折々再々

ハコニワ

文字の大きさ
上 下
51 / 78
再々

第51話 巡り合う

しおりを挟む
 時は26世紀。

 ひだまりの陽光が降り注ぐ春。温かくて桜がヒラヒラと風に揺られて散っていく。地面に散らばった桜の花弁は桜色の絨毯のように広がっている。そこを踏むものはいない。
 雪の草原ならぬ、桜色の草原のように広がるそこは圧巻するほど美しい。

 花弁がハラハラと散っていく景色と静かな風を肌と目で感じ、呆然と眺めていると一人の女の人がその草原に足を踏み入れた。サクッサクッと桜色の絨毯を踏み抜いていく。
 まだ誰も踏み入れてない絨毯は音がして、そこに足跡が残る。

 おいおい東京もんはこんなすんばらしい景色を踏み抜くほど度胸さ強えんだな! その場で固まって去っていく女性の後ろ背をずっと眺めてた。

 腰まであるストレートの長い髪の毛。黒い髪の毛は艶があって、樹木の隙間から溢れる陽光の日差しから玉のように光っている。
 制服姿でもわかるスレンダーで足がモデルのように細くて長い。黒いストッキングが長い足を隠すよう。でも一瞬だけど、通り過ぎたとき、女性の顔はやたら整っているくせに、なぜかこの世を飽きた退屈そうな、悲しそうな顔をしていた。

 はっ、そうだ。いけねぇ初日から遅刻するわけにいけねぇ! 東京の学校に進学するために田舎から上京し中々お目にかかれない田舎とは違った都会の、それまでの常識を覆すルールと景色に圧巻され、やや一日目で疲れてるが、高校生活だけはどうせなら夢を叶えたい。

 わざわざど田舎から上京し都会で住むのは、俺には叶えたい夢がある。それは『都会の高校キャンパスライフを謳歌したい』からである!
 漫画やアニメとか、都会の高校キャンパスライフは男女とイチャイチャしたり彼女できたり、三角関係にもなったり、そういうのど田舎では経験できないからな!

 さて、俺の名前は戸村 六路とむら ろくろ。都会に憧れてど田舎から上京した平凡な人間。趣味は特になし。特技は弓を射ることくらいかな。弓道部があれば入ると思う。

 入学式に無事間に合いそわそわと落ち着かなくキョロキョロしていると右後ろからトントンと肩を叩かれた。振り返るとブニッと頬が指に食い込んだ。
「あはは、ごめん。あまりにもガチガチになってたから緊張を解そうかな~と思って」
 謝罪は述べているがヘラヘラ笑っているので悪いと思っていないが、こういうのは男じゃなくて女にやられたかった!
「悪いて思ってないだろ。あとこういうのは、女の子にやられたかった! 俺の周り、女子さいねぇけどさっ! 女の子から声かけられたかった‼」
「うわーすごい人発見。見てよ琉巧」
「お前変な人間捕まえすぎだろ」
 琉巧と呼ばれた男子生徒は呆れてため息ついた。

 すると司会の人が「生徒会長からの挨拶です」と号令がかかると、会場がたちまち、しん、となった。気がする。からかってきた男子生徒も口を閉ざし、前を見ろと言わんばかりに顎をしゃくる。
 言われんくても分かってるべ。
 ほとんどそっぽを向く感じで前を向く。

 すると、壇上には朝、桜色の絨毯を踏み抜いた女性が立っていた。そういえばあれ、この学校の制服なのか。その人は壇上に立つや、先にマイクをいじり、次にこちらに視線を向けた。

『新入生の皆さん、おはようございます。生徒会長の柴 四葉しば よつばです。冬から温かい日差しへ心地いい季節になりました。あなたたちに出会えることをわたしたちはずっと歓迎してました。新たな一歩を踏み出した新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます……』

 マイク超しなのに心地いい声。
 冷たい顔と裏腹にその声は神経に入っても痛くない、心地よく、まるで抱きしめるような優しい声で俺たち全員に目配らせながら挨拶を告げている。俺は壇上の上をただただ見上げてた。魅入られてた。
 やがて挨拶が終わると柴四葉生徒会長は一礼して壇上から立ち去る。
 壇上から立ち去って先生たちと同じ席に座てる。ニコリとも笑わないのを見て、モヤモヤ感じた。笑わせよう、なんて思うことも。

 それから入学式が終わり各教室へ。
 さて、この教室で夢のキャンパスライフを送る一歩だ――束の間の……
「何でお前らがいるんじゃ」
「うひょ、同クラでいいじゃん!」
よろ
 俺と同じ教室にあの男子生徒二人がいて、しかも席が近い。
「こーいうのは女子と再会&キャキャうふふじゃねんの⁉ 何か思ってたとの違うべ!」
 愕然と膝をつく俺を見てケラケラ笑う。

 金髪で鼻や唇にピアスをいれてる自称真面目だぞと言う見た目ヤンキーでしかない男、伊礼いれい。最初に声をかけたやつ。
 そして一見クールな見た目をしてて顔が整っているほうが琉巧るうく。だが、そいつがスマホ片手に話している内容は「昨日別れた女しつこいから殴った」とか「こんなくっそつまんないのYouTubeとかマジ無能」話す内容が悪質。
 夢のキャンパスライフは男友達からなのか。
 まあ、これからだよぁ。うん。男友達とか学生時代にゃ大事なものだもんな。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
※4話は2/25~投稿予定です。間が空いてしまってすみません…! 架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...