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再々
第52話 友達
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ど田舎から上京して都会の高校へ進学した俺は、早くも二人友達をみつけた。二人はお互い家がここから近くて幼馴染らしい。
高校生活において友達は有力。最高なキャンパスライフを送るためには良き相手。気さくで明るい伊礼が輪の中にいれてもらっている。
入学式が終わり、高校生活が始まる。
都会でひとり暮らしを舐めていた。実は親元から離れて一人で暮らすことも憧れていたのだ。それが今回、仇となっている。高校生が親元から離れて高校の勉強、それからアパート代、水道、ガス、そして食費諸々1人でやっていくことにひとり暮らしを始めて早三週間目でギブアップになった。
「それでもすごいぜ。朝早起きして弁当自分で作ってんだろ? すごいすごい。俺にゃできない」
伊礼が購買で買ったミルクヨーグルト味を飲みながら言った。
「早起きできないもんね」
琉巧がくすくす笑う。
――昼休み。午後の授業を終えてようやく飯の時間にありつける時間に、聞きなれない音が教室中に響いていた。それは、腹の虫の音。六路の。
「寝坊してコンビニに行ける時間もなくて、かつ、購買の競争も負けた哀れなろくろっちにはこれを俺から授けよう」
伊礼が購買で買った梅干しおにぎりを俺の前に。ちなみに〝ろくろっち〟とは俺のことだ。2人から呼ばれている。
「て、天使のお恵みだ~!」
「さようさよう」
伊礼はまんざらでもなく高笑う。
「なら、僕もほら」
琉巧は自分の弁当の中から唐揚げと焦げたタコさんウインナーを差し出してくれた。
「うおぉん、持つべきものは友達じゃこの御恩は一生忘れない」
俺は涙を流しながらそれを食す。
「それ、彼女からのだろ? ちゃんと食べろよ」
伊礼がドン引きして琉巧の弁当を指差す。
「不味いし焦げてるし、よくこんなの人に渡すよね」
琉巧はヘラヘラと笑って箸をおいて弁当を蓋した。苦言を言っているがわりかし、食べてることに彼もそこまで悪人じゃない。
こうして助け合ってくれる友人がいてくれることに感謝しつつ、学校生活を送る中でずっと、あの日からあの人のことが気になる。
部活見学を見終わった帰り道、空が暗くなって街の灯がポツポツつき始める時間帯。バスを待っている間、彼女――柴四葉と再会した。というか目もあっていない。一方的に彼女の姿を見つけただけで、彼女の視界には入っていない。
俺と彼女の距離は二人分離れている。
遠くから眺めるために少し離れた席で座った。
バスが来るまでにあの人は、本を読んでいた。文豪小説だろうか、外で、しかも、まだ風が肌寒いのに頑なに本を読んでいて、少し興味が湧いた。
この時間帯で帰ってんのか。こんな遅い時間帯に? どんだけ夢中になってんだ危ねえべありゃ。
それから学校ですれ違うといい匂いがしたりとか。髪の毛サラサラしてて都会の女は次元が違う。
それからはもう、目で追っていた。気になって気になって、三年の教室にわざわざ行くほど。その行動に二人は気づいて揶揄ってきた。
「三年の柴生徒会長、気になるんだろ?」
「あの人、美人だもんなー」
二人はニタニタ笑う。
「別に偉いべっぴんさんじゃと思っただけじゃ」
モゴモゴと口の中に食べ物をいれる。
「容姿端麗、成績優秀。何を取っても秀でてるもんな。実は僕たち、あの人と同じ中学なんだ」
琉巧がスマホ片手に語りだした。
「中学でも成績優秀、容姿端麗で先生たちや男からチヤホヤされてさ、だからなのか、女子の嫉妬が集中砲火して中学ではかなりいじめられてたんだって。高校でもそうじゃない?」
「あー部活先輩からもそんな噂が……」
伊礼は首を傾げる。
「そんっな根も葉もない噂はどうでもいいべ。しっしっ」
チャイムが鳴り、午後の授業再開。
運動場では、三年の先輩方体育をやっていた。女子と男子の群れができていて、ふと、柴生徒会長を発見した。群れに属さない一匹狼で余計に目立つし、あの容姿じゃ際立つ。
時々、黒板にも目を向け窓の外を眺める。まず走り込みをしていた。男子に負けず劣らず独走してて、綺麗なフォームだ。だけど、後ろから男子がやってきてぶつかってしまった。転んでしまった。
にも関わらず男子生徒は手を差し伸べることもなく去っていき、みんな、誰も手を差し伸べることもなくレースを走っていた。
ものっすごい転んでしまったで大丈夫が⁉ すぐに保健室に行ったほうがいいべさ。悪化したら大変だし。なんで誰も声かけねえんだ⁉
窓を眺めながら目を白黒させていると先生の声が耳に入った。「こぉら戸村くん! 授業中に先生シカトしないっ‼」その次にはクラスメイトたちからの歓声な笑い声に俺の意識は窓の外を気にする余裕はなかった。
