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第二十八話 腕試し
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「いよっしゃー!そしたら七階層まで頑張るぞオーリン!あかーん!って思ったら即座にイドの背に隠れろ!」
「わ、わかっ、わかった!頑張ります!」
「敬語禁止!」
「えうぅう…」
クラッスラ第一階層に入ってすぐ、アレグとオリンドのコントが始まった。本人たちは至って真面目だが。
地上では相変わらずの見物人の押し寄せ具合だったが、周囲の初心や中上級問わず冒険者たちは先日の前夜祭やお披露目会で多少の慣れが生じたらしく、クスクスと笑いながら遠巻きに見ている。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよリンド。私たちがついてますから」
「うん…。や、やれるだけやってみる!」
そうだ、だってやっと装備が活躍するかもしれないんだ。剣も竜堅鎧もたくさん磨いて準備してきたし。すごく素敵な…なんで猫の飾りなのかわかんないけど、しっかりした鞄と地図道具までプレゼントしてもらったし!フェリの言う通りみんなが見守ってくれるんだし。緊張しないで頑張ろう!
「よし。その意気だが、とりあえず手と足を交互に出して歩けるまで落ち着こうな」
「ええっ!?」
俺、手と足同じ方出してた!?…あっ、ほんとだ出てる。あれっ、歩くのってどうやって歩くんだっけ!?
頭が熱く真っ白になって空回りしたオリンドはそのまま前方に倒れ込んだ。前日にウェンシェスランから受け取った、かぶりに付く大きな伸びをした猫の飾りも愛らしい肩掛け鞄が空を舞って後頭部の上に落ちる。四角い形のちょうど角が当たって、使用された天眼馬革の頑丈さを身をもって体感した。
咄嗟に両腕を出して顔面から地面に突っ込むことは避けられたが恥ずかしくて起き上がれず、ちょうど良く影を作ってくれた鞄を被ったままオリンドは黙り込んだ。
「…オーリン、今もしかして歩き方わかんなくなって転けた?」
躓いたのでも足がもつれたのでもなく、おかしな踏み出し方でもって転げたオリンドの傍にしゃがみ込んだアレグは鞄からちょっとはみ出て伏せたままの後頭部をつつく。と、表現し難い呻き声が漏れ聞こえて来た。
「おう。そっかそっか。緊張しまくりだなあ。緊張すんの久しぶりだもんな」
「…うあ。…うん。最近はほんとになんにも緊張してなかった…」
「あはは。そりゃ嬉しいな。まあとりあえず起きてさ、そんでアレやろうアレ、なんだっけフェリとシェスカが習ってるやつ」
「あっ、そうか」
言われてオリンドはがばと起き上がった。久しく勉強会以外では行っておらず今もアレグたちに囲まれた安心感で失念していた。いそいそと立ち上がって土埃を払うと改めて両手の指を付け、くるりくるりと素早く回す。
「ふへぁ…。おちつく…」
「…はー…。これよこれ。いまだに信じらんないわ。この速度で全身くまなく流してんのよねえ」
笑っては悪いとずっと我慢して詰めていた息を憧れの溜め息に変えてウェンシェスランは惚れ惚れと眺めた。
「シェスカもリンドの魔力量に近付けば体感できますよ」
「んぎぃい。精進するわよっ。リンちゃんのおかげでちょっと増えたんだからっ」
「どれどれ。…おお。確かに以前より少し上がってるな。…というか、これまでの一年か二年分くらいの上昇じゃないのかこれ」
ウェンシェスランの言葉にタグの絆を起動して確認したイドリックは目を丸くした。数値としては小さいが、時間を考えればとんでもない上昇率だ。
「えっ、マジで?そんな上がってんの?…うわ、マジじゃん。すげえ」
「そうなのよすごいのよっ!でもリンちゃんフェリちゃんの魔力量に追いつける気がしないわ!…あたしはリンちゃんの全力循環を体感したいのおお!」
地団駄を踏んで悔しがられてもアレグとイドリックにはいまいち分からず苦笑するしか無い。
「…ありがとう、だいぶ落ち着いた」
「おっ、行けそうかオーリン?」
「うん、大丈夫と思う」
「いよっしゃー!そしたら七階層まで頑張るぞオーリン!あかーん!って思ったら即座にイドの背に隠れろ!」
「わ、わかっ、わかった!頑張ります!」
「敬語禁止!」
「えぅ…って二回目!」
