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一章 侵略者と地球人
第4話 いざっ!
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宇宙人の仲間が集まった。天然で鈍感で無知なコスモなら、侵略は難しいが、割と常識があるスターを加え、また一歩、地球は宇宙人に乗っ取られる可能性が大きくなった。
今日こそは、侵略をしないといけない。
「で、どうしたらいい?」
コスモはもぐもぐと、お菓子を食いながらスターに聞いた。
「ちょっとやめてよ。お菓子のクズが溢れてるじゃない。下にティッシュ敷きなさいよ。侵略とかの策略は、ダスクがいればいいのだけど、どこに落ちたんだろ」
文句を垂れるスターは、近くにあったティッシュ箱に手を伸ばし、一枚ティッシュを引き抜いた。コスモの下に置く。机の上はお菓子のクズがボロボロこぼれていた。
ここは、相原家。
宇宙人が集まって侵略会議をしているのは、相原家の俺の部屋だった。俺は勉強机にうつ伏せになり、宿題とにらめっこ中だ。後ろで、物騒な侵略について会議を開いている宇宙人なんか後回しだ。今は勉強勉強。もうすぐテストが近いんだ。
中学でグレてヤンキーになっていた時代は、勉強なんかろくにしなかった。学校にも行っておらず、むしろ、喧嘩の勝ち星皆勤だった。だから、人より数倍遅れをとっている。
勉強してやっと、普通の高校生になったんだ。普通の高校生らしく過ごしたい。クラスメイトに舐められないために、勉強だ。
「ねぇ、分かんないよ」
コスモがクイクイと袖を引っ張った。お菓子をつまんだ手で。
「話しかけんな。その手で触んな。どっか行け」
そっけない返事を返す。
「地球人の前で話すことじゃないわよねぇ」
スターがため息をついた。
スターが改まって常識人に見える。もうこの中で常識人として輝いてみえる。
コスモはまた、スタート向き合うように座った。また新しいお菓子袋を開けて。食べたあとのゴミも分別しないで、そこら辺に置いて。俺はそれだけを見て、こめかみがピクピクした。
お菓子をつまんで食べているコスモと目が合った。「食べる?」と明太子味のプリリツを差し向ける。こいつ、悪切れもなく。
プツン、と何かが切れた。昔から短気だったから、喧嘩に明け暮れ、高校ではそれを治そうと思っていた。でも無理だった。俺は所詮、こんな人間だ。
「コスモぉ! そんなだらしない奴に育てた覚えはねぇ! 食ったあとのゴミはゴミ箱に、部屋は散らかすな、あと綺麗に食べろ、口の周り色々ついてっぞ。それと、俺のお菓子じゃねぇか全部!」
俺の怒声が家中に響きわたった。
そういえば、買ってきたものが急激になくなっているかと思ったら、全部こいつの仕業だったのか。どうりで。しかも、どうやって俺の懐から盗んだ。油断もすきもない。
コスモは、怒られたのにポカンとしている。部屋が異質な空気になる。それを察してか、スターがコスモを引っ張って部屋から出ていった。
残った空気は、圧倒的な虚無感。
去っていったあいつらは、部屋の片付けはしていかなかった。仕方なく俺がやることに。なんで、俺のところにはあんな鈍感な宇宙人が居座っているのだろう。つくづく思う。
相原家を出ていった二人はぼとぼとと、道を歩いていた。目的地はなく、ただ、ブラブラ歩いているだけ。珍しく落ち込んだ様子でコスモがぼとぼとと歩いていた。そんなコスモに、スターは立ち止まってみた。同じようにコスモも立ち止まる。
「怒られたねぇ。というかあの地球人、短気すぎ」
「……うん」
「そうだ。わたしずっと考えてたんだけど、まずこの地域を侵略して、次に隣町を侵略して、そうすると、全国に広がっていきやがては日本全土侵略達成よ」
その意気込みはしっかり持っているが、具体的に何をすればいいのかよく分かっていない。
二匹は近くの河川まで歩いて行った。
コンクリート製の護岸に腰を落とす。サラサラと流れる穏やかな川。朝日の光を浴びて、つやつや輝いている。海からやってきた魚が優雅に泳いでいた。
穏やかな風がふくと、穏やかく魚たちを歓迎しているかのように波も動く。
