うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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一章 侵略者と地球人 

第9話 有名人

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 相原家の居間では、宇宙人のコスモとスター。その他に昨日敵サイドぽかったガーディアン機関のアポロ、ルナ、レイがいる。人ん家で揃いもそろって寛いでいる。

 俺のゲームを勝手に持ってきて、居間で集まって楽しそうだ。いやほんとに。キャキャうふふで楽しそうで何よりだ。こっちのことも気にしないで。
「一樹ぃ、お腹すいたぁ」
「ちょっとぉ、ジュースない?」
「この他にもゲームない? あるんだったらやりたい」
「てめぇら、俺をなんだと思ってる。揃いも揃ってパシリやがって! 俺はここの家主だぞ! ちょっとくらい遠慮しろ!」
 俺はガミガミ怒ると、五人は同じ反応。右耳から左耳に流れている。聞いてもいない。だれか、マトモな人はいないのか。

 黒髪でショートカット。制服のスカートは膝まであって、きっちりしている正装。いかにも真面目そうな雰囲気。確か、敵機関のルナて子か。
「ごめんなさい。人ん家でこんな寛いで」
「あぁ、いや楽しくやっていたのにこっちも悪いな」
 その子はペコリと会釈すると、みんなを一喝した。なんだこの子。超マトモじゃないか。うぅ。この頃涙腺が緩いのか、涙が出てきた。
 ガーディアン機関たちと仲良くやって、何よりだ。ガーディアンについて、調べてみた。ネットでくぐっても出てこない。検索ワードに、何一つ引っかからなかった。

 英単語で調べると、ガーディアンとは「守護」「番人」の意味。侵略者がやってきて、守護するもの。今は仲良くゲームなんなかしてるけど。年は、ガーディアン三人のほうが上か。彼女たちは、ガーディアンたちを育成する高校に在籍している。俺と同じ高校一年だ。言動とかがコスモたちに似ているせいで、年下かと思ったらタメだよ。

 ルナがとうとう切れて、テレビゲームのスイッチを切った。みんな、ルナに誹謗中傷を浴びす。ルナは、こめかみあたりをピクピク動かして、言ったやつらを叱る。
「さっき、負けたから腹いせだって言った奴出てきなさい! 私は負けてなんかない! 私は手加減してだけ! なのにそんなこと言われる筋合いなんかありません!」
 メラメラと炎を出して、怒っている。こいつは、キレさせないようにしよう、誰もがそう思った瞬間だ。

 テレビゲームをやめ、普通のチャンネルに切り替わった。朝はニュースか、ストレッチの番組しかない。それでも彼女らは、テレビ画面に釘付けだった。何を真剣に見ているのか、俺は気になってジュースを持っていく口実に、居間に寄った。

 流れてるのは堅苦しいニュースで、このバカ共には相応しくない番組だった。流れてるのはある有名な女性歌手の失踪。
「この人、知ってるわ!」
 スターがテレビを指差して、ドヤ顔。
「さっきのCMで見た、とか言わないでちょうだいね?」
 ルナが的確にツッコミ。
 スターは図星のようで、腕をおろす。スターだけじゃない。コスモもアポロも似たように汗をダラダラ流している。似た者同士が三人もいなくていいのに。
「この人が歌う曲、好きなんだよね」
 アポロがにこにこしながら言った。ひだまりのような笑顔。

 この歌い手を報じている裏で、その人の曲が小さく流れていた。確かに聞いたことがある。俺も知ってるもん。この歌手。歌番組で割と出演している。そんな人気絶頂の最中、一週間前から姿をくらましている。

「まさか、宇宙人が拉致!?」
「そんなことしない」
「だよね~」
 アポロはほっと胸をなでおろし。疑うことを知らないな。ニュースでは誘拐の線が入っている。もしくは、家出とか。中学のときは、頻繁にやってて、お袋たちを困らせてたな。今はしないけど。人気絶頂の中でもしかしたら、自分一人の世界に入りたいと、家出したのかもしれない。その気持ちは、痛いほどわかる。

 コスモたちはなんとなく、ニュースを眺めていた。その情報は頭にはいっているのかと思いきや、右から左に流れて、情報が無駄になっている。ニュース番組が終わると同時に、テレビを消した。消したのは、アポロだった。キラキラした表情でさっと立ち上がる。嫌な予感が……。
「この人を見つけよう!」
 ほらやっぱりな予感が的中した。
「何故唐突に」
 ルナが睨む。そんな睨みもキラキラオーラで跳ね返される。
「だって、あたしこの人のこと好きなんだもん! 好きな人が何処かに行ったら、寂しいでしょ! 探そう!」
 寂しいという単語を聞いて、コスモが反応した。のを見過ごさない。そして、これまた唐突に五人は有名歌手を探るべく、近所を探す。こんなところにいたら、警察もファンも苦労しねぇし。こんなところにいるわけないだろ。

