うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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九章 侵略者と未来人

第98話 契

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 スターたちは、宇宙船から真っ逆さまに落ちていくコスモを受け止めた。
「顔が……」
 鹿室が口を覆った。
「大丈夫。核は破壊されてない!」
 スターが叫んだ。
「うんうん大丈夫。速くてちゃんと避けれなかっただけ」
 鼻の上がなくても、口がある限り喋れる。コスモはいつもの口調で言った。
「あの親玉、そんな俊敏なの!?」
 ダスクはわなわな震えた。上空にいた宇宙船が何処かに向かっていく。鹿室は追うか、追わないかで迷っていた。その後押しを押してくれたのはスター。
「追いなさい! ここはわたしたちがいるから、構わずに追って!」
 その後押しに鹿室は振り返ることなく、宇宙船を追った。
「アイス、あいつらは?」
『東北に向かってる。その方角にあるのは、ガーディアン機関の長とトト機関の長が住んでいる』
「なんっ……!?」
 鹿室はびっくりして足を止めようとしたのを、スターの言葉を思い出して寸前で足を一歩一歩力強く大地を蹴った。


 宇宙海賊団がどうしてこの時代にやってきて、何をするのか、ようやく理解した。二つの機関を潰すためだ。鹿室はもう一度大砲を撃った。宇宙船に当たることなく電線が吹っ飛ぶだけ。あんなに的が大きいのに、どうして、と焦りに焦って目前にある角に気づかなかった。

 顔面にヒットして、声を押さえて悶える。そんな間に宇宙船は真っ直ぐ狙いの場所に近づいていく。
 すると、上空に浮いていた宇宙船が真っ二つに。長くて生物みたいな剣で斬られた。鹿室とアイスは口をあんぐり。

 真っ二つになった宇宙船は地面に真っ逆さま。宇宙海賊団たちは、雪崩のように倒れていく。
「全く。ここを狙うなんて、千年早い」
 艷やかな女性の声が闇夜に響く。月の光が地上を照らし、三人組の男女が顔を出す。
「ソレイユ! おっぱい! 水!」
 後からやってきたスターが叫んだ。靭やかな剣を持っていた女性はむっとした。
「おっぱいじゃない! コメット!! いい加減覚えてっ」
 スターたちと合流した。鼻の上がなくなったコスモは回復。眼球もあるし、髪の毛だってある。
「ガーディアン機関のお出ましね」
 ダスクが怪しく言った。ガーディアン機関と聞いて、その言葉を聞きのがすことは出来なかった。
「ガーディアン機関!? こいつらが!?」
 鹿室は脳裏には宇宙人の侵略にただ怯えて、人一人救えない無能な機関のイメージがある。それが一気に覆そうだ。地面に落ちた海賊団たちはソレイユの足元に転がっている。むしろ、地面にキスしているかのようだ。
「宇宙海賊団と聞いて呆れる。こんな小さな生命体。軍の力でも圧勝できる」
 ソレイユが目を見開かせて、ひときわ低い声で言った。地面にひれ伏せているのは、小鬼たち。ソレイユの前では手も足も出ない様子。


「やっほー千枝ちゃん」
「話しかけてこないで。集中してるから。あと千枝ちゃんじゃないソレイユだ」
 コスモが酔っ払いのようにソレイユに駆け寄り、集中しているソレイユの頬や腕をつんつん、と突く。ソレイユは小鬼たちを圧迫しているため、身一つ動けない。ビキビキと怒りのステータスが上がってく。
「久しぶりにみたら、偉く成長したわね。おっぱいが」
「ふふん。そうでしょう? て、胸かい! これを斬ったことじゃないの!?」
 スターはくすくす笑って背後に回り、コメットの胸を鷲掴みにした。コメットは赤面して、さっき船を真っ二つにした剣をスターに向ける。

 鹿室はびっくりしたのと同時に、失望した。この時代のガーディアン機関はすごい、と豪語した男の言うとおり、この時代のガーディアン機関は強い。一瞬でも認めた。だが、宇宙人と馴れ馴れしく交流しているのをみて大きく失望した。地面に叩きつけられた気分だ。
「やっぱり、信用ならんな。宇宙人と親しくなり、その宇宙人の侵略も阻止しないとは」
 鹿室はガーディアン機関のソレイユたちに悪態ついた。
「君の言いたいことは分かるけど、こいつらの侵略は、ゴミ拾いか、草むしりだとの地域貢献だ。阻止するまでもない」
 眼鏡をかけた細身の男の子が目前にやってきた。こいつもガーディアン機関の一人。鹿室はぎろりと睨んだ。


