うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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二章 侵略者と訪問者 

第21話 訪問者

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 遊園地の帰り、晩御飯のときにコスモがやたらとしつこく「遊園地どうだった?」と聞いてくる。自分たちが楽しめなかったから羨ましくて聞いてくるのだろうか。
「そうだ。お土産あったんだ」
 あの騒動のあと、バスに乗る前に買ったものだ。お土産と聞いて、コスモは目をキラキラ輝かせた。普段死んでいる目が輝くと、真珠を磨いた輝きだ。
 お土産物は、チーズクッキーにした。女の子であれば、かわいいものだけど、うちのコスモは食い意地が張ってるから食い物だ。案の定コスモは、喜んだ。
 買ったばかりのお土産を、十分たらずで食べきる。

 塵との戦いも終え、ようやく平和が取り戻せると思った束の間、宇宙から訪問者がやってきた。塵との戦いが終えた三日後の夜。そいつは突然家をブッ壊してやってきた。
 居間でくつろいでいると、大きな音が二階から。コスモもダスクも居間にいるのに。両親も居間にいて、姉貴はシャワーに浸かっていた。

 俺たちは急いで音のした二階へ上がる。
 二階に上がると、見たことない景色が広がっていた。丸いゴツゴツした円盤が二階を壊し、廊下には瓦礫や部屋の中のタンスや机が散乱している。
「なん、なんじゃこりゃああああ!!」
 二階の主に、俺の部屋がめちゃくちゃだ。クローゼットもベットも廊下に顔を出して、中身が出ている。
 家を壊したのは、宇宙船みたく黒い円盤。所々、赤や緑の灯りがついていいる。今はだいぶ弱っているけど。
 上に上がってきた両親もびっくりしていた。壊れ様を見て、呆けている。二階にあがってきたダスクが現れると、両親が虚ろな人形のように変わった。

 糸で操られたように足を不自然に動かし、下に下りていく。おいおい二階がこんな有様になっているのに冷たくねぇか。
「記憶消しといたから。暫くは上に上がってこないと思う」
 ダスクの触覚がピクピク動いて、淡々と「記憶をけした」と言った。なるほど。そういえば記憶をいじれるんだったな。

 円盤からいきなり煙が出てきた。ヤカンから湧いて出てきた煙のように、ピューと音を出して。ライトが点滅する。ガタンと大きな音が中から。円盤の中に人がいる。
 ゴクリと固唾を見守った。
 緊張が走る。
 円盤の蓋がみるみるうちに開いていく。白い煙が巻かれているせいで、それが一体どんな生物なのか分からない。
 もし、地球を襲うような奴だったら、と思うとツゥと汗が伝った。

 円盤の中から出てきたソイツは、地面に着陸。コスモたちはじっとしている。ソイツが近くに来るまで、コスモたちもじっとしている。
 白い煙が徐々に晴れていき、やがて現れたのは一つの影だった。見た目は人間の女の子。十二~十三歳くらい。

 頭には黒いカチューシャと小さな触覚が。見た目にそぐわぬ黒いゴスロリ衣装。彼女は、辺りをキョロキョロとし俺たちに視線を配った。
 大きな目玉をさらに大きくし、ダスクに飛びついた。
「ダスク様っ! お会いしとうごさいましたあああああ!」
 ダスクに勢い良く飛びつくと、ダスクは勢いあまって地面にしりつく。その女の子は、猫のように頬をすり寄せて、恍惚とした表情。
「知っている人?」
 俺は恐る恐る訊くと、ダスクは深いため息ついた。
「オービット。あたしたちの後輩よ」 
 それ聞くと目が白黒になった。宇宙人たちの後輩というと、地球侵略を目論むコスモたちの後釜。見た目はほんの幼い子どもなのに、こいつらの後輩とは。

 ダスクは体に巻き付いた彼女の拘束をうざそうに解いた。すぐにタブレットを懐から出して、ギャラクシーと通信する。
「ギャラクシーどういうことなの!?」
『おや、その様子だともう着いたのですね』
 画面を見なくても、あっけらかんとした声が返ってきたのを見ると、地球に降り立つのを分かっていた様子。 
「コスモ様! お久しぶりです!」
 警察官のようにコスモにむけて敬礼した。
「お久……誰だっけ?」
「オービットです! 侵略軍を除籍で勝ち抜いたあのオービットでごさいます!」
 オービット、と呼ばれる女の子は自信満々に満ちた表情で言った。コスモは未だに首をかしげている。こんな奴いたっけ? みたいな眼差し。そんな反応に、オービットは気にしていない様子。

