うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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九章 侵略者と未来人

第96話 混血

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 宇宙船を真っ二つにさせたら、鯰のような顎に二本の触角がある人物が撤退を命じた。もう片方の船に人員が集まり、もう一つの別れた船を捨て、去っていった。正確には消えていった。
「スター、分かる?」
 ダスクが敵の居場所を掴もうと聞く。
「分かるけど、今はそれどころじゃないでしょ!」
 スターは血だらけに倒れた鹿室に駆け寄った。血は鹿室を中心に広がり、まるで赤い薔薇のよう。鹿室を抱きかかえ、すぐに治癒した。
「酷いわね。家はあたしが直すから、コスモ、手伝って」
 ダスクはコスモを呼び、庭と家の修復を。倒れて意識を失った一樹は片割れになったソファーに横たえる。
 この出血量だし、心臓に刺さっている点、もう手遅れだと治癒しているスターは、半分諦めていた。

 が、異常に気がつく。
 傷が治っていくのだ。スターの治癒ではなく、自らの傷を自らで治していく。しかも、なかった脈がトントン、と小さく戻ってくる。
「この子……!」
 割と器用なコスモとダスクが修復したおかげで、手短に済ませた。同時に鹿室の治癒も終わった。
 鹿室は起きて、アイスが作ったホットココアを飲んでいる。
「流石ね。心臓貫いていたのに助かるとは」
 ダスクが褒めたが、スターは首を振った。
「わたしじゃない。わたし、何もやっていない」
 スターは首を振った。その台詞にダスクは怪訝な表情になる。あれほど負傷したにも関わらず鹿室はピンピンしている。
「まさか、宇宙海賊団がこの時代にくるとは」
 鹿室はホットココアを飲み干して、ふぅとひと呼吸おいた。家が破壊される騒動が起きても、相原家の人間、ましてや近隣の住民には起きてこない。聞こえないようにダスクが二重のバリアを張っいたのだ。

 飲み干したカップを机に置くと、スター目の前にいることに気がついた。顔をあげるとスターは怪訝な表情。鹿室ははぁ、と大きくため息ついた。
「心臓に刺さっていたのに、なんで生きているかって? 分かるでしょ? 貴様らと同じだ」 
 鹿室はそっけなく、諦めたように言った。スターの顔がみるみるうちに青くなっていく。
「あんた、宇宙人だったの!?」
 その台詞に鹿室はむっとした。
「同じて言ったが貴様らとまんま同じというわけじゃない。僕は宇宙人と地球人の混血だ」
 鹿室の告白に一同は驚いた。
 空気がしん、と静まり返った。宇宙人の血が入っているせいで、傷の治りが早いし強靭な体。人間業じゃないこともできうる。 
「そんなの聞いてない」
 ダスクが鋭い口調で問いた。
「聞かれなかったから」
 鹿室があっさりと答えた。
 聞かれなかったら自分の身を晒さない。混血だってバレれば、世間がどんな目を向けるか、痛いほど知っているから。
「ゔっ……」
 ソファーで横たえた一樹が起きた。コスモが顔を覗く。
「大丈夫ぅ?」
「これが大丈夫だって見えんのか?」
 頭に包帯を巻いてて、今でもズキズキ痛む。頭を撃って軽い脳震盪を起きている。スターとダスクが完璧に治癒したおかげでどうにかなっている。
 痛む頭を抑えて、上体を起き上がらせる。家は真っ二つに別れたのに、元通り。コスモからある程度は聞かされた。鹿室が宇宙人と地球人の混血だってことまで。
「言ってくれればいいのに」
「言えばどうにかなった?」
 鹿室は混血だってバレて、いつもより素っ気ない。
『この子は宇宙人と地球人の間で出来たクオーターです。宇宙人のように回復力もあり、体が頑丈。だからこの任務は彼女に任された。過去の時間軸に行けるのは鹿室しかいない』
 アイスはカナムの側に寄った。隣に寄り添う。鹿室は立ち上がった。
「そうだ。僕には使命がある。この時代にいる宇宙人を抹殺しろ、と」
 視線をコスモたちに向けた。
 また再び一触即発の空気に。ダスクがそれを押さえ込んだ。 
「今、狙いはあたしたちじゃない。未来からやってきた宇宙海賊団がこの時代にきている。あたしたちも、協力するから一緒に倒しましょう」
 ダスクが鹿室に手を差し伸べた。鹿室はじっとその手を見下ろす。暫く黙って考えて恐る恐る、その腕を掴んで握手を交した。ダスクはふっと微笑する。