地球でいえば、休日の朝。ジョギングする人や四足歩行の動物を散歩している人も。普段から人通りが多いのか、穏やかな風とは反対に、ここは人で溢れて、ごちゃごちゃしている。具体的にどうすればいいのか話し合った。
「麻美に聞いたんだけど、人間は散らかっているのが嫌いなんだって、だから、わたしたちは人間の嫌がることをしましょう!」
「怒られるよ」
コスモが膝を丸めた。暫く間を置くと、コスモがポツリポツリつぶやいた。その声は、いつになく元気がなかった。
「……さっきから、胸が痛いの。一樹すごい怒っていた。私のこと、軽蔑した。チクチクしてて、息がうまくできない。これは、何?」
「コスモ、それはっ」
それっきり、口を閉じた。スターが何を言いたかったのかコスモには、分からないし、スターはそれが何なのか分かって敢えて言わなかった。
二匹は早速、侵略に取り掛かった。人間が嫌がることはいっぱいある。戦争や略奪、が、子供のコスモたちはそれを知らない。知っている知識で、侵略に取り掛かる。
「ゴミ拾いが侵略?」
コスモは首をかしげた。
「そうよ。この地域のゴミ拾いをすれば、侵略成功よ。地球人は、わたしたちに恐れを抱いてひれ伏すに決まっているわ!」
スターは、飛び跳ねるように元気に喋った。コスモはスターの言うことを従う。この地域は大きく区域が五つに別れている。いきなり五つの場所を掃除できるわけないので、一つの区域を徹底的に掃除した。
空き缶やらお菓子のゴミが公的に捨てられている。ガムのクズまで。
「全く。地球人がさきに散らかして汚してるのに、文句言われる筋合いないわね」
スターがぽいぽい拾いながら、呆れて言った。ゴミ袋にはたんまりゴミが詰まっている。地域でゴミ拾いをしている二人の女の子を見て、地域の人たちは「ありがとう」「偉いわねぇ」と頭をさげて、声をかけてくれたり、一緒になってゴミ拾いをする人も。
「スターの言うとおりだ。みんな、ひれ伏している」
コスモが関心したように言った。パチパチと手を叩く。
「当然よ! さっ、次の区域に行くわよ!」
スターはご機嫌になって、コスモの前を歩く。その背中をコスモは、ひよこみたいにくっついてついていく。
気がつけば黄昏時になっていた。辺りが真っ赤に染まり、周りの景色たちが黒くなって影を落としていく。もうすぐ、夜になる。朝穏やかに吹いていた風が、涼しくなり冷気になっていた。一枚の服じゃ、肌寒い。
「帰りましょうか」
スターが拾ったゴミ袋を縛った。
「おーけー」
縛ったゴミ袋を持つ。
一日がかりでゴミ袋は合わせて、三つ。一つの区域しか行けないと思ってたけど、割と三つの区域まで行けた。
二匹なら無理だった。でも共にゴミ拾いをしてくれる人がいたからこそ、できのかも。
ゴミ袋は、ゴミ収集場まで待っていき、そこに投げ捨てる。
「もうこの地域はわたしたちのものよ。侵略成功ね!」
腰に手を当て、スターが胸を張った。
ゴミ袋がたんまり溜まった場所に仁王立ちして、前を向く。
ゴミ収集場から見える景色は、オレンジの太陽が地平線に沈んでいく瞬間。大量にゴミ袋が散乱している場所で見る景色の上は、この地球しか見ることができない幻想的な景色だった。
ゴミ拾いをして、二匹の心はすっかり綺麗になっていた。朝の出来事など、忘却している。二匹はそれぞれの家へ帰っていった。相原家の玄関の明かりがついていた。真っ暗な夜道でそれは、一筋の光のように感じた。玄関で出迎えたのは、一樹だった。
相変わらずのしかめっ面で。視界に映れば、身動きが取れない。切れ長の目の奥がギラリと光っている。まるで、獲物を捉えたような眼差し。
「おかえり」
そう呟いた。いつもと変わらないぶっきらぼうな言い方。
「怒っていない?」
「もう怒ってない。さっさとあがれ、夜食できてるぞ。手を洗えよ」
一樹は、顎をしゃくりコスモが靴を脱ぐのをそばで見ていた。良かった。怒っていない。途端に心が何かに締め付けられた。めばえた感情に、名前は知らない。
玄関に上がると、一樹の目がカッとなった。鼻をつまみ、バタバタと後退する。
「臭っ!! くっさっ!! え、お前何処で何してたの?」
「ゴミ拾い」
「夜食の前に風呂だ風呂!」
一樹はコスモを風呂に連れて行かせる。家の中はコスモが連れてきた悪臭に漂っている。頭を強烈にガンガンいわせる悪臭だ。ついでに蝿も連れてきて大迷惑。結局また叱られることに。
