貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)

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「エレーナ、大丈夫か?」


「えっと…」


これは、夢?
若かりし頃の姿の陛下と、若い自分の見た目。
夢なら醒めて…内乱がどうなったのか知りたいのに。
私は頬をつねった。

痛い…
すごく痛い…力加減を間違えてしまった。


「エレーナ?」


そう考えていれば怪訝そうに私の顔を覗き込む陛下。


「体調が悪いのか?」


ゆめではないなら、本当に過去に戻ってしまったの?
私は死んだの?


「陛下…!」


私は思わず泣きそうになってローレンスの肩に顔を埋める。
彼も、死んでしまったの?


「エ、エレーナ…急にどうした?」


「陛下…」


「僕はまだ陛下になってないのだが…」


聞き馴染みのない自分の敬称に戸惑いを隠せない様子でそう言ったローレンス。


「そうだったわね。」


「エレーナ…?」


後方から懐かしい声が聞こえる。
私は思わず振り返った。


「ルイ…?」


「ルイ、これはだな。
誤解するな。」


ローレンスはそう言うと私と距離を取った。
そうだ、私この時…ルイと恋人同士だったんだわ。


「ルイ、違うのよ。」


「分かってる。」


私が弁解しようとするとそう遮るルイ。
そして私の私の手を引っ張ってクルリと踵を返した。


「ル、ルイ?」


私はローレンスのことを振り返ることもできぬままにその場を後にした。


「怒ってる、よね。」


「怒ってないよ。」


私を振り返らず答えた彼の優しそうな声色とは裏腹に、私の手を握る力は強かった。
彼の温もりを懐かしく感じる。

過去に戻ったのなら私はまた同じ人生を辿るのだろうか。
そんな疑問が沸いてくる。

前はローレンスを選んだけれど、また過去に戻ってやり直すなら…
何を考えているの。
最低だわ、そんなの。

一度は彼を裏切った私にそんな資格があるわけない。
そんなこと思っていいはずない。

未練だって…もうない、はずなのよ。

私はローレンスを選び、そして最後は彼を愛した。
それが私の人生だったでしょ。

何も言い出せぬままに歩く。
ルイが止まったのは、ある教室の前。
ここは…


「落ち着いて話そう。」


扉を開けて入る。
少しホコリ臭い。
変わってない。

ここは…彼と私の秘密の部屋。
ここでよく彼と過ごした。


「エレーナ、君に伝えたいことがある。」


緊張した面持ちで私に向き合うルイ。
なにを話すの?
もしかして…

「まって私、まだ貴方に謝ってない。
ごめんなさい、誤解させるようなことをしてしまって。」


まだ別れの言葉を聞きたくなかった。
咄嗟にルイの話を遮って謝った。


「何か事情があるんだろう?
そこを責めたいわけじゃない。
僕が伝えたいのは…」


まだ聞きたくない。
まだ貴方と別れたくない

私は咄嗟にそう強く思っていた。


「エレーナ、僕と結婚しよう。」

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