 やれやれと、探し回る彼女たちを呆れて眺めつつ、ふと隣を見てみるとコスモが俺の隣にいた。疲れたのか、ずっと定位置にいる。歩いてもその位置は変わらない。ストーカーかよ。
「疲れたのか?」
「別に。ねぇ」
 コスモがゆるゆる顔を上げた。いつになく、真剣な面持ちだ。こんな表情見たことない。できるんだな。
「寂しい、て何?」
 唐突に聞かれたソレは、俺が言葉で表現できないものだった。頭をひねって言葉を探る。
「う~ん。そうだな……」
「あ……いた」
 いきなり、コスモが声を上げた。なにがいた? コスモはいたよ、とみんなに声をかけた。コスモが指差す方向には、護岸のコンクリートで一人ポツンと座っている女性の後ろ姿。まさか、あの後ろ姿は。いやいやそんな、こんな簡単に見つかるはずないし。あれは、そっくりさんに違いない。そうであってくれ。 

 そう簡単に現実は転ばない。そうだったのに。これは、物語形式で進んでいるのか、さっそく有名人見つけちゃったよ。しかも、あっさり。

「見つけたー!」
 アポロが叫んだことで、女性はくるりと振り返り慌てた様子で立ち去っていく。俺はその女性を止めた。
「いきなりすいません。あの……失踪したAさんですよね?」
「……それが何か?」
 声が繊細でか弱く、間違いなく有名歌手。その人はサングラスと帽子を深くかぶり、分厚いコートを着ていた。

「やったやった見つけた! サインください!」
 アポロがAさんに近づくと、Aさんは顔をそらした。俺はアポロを睨みつけると、ルナがアポロの腕を引っ張って再び、俺とAさんだけになった。Aさんは警戒した様子で、ビクビクしていた。
「警察? それともマスコミ? バラすんだったら好きにしなさい」
「違います。えっと、ファン? です」
 間違っていない。この人の曲を知っているし、でも普段なにしているのかさっぱり分からん。芸能人とかに興味ないんだ。

 彼女はため息つくと、色紙を鞄から出して、黒マーカーを走らせる。書き上げたものを俺に手渡す。
「はいこれ」
「え?」
「これあげるから。黙っててちょうだい」
 口止め料か。彼女は満足したのか、先程よりも警戒していない様子。俺に手渡したものは、アポロがヒョイと盗んでいく。まぁ、芸能人に興味ないけど有名人からそういうの貰いたい。

 彼女は大きなバックを持って、踵を返そうとした。俺は慌てて彼女の前に立つ。サングラスの奥から睨まれた。気がした。 
「何?」
 繊細な声が刺々しい。
「どうして、失踪してるんですか? みんな、心配してますよ?」
「はぁ!? 子供に言われたくない!」
 俺は少しムッとした。確かにこの人からみれば俺は子供だけど、子供扱いされたくない。大勢の人を心配させている人のほうが、よっぽど子供だ。 
 訳を聞くと、中々話してくれなかった。でも、しつこくまとわりつくと口を開いてくれた。

 ある男性と結婚するかどうか悩んでいる、と。たったそれだけの話。結婚したら主婦となって芸能界をやめないといけない。でも歌手は続けていきたい、そんな心境の中、悩んでいると。
「なるほど。それは、悩みますね……」
 俺が頭を悩ませてると、彼女ははっと息をついた。
「ごめんなさい。子供に何言っているのかしら」  
「そんなの、悩むこともないよ!」
 アポロが間に入ってきた。にこやかに。
「結婚したら芸能界をやめろって言われたの? やりたいなら続ければいいじゃん!」 
「子供のあなたには分からないでしょうけど、女はね、結婚すると株が落ちるの。芸能界にいても売り続けるか困難」
「結婚した女でも、変わらずファンはいるよ。ほんとにあなたのことを好きなファンはいるよ! 自信を持って! ほら目の前にここにいる。あなたの帰りを待っている」 
 Aさんはポロポロと涙を流した。地面に膝をついて泣き崩れる。アポロは、ひだまりのような笑顔で、太陽の道しるべのような言葉をついた。ほんとにこいつは、太陽みたいなんだな。

 後日、Aさんが芸能界に帰ってきた。ファンの子がわたしをここに導いたと、記者会見で語る。そのファンは俺たちしか知らない。彼女の顔は画面越しからみても、堂々としていて威厳に満ちていた。結婚しても変わらず芸能界に残ると宣言。
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