 彼女の口からここに来た理由を明かされた。
「我が偉大なる侵略軍の先輩方が地球をすでに侵略したと聞き、どのように侵略なさったのか伺おうと参りました!」
 未だに敬礼をしながら話すので、ダスクがゆっくりしてと解くとオービットは目をキラキラさせて再びダスクに飛びついた。

 ここにきた理由は分かった。でも許せないことがある。それは未だに彼女が悪びれもせずのうのうとやっている態度を見て、ムカムカと怒りのゲージがあがった。
「俺の部屋どうしてくれんだ!」
 指差すと、オービットは冷めた目で俺を見てきた。
「はっ、たかが一つの家の一つの部屋じゃねぇか。何血眼な目で向けてくんだよ地球人」
「オービット、お願い直して」
「了解いたしました!」
 この天と地の差よ。ダスクが命令すると、目をハートにさせてその命令に従う。オービットは特に、ダスクのことを尊敬している様子。  
 部屋はあっという間に片付いた。散乱した瓦礫も物も部屋の中に収まり、廊下は塵一つもなくキラキラに磨いて滑りそう。
 ダスクに褒められたオービットは、目をハートにさせ触覚が尻尾のように、ブンブン振っている。
 宇宙人が増えた。しかも厄介な性格の持ち主。

 彼女は、地球人である俺の話は聞かない。近づくと冷めた目で『消えろカス』という眼差しを向けてくる。仕方なく、ダスクが間をつけて話すことに。
「まず、言っとかないといけないのがあるの」
 コホンと咳払いし、話を持っていく。オービットの目はキラキラ輝いて、まるで信じた人の言葉なら決して疑わぬ、忠実で真っさらな、そんな眼差しに、ダスクの表情は苦しくなった。
「コスモが言って、あたしギブ」
 コスモに交代。
 コスモは、まだ地球侵略をやっていないこと自分とダスクがこの地球人の家で暮らしていることを正直に伝えた。
 聞いているうちに、オービットの表情はびっくり。暫しの沈黙。この時間が異様に長かった。


 俯いてた顔を上げ、キラキラした眼差しを向けてきた。
「つまり、このオービットと一緒に地球侵略するためにとっといたんですね!」
 なんて底抜けに解釈が明るい方に向く。
 コスモが「違うよ」の「ち」を言う前に口を封じたのはダスク。口を手で封じ、念を押すかのような目力。
 部屋ももとに戻ったし、円盤はいつの間にか消えたし、とりあえず俺が一つ心配してることがある。
「寝るところはあるのか? もしなかったら家に」
「気安く話しかけてくんじゃねぇよ、もしまた要らん心配したら、その首へし折るぞ」
 笑顔で言っているのが怖い。 
 語尾に星マークがついてそう。いや、今のはついてたな。
 この娘、こっちのほうが素なのでは。このやり取りは、コスモとダスクに聞かれてない。聞かれないように彼女は声を小さくたてた。
 コスモたちと話しているときは、キンキン高い声なのに、俺と会話すると姉貴みたいにドスの聞いた低い声。この子、仮面持ってるな。

 人間の俺には見えなくても、円盤は庭にあるらしい。円盤の中で夜を明かすと。
「でもせっかく再会したのに、また離れ離れだなんて、このオービット、悲しくて仕方ありません」
 ダスクの手を掴み、必殺上目遣い涙目攻撃。ダスクはオービットの頭を撫でて「また明日ね」と宥める。オービットは、目をハートにさせて二階の窓から出ていった。

 とてつもない大きな嵐が過ぎたようだった。でも嵐は残っていて、再び朝になると舞踊ってくる。
 ダスクはやれやれとため息ついた。オービットに抱きつかれ、肩を回す。
「慕われてるな」
「訓練兵のときに、ちょっと教えただけよ。たったそれだけ」
 それだけであんなに慕われるとは思わない。きっと、それ以外にも優しくされたんだろう。

 宇宙人が増えて、これからが嵐のような毎日だと気づいたのはいつだったか。

 翌朝、宇宙からオービットが降り立ったと聞いて早速、スターが家にやってきた。相原家の家には、宇宙人が四匹いる。そのせいで、先住民の犬猫ハムスターたちは、怯みに怯んでこの頃ご飯も食べていない。心配した両親が動物たちを連れて、動物病院に行っている

 その今、居間では四人がそろって同じテレビゲームをしていた。新たな刺客が来たのだから地球侵略するのかと思いきや、いつもの光景で良かった。
 テレビゲームに悪戦苦闘するオービットに優しく教えるダスク。さらに闘志を燃やしているスター。未だにレベル一で苦戦しているコスモ。見慣れた光景だ。

 ダスクが教えてかいもあって、オービットはすぐにテレビゲームを手懐けた。先輩のコスモとスターを差し置いて、今やレベル五十五だ。
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