うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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三章 侵略者とガーディアン

第36話 決闘

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 ガーディアンでも人間だ。人間が記憶を改ざんさせる方法はあるのか。例えばマインドコントロールとか。でも、街の人たちを一夜でそんなことできるのか。
 何かの情報番組だったり、ラジオだったなら、それなら、金城生徒会長や委員長だってコントロールされてるはずだ。どうして俺たち三人だけがコスモたちのことを覚えている。

 この仕業をガーディアンだとすぐに決めつけたあたり、宇宙人たちには心当たりがあるらしい。
「はっきり言えよ」
 俺が問い出すと、ダスクはやれやれと手のひらを上に向かせた。
「しつこく聞かれる前に言っとく。ガーディアン機関には催眠術に長けた人間がいるの。名前とかは知らないけど」
 流石情報屋。
 ガーディアンでもそんなのがいるのか。あの三人とは仲良くやっていたけど、ガーディアン機関について何も知らなかった。全くといって聞こうとしなかった。

 以前、学校がどこにあるのか聞いたことがある。でもそのときはルナに話を逸らされて、結局はアポロが漏らしていた。それが原因なんだがな。

 宇宙人たちは、ガーディアン機関について何かの策を討たないと、侵略できないと焦った。しかも、地域住民の記憶から忘れられてることは〝自分たちがやってきた行い〟も全て忘れられてる。挨拶回りとか、草むしりとかやってたもんな。それを台無しにされて、めちゃくちゃ怒っている。
「ほら、ギャラクシーの言ったとおりガーディアンを潰せば良かったのよ」
 スターがダスクを睨みつける。ダスクは知らんぷり。たとえ、宇宙人がガーディアン機関を潰したとしても、その頃のガーディアンはアポロたちだ。どう潰せたか、疑問だ。
「こうなったら決闘よ!」
 スターが立ち上がって叫んだ。隣にいたコスモが、食べようとしていたお菓子をポロと落とした。
「決闘?」
 俺とダスクがオウム返しで訊ねた。
 スターの目はカッと見開いて、背後には薄っすらと炎が出ていた。やる気に満ちた炎。
「決闘よ、けっ・とう! このまま人間共に好き勝手されてたまるか!」
 ダスクは深いため息をついた。俺も呆れてため息をついたが、コスモに口を封じられてできなかった。そういや、ため息すると幸せが逃げたことがあったな。迷信かと思ったけど実際に不幸になったし。
 コスモありがとう、と目で訴えるとコスモは手を放した。微かにスナック菓子の香りが。そういえば、さっきまでポリポリ食べていたな、あの手で。
「油だらけの手でやめろ!」 
 お菓子の油が顔面についている。コスモは叱られてるのに知らんぷり。くっそ。怒られ慣れたのか。濡れたタオルで顔を拭く。
 そういえば、部屋が散らかったままなのを怒っていなかった。でも今となってはそれ程怒っていない。コスモたちが元気にやっているのを見て、先に安堵していた。

 決闘の話しはまだ続いていた。
「ダスクもこのままでいいと思ってんの!? わたしら、いつまでたっても侵略できなくて、サターン様がどんな顔するか、軽く想像できちゃうわ!」
 それなら俺も想像できる。
 ダスクは、真剣な表情になった。胸の下で腕を組んで俯く。暫し沈黙。沈黙になるとコスモがポリポリと咀嚼する音がやけに大きくなる。
「確かに……」
 ボソリと呟いた。
 ゆっくりと顔をあげると、スターとコスモ、それから俺の顔をまじまじ見つめた。順番にみていくとダスクは口を開いた。
「果し状を送りつけたとして、仮によ? 仮に、果し状を送りつけたとしてあたしたちはどうやって戦うの? ソレイユの力、コメットの刀、それに対抗できる手段を持っいる?」
「何言ってんの! 宇宙人だから人間に負けるわけない!」
「コスモが傷つけられたの見てないの?」
 ダスクは真剣な表情。怒っているに近い。目の奥はギラリと光っていて、鋭い刃のよう。その瞳を向けられ、スターはぐっと黙った。
「私なら大丈夫だよ?」
 冷たい空気の中、さらりと軽くコスモが言った。ダスクたちはお構いなしに話を続ける。
「だいだい、宇宙人だからって法則は必ずしも成功しないものよ。現に侵略だってそうだし」
 ダスクが的を射た台詞を言って、スターはがっくりとした。先程の炎が沈下している。消火するのが早いな。話を聞いていたのか曖昧だったコスモが指先を舐め、軽くさらりとこう言った。 
「できるよ」
「何の根拠があるの」
 傷つけられたくせに、という目で訴えるダスク。コスモは自信に満ちた表情していた。
「サターン様が言ってた。『わたしはあなたたちのことを信じています。必ずやり遂げると、信じてます』て。だから大丈夫なんじゃない?」
 サターン様の名前を聞いて二匹の顔色が変わった。コスモのおかげで気付かされた。親愛なるサターン様があんなに期待している。それを裏切るわけにはいかない。