風呂に入って体を洗っても、その汚れがとれず、二日間その臭いが取れなかったらしい。
スターも言うまでもなく。帰ってきたスターに風呂をすすめ、その臭いが取れるまで風呂三昧。二匹は、地球侵略に成功したが、ゴミ拾いは決してやろうとは思わなかった。
今日こそは、侵略をしないといけない。
「で、どうしたらいい?」
コスモはもぐもぐと、お菓子を食いながらスターに聞いた。
「ちょっとやめてよ。お菓子のクズが溢れてるじゃない。下にティッシュ敷きなさいよ。侵略とかの策略は、ダスクがいればいいのだけど、どこに落ちたんだろ」
文句を垂れるスターは、近くにあったティッシュ箱に手を伸ばし、一枚ティッシュを引き抜いた。コスモの下に置く。机の上はお菓子のクズがボロボロこぼれていた。
ここは、相原家。
宇宙人が集まって侵略会議をしているのは、相原家の俺の部屋だった。俺は勉強机にうつ伏せになり、宿題とにらめっこ中だ。後ろで、物騒な侵略について会議を開いている宇宙人なんか後回しだ。今は勉強勉強。もうすぐテストが近いんだ。
中学でグレてヤンキーになっていた時代は、勉強なんかろくにしなかった。学校にも行っておらず、むしろ、喧嘩の勝ち星皆勤だった。だから、人より数倍遅れをとっている。
勉強してやっと、普通の高校生になったんだ。普通の高校生らしく過ごしたい。クラスメイトに舐められないために、勉強だ。
「ねぇ、分かんないよ」
コスモがクイクイと袖を引っ張った。お菓子をつまんだ手で。
「話しかけんな。その手で触んな。どっか行け」
そっけない返事を返す。
「地球人の前で話すことじゃないわよねぇ」
スターがため息をついた。
スターが改まって常識人に見える。もうこの中で常識人として輝いてみえる。
コスモはまた、スタート向き合うように座った。また新しいお菓子袋を開けて。食べたあとのゴミも分別しないで、そこら辺に置いて。俺はそれだけを見て、こめかみがピクピクした。
お菓子をつまんで食べているコスモと目が合った。「食べる?」と明太子味のプリリツを差し向ける。こいつ、悪切れもなく。
プツン、と何かが切れた。昔から短気だったから、喧嘩に明け暮れ、高校ではそれを治そうと思っていた。でも無理だった。俺は所詮、こんな人間だ。
「コスモぉ! そんなだらしない奴に育てた覚えはねぇ! 食ったあとのゴミはゴミ箱に、部屋は散らかすな、あと綺麗に食べろ、口の周り色々ついてっぞ。それと、俺のお菓子じゃねぇか全部!」
俺の怒声が家中に響きわたった。
そういえば、買ってきたものが急激になくなっているかと思ったら、全部こいつの仕業だったのか。どうりで。しかも、どうやって俺の懐から盗んだ。油断もすきもない。
コスモは、怒られたのにポカンとしている。部屋が異質な空気になる。それを察してか、スターがコスモを引っ張って部屋から出ていった。
残った空気は、圧倒的な虚無感。
去っていったあいつらは、部屋の片付けはしていかなかった。仕方なく俺がやることに。なんで、俺のところにはあんな鈍感な宇宙人が居座っているのだろう。つくづく思う。
相原家を出ていった二人はぼとぼとと、道を歩いていた。目的地はなく、ただ、ブラブラ歩いているだけ。珍しく落ち込んだ様子でコスモがぼとぼとと歩いていた。そんなコスモに、スターは立ち止まってみた。同じようにコスモも立ち止まる。
「怒られたねぇ。というかあの地球人、短気すぎ」
「……うん」
「そうだ。わたしずっと考えてたんだけど、まずこの地域を侵略して、次に隣町を侵略して、そうすると、全国に広がっていきやがては日本全土侵略達成よ」
その意気込みはしっかり持っているが、具体的に何をすればいいのかよく分かっていない。
二匹は近くの河川まで歩いて行った。
コンクリート製の護岸に腰を落とす。サラサラと流れる穏やかな川。朝日の光を浴びて、つやつや輝いている。海からやってきた魚が優雅に泳いでいた。
穏やかな風がふくと、穏やかく魚たちを歓迎しているかのように波も動く。
地球でいえば、休日の朝。ジョギングする人や四足歩行の動物を散歩している人も。普段から人通りが多いのか、穏やかな風とは反対に、ここは人で溢れて、ごちゃごちゃしている。具体的にどうすればいいのか話し合った。
「麻美に聞いたんだけど、人間は散らかっているのが嫌いなんだって、だから、わたしたちは人間の嫌がることをしましょう!」
