながらも、ポツリと呟いた。今まで聞いたことない弱弱しい声。
「今度、バイトじゃない日に行こう。だから」
「あー! ラインの交換! 都会では仲良くなったらまずそれをするのが定番だったんべ! 四葉さんとは部活の先輩だしな、何で忘れてんだ」
俺はポケットからスマホを取り出す。四葉さんも慌てて鞄からスマホを取り出した。お互いのスマホを翳し、俺のスマホの中に四葉さんの連絡先が入った。
数少ない連絡先の中に四葉さんの名前と可愛らしい動物のアイコン。
「これ、可愛いすね」
「か、飼ってる猫。ミナていうの」
「猫飼ってるんすね。実家は犬べ」
実家で飼っている老犬の雑種犬の写真を四葉さんに見せる。茶色で毛先は白いよく近所から狐だっていわれる。ケージの布団の中で丸まって寝ている写真。
「わ、可愛い」
「ふっふっ、近所の子供から大人気なんべ。噛まないし、懐くし」
「へぇ~噛まないんだ。じゃあミナを連れて行ってもいいのね。わたし、全然猫派寄りじゃないから犬派もいけるし」
「ん?」
「あ、こっちの話だから! 気にしないで!」
四葉さんはスマホを大事そうに握りしめて恍惚に笑った。
人も多くなって外で並ぶ人も出てきた。ご飯も食べたし長居すれば後の人たちが困るだろう。会計を済ませて外へ出る。
「すいません。お金、出してもらって」
「全然いいよ。バイトやりながら節約してる子に出せなんて言う先輩じゃないからね」
ふふっと四葉さんは笑ってくれたがお金は後々尾を引く。
「今度、奢らせてください」
「え、それはデートの誘い?」
四葉さんは目をうるうるさせて上目遣いで言ってきた。
「で、で~と……」
あ、あれ? そんな誘い方だったか? 今度奢らせてくれ=どっか二人で遊びに行く、ということはこの言葉の解釈でいえば確かにこれはデートの誘いだ。無自覚でデートの誘っちまった。俺が言葉の咀嚼をしている間に四葉さんは話を続けてきた。
「えっと、じゃあ来週の土曜日で。二人きりで。みんなには内緒ね」
唇に人差し指を翳して四葉さんは今まで見たことないほど幸せに笑った。う、うわー! デートの約束までしちまった。どうしよ。そんな大人ぽいやり方できねぇべ。
店を出て再び暑さに晒される。ちょっと動いただけでも汗をかいている。鉄板の上にいるかのような暑さで頭上では太陽とミンミンゼミがけたましく鳴る。まるで、合戦のように鳴り響く。
デートの話だけで頭がいっぱいだ。来週はどうするかもんもんと考えていると背後から忍び寄る影が。
「お、そこにいんのはろくろっちとパイセン⁉」
この高い声は振り向かなくても知っている。振り向くと案の定、奴らは揃いも揃ってる。こんな都会で大勢がいる街中で誰も学校の人とはあっていないのに何故、この二人とは鉢合わせるのか。
「伊礼くんに琉巧くん」
四葉さんが小さく手を振った。
二人は人を避けながらこちらに寄る。
伊礼は金髪さながらにアロハシャツにサンダル、グラサンかけて何処かのチンピラのような格好。対して隣にいる琉巧は今流行りの黒いシャツに肩にウエストポーチをかけている。ピアスもしてて大人ぽい。
「二人して何何? デートとか?」
「お前らこそ二人してこんなところであうとは思わなかった」
伊礼はニヤニヤしグラサンを額の上にあげた。つぶらな瞳が出てくる。
「へぇ。そんな仲良かった? あ、もしかして邪魔だっかな? 僕たちは普通に買い物だよ」
琉巧も細目で笑っている。揶揄っているな。仲良いのは本当じゃがまるで恋人のように扱われたらそりゃ、四葉さんが一番困るだろ。勘違いをされたら四葉さんが可哀想べ。
「こらこら! 勘違いしてはならんべ! 俺と四葉さんは仲のいい先輩後輩だべ」
「ふーん」
「ほぉ」
伊礼と琉巧は適当に流す。立ち話もなんだし、どこか涼しい場所に。
「ほーん。そんならろくろっちのボロアパート行くぜ!」
「はっ⁉」
有無を言わさずに三人は街から出ようとしている。まるで意図してきたかのような段取りと軽快な足取り。
「おいおいおい! 待ち!」
三人のあとを追う。びっくりして体が動けなかった。なんで涼しむ場所が俺んボロアパートなんだ。エアコンもないべ。
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