「んで? その宇宙海賊団は一体何処にいるんだよ」
 俺は落ち着くために水を飲んだ。乾いた喉が潤ってく。
「ふん。何言ってんの? ここには私が居るじゃない。この天才スター様が!」
 スターがふんぞり返ってニッと笑った。ドヤ顔。〈探索〉に長けているスターがいる限り、宇宙海賊団は逃れられない。
「まぁ、多分あたしたちだけじゃないと思う。宇宙海賊団がどうであれ、あんな大量に宇宙人がいるのなら、もう一つの機関が動くかもしれない」
 ダスクが意味深に言った。
 この場の全員がその言葉のいみを知った。鹿室はちっと小さく舌打ち。
「この時代のガーディアンなんか、信頼できるか。何より、貴様らがのうのうと暮らしているだけで、ガーディアン失敗だ!」
 鹿室は怒っている。
 宇宙人も憎いし、ガーディアン機関も許さない。宇宙人の侵略により、文明は破壊、社会や政治は回らなくなり、ほぼ無法地帯で宇宙人と戦っている。
 理不尽な目にあっても、国は何もなしない。本来、宇宙人の侵略、地球を守るのがガーディアンの務め。

 なのに、未来では宇宙人に敗北し続け、今守るべきものは紙切れに違いない。
「大丈夫だ。この時代のガーディアンは、恐ろしく強いぞ」
 俺はにっと笑った。
 鹿室の知っているガーディアンは知らないが、この時代にいるガーディアン機関なら恐ろしいほど知っている。どれほど強いか、どれほど助けられたか。

 触角をピクピク動かして〈探索〉していたスターがはぁ、と大きなため息ついた。諦めたように力を脱力する。
「コスモが派手にやったせいで、奴ら、上手い具合に隠れている。隠れている場所は突き止めた。でも厄介なのが街のど真ん中。宇宙船を隠して、その地中に隠れている」
 スターはやれやれと天を仰いだ。
「派手に、やったけ?」
 コスモは首をかしげた。
 自分がやった行いをもうすでに忘れている。
「地中に埋まっているてこと? モグラなの?」
 ダスクが真剣な表情で訊いた。
『日光浴が弱点であり、そのため、陽の当たらない地中に埋まる。その弱点を知ったのはついこの前の三週間前。工場の黒煙と戦場の黒煙が混ざり、いつも太陽は曇天に隠れている』
 アイスがペラペラと話してくれた。
 その横で鹿室が「余計なことを」と不味い顔したが、アイスの言っていることは本物なので、否定しにくい。

「今日は夜遅い。明日にしよう。スター、奴らは負傷してんだろ? コスモが派手にやったから」 
 俺は包帯を取ってスターに顔を向けた。
 スターはコクリと大きく首を頷く。
「ええ。負傷したのが三名。今見たけど構成員が七名。二名はその負傷者の相手をして、三名は警戒している。残りの一人……これが多分海賊団の船長。負傷もしてなければ、今後について話し合っている。でも、今動こうとしない。〝しない〟じゃなくて、出来ない。分からないけど、こっちも作戦の猶予があるのは確実」
 スターはひときわ真剣な表情で言った。こういうときのスターは頼もしい。口に出したら調子乗るかもしれないから、言わないでおこう。

 鹿室はどっ、と疲れた表情してヘナヘナと腰を地面に下ろす。はぁ、と大きなとってもない大きな安堵のため息をこぼす。それから明日にそなえるために、俺たちは寝ることにした。

 お月見から始まって、こんな騒ぎになるなんて、思ってもみなかった。お月見をしてた頃はほんとに、和やかだったのに、あぁ、そうか。

 月を見てなんと綺麗と呟いていた理由が痛いほどわかった。寝る前にまた、鹿室に会いに行った。コンコン、と宇宙船をノックすると鹿室じゃなく、アイスが出てきた。
『今、ぐっすり眠ってる。大変、疲れた。ノンレム睡眠ノンレム睡眠!』
 アイスは小さく叫んだ。なるべく、起こさないように。少しがっかりしたが、ぐっすり眠っているのならそれでいい。

 また部屋にあがるとこちらも、大の字でぐうすか気持ちよさそうに寝ているやつが。俺のベットを占拠していた。疲れたのか、寝息をたてて寝ている。

 なかなか起こすには気が引ける寝顔。起こしたくない。仕方なく一階の居間で寝ることにした。
 あの騒動で起きてこなかったのは、相原家や近隣住民だけじゃない。相原家に住まう犬猫たちも入っている。
 あの騒動で居間が真っ二つになったりしても犬猫たちが怯えないように、ダスクが配慮したのだ。そのかいあって、居間に顔を出すと尻尾をぶんぶん振って駆け寄ってくる。
 まるで、遊んでもらえるのを疑わない。純真な眼差し。
「ゴメンな」
 と言って一匹ずつ頭をなでながらソファーに横になった。

 硬さと慣れない環境があるも、割と眠りに入るのは早かった。目を閉じると、すぅと意識が深い海に溺れていき、這い上がれない。深い眠りについた。
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