「怒られるよ」
コスモが膝を丸めた。暫く間を置くと、コスモがポツリポツリつぶやいた。その声は、いつになく元気がなかった。
「……さっきから、胸が痛いの。一樹すごい怒っていた。私のこと、軽蔑した。チクチクしてて、息がうまくできない。これは、何?」
「コスモ、それはっ」
それっきり、口を閉じた。スターが何を言いたかったのかコスモには、分からないし、スターはそれが何なのか分かって敢えて言わなかった。
二匹は早速、侵略に取り掛かった。人間が嫌がることはいっぱいある。戦争や略奪、が、子供のコスモたちはそれを知らない。知っている知識で、侵略に取り掛かる。
「ゴミ拾いが侵略?」
コスモは首をかしげた。
「そうよ。この地域のゴミ拾いをすれば、侵略成功よ。地球人は、わたしたちに恐れを抱いてひれ伏すに決まっているわ!」
スターは、飛び跳ねるように元気に喋った。コスモはスターの言うことを従う。この地域は大きく区域が五つに別れている。いきなり五つの場所を掃除できるわけないので、一つの区域を徹底的に掃除した。
空き缶やらお菓子のゴミが公的に捨てられている。ガムのクズまで。
「全く。地球人がさきに散らかして汚してるのに、文句言われる筋合いないわね」
スターがぽいぽい拾いながら、呆れて言った。ゴミ袋にはたんまりゴミが詰まっている。地域でゴミ拾いをしている二人の女の子を見て、地域の人たちは「ありがとう」「偉いわねぇ」と頭をさげて、声をかけてくれたり、一緒になってゴミ拾いをする人も。
「スターの言うとおりだ。みんな、ひれ伏している」
コスモが関心したように言った。パチパチと手を叩く。
「当然よ! さっ、次の区域に行くわよ!」
スターはご機嫌になって、コスモの前を歩く。その背中をコスモは、ひよこみたいにくっついてついていく。
気がつけば黄昏時になっていた。辺りが真っ赤に染まり、周りの景色たちが黒くなって影を落としていく。もうすぐ、夜になる。朝穏やかに吹いていた風が、涼しくなり冷気になっていた。一枚の服じゃ、肌寒い。
「帰りましょうか」
スターが拾ったゴミ袋を縛った。
「おーけー」
縛ったゴミ袋を持つ。
一日がかりでゴミ袋は合わせて、三つ。一つの区域しか行けないと思ってたけど、割と三つの区域まで行けた。
二匹なら無理だった。でも共にゴミ拾いをしてくれる人がいたからこそ、できのかも。
ゴミ袋は、ゴミ収集場まで待っていき、そこに投げ捨てる。
「もうこの地域はわたしたちのものよ。侵略成功ね!」
腰に手を当て、スターが胸を張った。
ゴミ袋がたんまり溜まった場所に仁王立ちして、前を向く。
ゴミ収集場から見える景色は、オレンジの太陽が地平線に沈んでいく瞬間。大量にゴミ袋が散乱している場所で見る景色の上は、この地球しか見ることができない幻想的な景色だった。
ゴミ拾いをして、二匹の心はすっかり綺麗になっていた。朝の出来事など、忘却している。二匹はそれぞれの家へ帰っていった。相原家の玄関の明かりがついていた。真っ暗な夜道でそれは、一筋の光のように感じた。玄関で出迎えたのは、一樹だった。
相変わらずのしかめっ面で。視界に映れば、身動きが取れない。切れ長の目の奥がギラリと光っている。まるで、獲物を捉えたような眼差し。
「おかえり」
そう呟いた。いつもと変わらないぶっきらぼうな言い方。
「怒っていない?」
「もう怒ってない。さっさとあがれ、夜食できてるぞ。手を洗えよ」
一樹は、顎をしゃくりコスモが靴を脱ぐのをそばで見ていた。良かった。怒っていない。途端に心が何かに締め付けられた。めばえた感情に、名前は知らない。
玄関に上がると、一樹の目がカッとなった。鼻をつまみ、バタバタと後退する。
「臭っ!! くっさっ!! え、お前何処で何してたの?」
「ゴミ拾い」
「夜食の前に風呂だ風呂!」
一樹はコスモを風呂に連れて行かせる。家の中はコスモが連れてきた悪臭に漂っている。頭を強烈にガンガンいわせる悪臭だ。ついでに蝿も連れてきて大迷惑。結局また叱られることに。
風呂に入って体を洗っても、その汚れがとれず、二日間その臭いが取れなかったらしい。
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