だが、ふともう一度顔を上げると柴生徒会長は一人でグランドを走っていた。転んでいた時間を埋めるように。
高校生活において友達は有力。最高なキャンパスライフを送るためには良き相手。気さくで明るい伊礼が輪の中にいれてもらっている。
入学式が終わり、高校生活が始まる。
都会でひとり暮らしを舐めていた。実は親元から離れて一人で暮らすことも憧れていたのだ。それが今回、仇となっている。高校生が親元から離れて高校の勉強、それからアパート代、水道、ガス、そして食費諸々1人でやっていくことにひとり暮らしを始めて早三週間目でギブアップになった。
「それでもすごいぜ。朝早起きして弁当自分で作ってんだろ? すごいすごい。俺にゃできない」
伊礼が購買で買ったミルクヨーグルト味を飲みながら言った。
「早起きできないもんね」
琉巧がくすくす笑う。
――昼休み。午後の授業を終えてようやく飯の時間にありつける時間に、聞きなれない音が教室中に響いていた。それは、腹の虫の音。六路の。
「寝坊してコンビニに行ける時間もなくて、かつ、購買の競争も負けた哀れなろくろっちにはこれを俺から授けよう」
伊礼が購買で買った梅干しおにぎりを俺の前に。ちなみに〝ろくろっち〟とは俺のことだ。2人から呼ばれている。
「て、天使のお恵みだ~!」
「さようさよう」
伊礼はまんざらでもなく高笑う。
「なら、僕もほら」
琉巧は自分の弁当の中から唐揚げと焦げたタコさんウインナーを差し出してくれた。
「うおぉん、持つべきものは友達じゃこの御恩は一生忘れない」
俺は涙を流しながらそれを食す。
「それ、彼女からのだろ? ちゃんと食べろよ」
伊礼がドン引きして琉巧の弁当を指差す。
「不味いし焦げてるし、よくこんなの人に渡すよね」
琉巧はヘラヘラと笑って箸をおいて弁当を蓋した。苦言を言っているがわりかし、食べてることに彼もそこまで悪人じゃない。
こうして助け合ってくれる友人がいてくれることに感謝しつつ、学校生活を送る中でずっと、あの日からあの人のことが気になる。
部活見学を見終わった帰り道、空が暗くなって街の灯がポツポツつき始める時間帯。バスを待っている間、彼女――柴四葉と再会した。というか目もあっていない。一方的に彼女の姿を見つけただけで、彼女の視界には入っていない。
俺と彼女の距離は二人分離れている。
遠くから眺めるために少し離れた席で座った。
バスが来るまでにあの人は、本を読んでいた。文豪小説だろうか、外で、しかも、まだ風が肌寒いのに頑なに本を読んでいて、少し興味が湧いた。
この時間帯で帰ってんのか。こんな遅い時間帯に? どんだけ夢中になってんだ危ねえべありゃ。
それから学校ですれ違うといい匂いがしたりとか。髪の毛サラサラしてて都会の女は次元が違う。
それからはもう、目で追っていた。気になって気になって、三年の教室にわざわざ行くほど。その行動に二人は気づいて揶揄ってきた。
「三年の柴生徒会長、気になるんだろ?」
「あの人、美人だもんなー」
二人はニタニタ笑う。
「別に偉いべっぴんさんじゃと思っただけじゃ」
モゴモゴと口の中に食べ物をいれる。
「容姿端麗、成績優秀。何を取っても秀でてるもんな。実は僕たち、あの人と同じ中学なんだ」
琉巧がスマホ片手に語りだした。
「中学でも成績優秀、容姿端麗で先生たちや男からチヤホヤされてさ、だからなのか、女子の嫉妬が集中砲火して中学ではかなりいじめられてたんだって。高校でもそうじゃない?」
「あー部活先輩からもそんな噂が……」
伊礼は首を傾げる。
「そんっな根も葉もない噂はどうでもいいべ。しっしっ」
チャイムが鳴り、午後の授業再開。
運動場では、三年の先輩方体育をやっていた。女子と男子の群れができていて、ふと、柴生徒会長を発見した。群れに属さない一匹狼で余計に目立つし、あの容姿じゃ際立つ。
時々、黒板にも目を向け窓の外を眺める。まず走り込みをしていた。男子に負けず劣らず独走してて、綺麗なフォームだ。だけど、後ろから男子がやってきてぶつかってしまった。転んでしまった。
にも関わらず男子生徒は手を差し伸べることもなく去っていき、みんな、誰も手を差し伸べることもなくレースを走っていた。
ものっすごい転んでしまったで大丈夫が⁉ すぐに保健室に行ったほうがいいべさ。悪化したら大変だし。なんで誰も声かけねえんだ⁉
窓を眺めながら目を白黒させていると先生の声が耳に入った。「こぉら戸村くん! 授業中に先生シカトしないっ‼」その次にはクラスメイトたちからの歓声な笑い声に俺の意識は窓の外を気にする余裕はなかった。
だが、ふともう一度顔を上げると柴生徒会長は一人でグランドを走っていた。転んでいた時間を埋めるように。
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