 コスモはソレイユを。コメットはスターが。ダスクがウォーターを。

 それぞれ対抗できる手段を討っていると。果し状を突き付けるために、コスモたちは出掛ける。するその前。コスモが玄関前で立ち止まった。
「その前に……やることがある」
 くるりと振り向いた。玄関口にいる二匹に背を向ける。二匹は同じ表情でキョトンとしていた。コスモがこちらを見て、真剣な表情で訴えかけてくる。仲間の足を止めるほどの用があるとは。何を要求されるのか、俺は少しだけ緊張した。
「夕飯食べないと」
 俺たちはコケた。真剣な表情で訴えるから、何事かと思いきや夕飯かよ。でもコスモにとってそれは大事な摂取で、戦うためには必要なこと。

 そういえば、夕飯食べていなかったな。姉貴は友達の所にいて、親父たちは声かけてくれなかった。夕飯の買い出ししたの俺なのに。冷蔵庫を開けると、夕飯がラップして置いていた。コスモの目は、その品を見てキラキラと目を輝く。

 レンジでチンして食す。空腹だった胃の中を満たしていく。五品もあったのをあっという間に食べ終わった。想定内のことでもう驚きはしない。むしろ、もっと食べたいと要求してくるのを外した。
「もういいのか!?」
「うん」
「ほんとに? ほんとにさげるぞ? 今からでもラーメン作ってやるぞ?」
「前から思ってたけど、あんたコスモにだけ超甘いのよ。コスモをこれ以上太らせてどうする気!?」 
 スターがコスモの肩を引き寄せて、俺から遠ざけた。なんだよその視線。なんだよその言い草。
「俺がコスモを太らせてるようないい草」
「太らせてるでしょうが!」
「コスモの為を想ってだ! 路上でお腹が空いて倒れたらどうすんだ! 行き倒れて手を伸ばしても道歩く人たちから恵みも与えてくれない。そんな虚しい想いはさせん! 今なら間に合う! ラーメンぐらいつくるから」
「決闘しに行くのに逆に路上で倒れたら困るつぅの!! コスモこっち!」
 コスモの手を引っ張り合い。 
 右に左に、引っ張られるごとにコスモの目が死んでいく。腕の関節を曲がるかのような取っ組み合いが開始。

 くっ……。流石宇宙人。俺の力を持ってしてもコスモを奪えない。一方スターも、地球人のくせして何て力、と両者とも互いの力を認める。

 取っ組み合いを止めたのは以外にもコスモだった。
「ラーメンは帰ってきたあと。そんなエネルギー摂取したら、動けないから」
「そ、そうか……」 
「よく断ったぁ!」
 スターはコスモに抱きついた。コスモは折れた関節をボキボキと治していく。取っ組み合いの様子をじっと観察していたダスクが立ち上がった。
「あ、終わった? それじゃ行くよ」
「お前は止めろよ」
「やーよ。無駄な体力使いたくない。体力温存こそが生き残れる、それがサバンナの常識でしょ」
 何ドヤ顔で言ってんだこいつ。
 決闘しに行くのに俺が足止めしちまった。それにコスモの腕折れてたな。コスモは動じてなかったけど。
 ダスクが玄関の戸を開けると、相原家の玄関前に知らない三人組が。アポロたちと同じ制服。一瞬で分かった。こいつらが新ガーディアンか。

 ダスクたちが玄関先から奥の壁まで後退する。ガーディアンたちは宇宙人たちの居場所を突き止めようとしていた。そして、ついに突き止める。中央に立っていた白髪の女の子が「ここか」と呟いた。

 宇宙人に守られるように囲まれる俺を見て、蔑んだ目を向けられた。切れ長の目がギラリと光った。月の光のせいで、それがより妖しく光っている。けど、なんとなくその瞳の奥に孤独が宿っている、そんな気がした。

 確かにアポロと似ていない。最初に思ったことがこれだった。

「我らに決闘を申し込むだろうと思った。案の定だな」
 酷く掠れた声。
「まさかこんなところまで突き止めるなんて、情報烏が売られたのかしら」
 ダスクが呟いた。
 その声に微かに焦りが混じっている。家の中がピリピリしている。冷たい空気が入ってきた。風じゃない。宇宙人とガーディアンたちの殺気だ。

 家の中に殺気が立ち込められ、一歩も動けない。動けば確実に仕留められる。
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