 ダスクはふと、あることに気がつく。ソレイユにひれ伏していたのは、全員小鬼で、親玉の赤鬼はどこにもいない。
「赤鬼は!? 海賊のキャプテンの」
「そんなの、地面に落ちてきたときにはいなかった」
 ソレイユは眉をひそめた。
 スターは急いで〈探索〉すると、止まっていた風が大きな竜巻として襲ってきた。体がふわりと浮くくらい、大きな風。
 痛みがかけ巡った。体の何処かが鋭利な刃物で傷つけられていく。まるで、かまいたちの攻撃みたいだ。目に見えない相手。風の中に存在して、それと同じく攻撃する。

 風がやがてやみ、そして、気がつくと全身に赤い線が入っていた。浅くっ切った血の線。かまいたちの攻撃に気づいて、スターとダスクがバリアを貼った。そのおかげか、ガーディアン機関の三人と鹿室のみ、無傷に近い。
「うう、痛」
 スターが地面に腰を降ろして悶える。
「貴様ら、どうして」
 鹿室が駆け寄った。
「どうして? 守りたかったから、それ以外にない」
 スターはふっと笑った。全身引っかかれたあとを治していく。しゅう、と白い煙をたたせて。

「それよりもあの海賊団のキャプテン、ガーディアン機関の長の家に向ったわよ。行くなら行きなさい」
 スターはソレイユたちに顔を向けた。ソレイユたちは涼しい顔している。
「それなら大丈夫だ。長の近くには、自分たちよりも強い三大柱がついている」
 ソレイユは長がいる方角の空をじっと見上げた。


 鹿室の心配をよそに、ソレイユの言葉通り三大柱がいる限り、長に近づくことも、家に近づくことも出来なかった。
 まず、白夜が影で動きを封じ千斗の熱い拳で赤鬼はノックアウト。それでも動けても、それ以上先には進めない。土岐が貼った結界術は、宇宙人よりも分厚く幻術もできる。
「ありがとう。みんな。和希の幻術は凄いね。ここは何もない路地裏なのに、住宅街にさせている。和希だけじゃないよ。白夜も千斗も凄いね」
 長に褒められて素直に喜んだ。
 千斗の熱い拳を何度も浴びて、全身は赤くなってドロドロに溶けている。元々赤い肌がさらに赤く。


 上空に飛んでいた烏がカァ、と甲高く鳴った。長はそれを見上げてくすり、と笑う。
「悪い虫はいなくなった。みんなにも伝えてあげて」
「はい」
 長は烏を見上げて静かに言った。烏は納得したかのように飛び去って行く。赤鬼をここに置いて、長と三大柱はガーディアン機関の家に戻っていく。

 残された赤鬼は後を追ってきたコスモとソレイユたちにあえなく、捕まる。
「これで倒した。ものの数秒で」
 鹿室はぱぁと笑った。
 目をキラキラと輝かせ、希望という言葉を掲げる。すると、アイスがピクリと動いた。
『機関からの連絡連絡。十秒以内にここを押してくださ……――』
 アイスの目に位置する黒い画面を即座にタッチした。聞こえてくるのはこの場の誰でもない声。


 鹿室は第一部署を崩壊した宇宙海賊団を倒したと報告。声の主は安堵と驚愕の言葉が連なる。そして最後に思いがけない提案が持ちかけてきた。
『その時代なら、宇宙人と契を結べそうだ』とね。


 危険視する宇宙人もいるが、友好的な宇宙人もいると知っている。もちろん鹿室も。でも宇宙人と契を結ぶ考えは、以前も今後も全く考えつかなかった提案だ。
「どうして急に?」
 鹿室は恐る恐る訊いた。
『友好的な惑星がやっと地球に降りてきてくれた。こっちはもう大丈夫。だから、もう帰ってきていいよ』
 その優しい声に、鹿室の目は涙でいっぱいになった。何度も何度も「本当ですか?」と訊ねる。そうして何度も何度も「大丈夫」という声を聞く。

 鹿室の使命は、この時代の宇宙人と契を結べ、争うことはしないと。
「友好的の惑星、あたしたちで良かった」
 ダスクは懐からタブレットを出して電源をつける。その映像には、白い壁しか目に見えない。目がチカチカする。
「あの、これは」
「しっ!」
 宇宙人三匹から一喝された。
 仕方なくずっと画面を見続ける。目がチカチカするから何度も顔をそらす。ここはお城の中みたいに広い。階段があり、そこには大きな椅子があった。

 その椅子に座っているのは男の子。鹿室と同じくらいの。椅子が大きいだけに、体格差がある。剣も握れない細くて華奢な体格だ。そばには黒執事が控えている。
「あの、これって」 
 もう一度コスモたちに問いかけると画面から声が降り注いだ。
『あ、これ繋がってるんだ! え、あの、誰?』
 王冠を被った男の子はキョトンとした顔。それはこっちの台詞だ。お互い自分のことをよく知らない。初めてお目にかかる。

 先に名乗ったのは、画面に映った男の子から。
『初めまして。僕はエンド。この星の王です。そして、そこにいるコスモたちの王でもあります』
 男の子はにこりと笑った。
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