「わかった。おまえらが、めっっっちゃ楽しいのは十分わかったからさっさと行くぞ」
「はあい」
がす。と、脳天を大きな手で掴まれて二人は肩をすくめた。
気が付けば周囲には人垣ができていて、あちこちから笑い声が上がっている。悪感情では無い声が嬉しいけれど照れ臭い気持ちが高まりすぎてどうすれば良いのかよくわからないオリンドは、そそとイドリックの背に隠れた。
「…いや、あかーん、ってなるの今じゃ無くない?」
「うっふふ!照れちゃうんじゃしょうがないじゃない」
「ふぐぅう…。な、慣れるよう頑張る…」
「頑張らなくていいですよ。そのうち自然に慣れると思いますから、それまでは私たちに任せてください」
「そうそう。背中ならいつでも貸すぞ」
「あうあう…ありがとう…」
情けないけれど受け止めてもらえることがありがたくて嬉しい。
「うう、なんか、なんか役に立ちそうな物いっぱい掘る」
歩き出しながら両拳を握ると、先頭に立つアレグが笑いながら振り返った。
「あっはっは。オーリンにいっぱい掘られたらこっちが恩返ししきれねえっての。てか、オーリンと俺らが全力出していっぱい掘ったらクラッスラ空っぽにできそうだよな」
「おいおい、ここに眠ってるもん全部掘り返した日にゃ、確実に王族より金持ちになっちまうぞ」
「やややだ、それはやだ!普通!普通がいい!心配無しにご飯食べられたらそれで!」
ぎょっとしてオリンドは飛び上がった。確かに最近とんでもない金額を聞いてばかりだ。王族超えは大袈裟でもひょっとしたら中級貴族並みの大金は手に入ってしまうかもしれない。そんな身に余るというか身を滅ぼしそうというか生きるのが窮屈になりそうな未来は御免被る。
「あら、いいわねえ。もしかすると普通が一番の贅沢かもよ。…でもほんと、リンちゃんが無双したら色んなものが値崩れしそうだわ」
「六十階層の晶洞だけでもそうなるでしょうね。…公表すれば少なくともグラプトベリアと周辺の魔石単価は暴落すると思いますよ」
声をひそめるエウフェリオに、それは相当な事態になることだろうと誰もが生唾を飲み込んだ。
「えっ、…あれ、俺に渡された地図に描いてなかったっけ?なんかよくわかんねえけど、やばそうじゃん」
いや一人だけきょとんとしていた。さすがの金銭感覚だ。
「やっ、あ、あっちは罠と転送陣と魔物だけって言われたから、何が埋まってるかとか、書いてない」
「そういやフェリがそんな指示していたっけか」
「ええ。リンドの負担を減らしたかったのですけど、色々助かる結果になりましたね…。繋がる転送陣も使用禁止措置が取られましたし」
使用禁止令は魔石の晶洞へ出る転送陣の話を聞いて肝を潰したカロジェロが、商人ギルドらと話が着くまでの処置として、四翼竜でも一部を取り逃したパーティの冒険者が戻らないことを利用しない手は無いと出したものだ。今は結界が張られて誰も入れなくなっている。
「なら心配は無さそうだな。俺たちも当面のところは必要なものとオーリンの欲しいものに、依頼の品だけ探すことにして、ああ、それからオーリンがフェリに贈りたいもの、か。…自分を贈っときゃいいだろうに。ま、それ以外はそっとしとくのが良さそうだな。…はっはっは。痛い痛い」
こそりと小声で付け足された一言にオリンドは瞬間で茹で上がった。
何を言うんだこの人、フェリとはまだちゅーしかしたことないのに、何をそんな贈るって、贈るってアレのことあうあうあー!
真っ赤な顔をして二の腕をべちべち叩いてくるのに、そういうとこだぞと思いながらイドリックは子犬や子猫に向ける心持ちでオリンドに笑いかけた。
「よっし。そうしよそうしよ」
とりあえず実質のところはよくわからないまま、二人のじゃれ合いから話をダンジョンに引きずり戻すためにもアレグは賛同した。すでに気は細かいあれこれより俄然として冒険もとい調査に向いている。何でもいいからそうと決めて、さっそくオリンドの腕試しと新しい階層の探検に王ご所望の珍奇な品の目星付けといきたいところだ。
「では、そろそろアルの辛抱も堪らなそうですし、狩りに入るとしますか。もう少し行くとスライムの出る辺りですよ」
「いよっしゃー!そしたら七階層まで頑張るぞオーリン!あかーん!って思ったら即座にイドの背に隠れろ!」
「わかっ…っこれ三回目!」
「付き合わなくて良いのよリンちゃん」
「あっ、うん」
「ええー!もっと遊べよ、オーリンー!」
何故だろう、少し前まではアレグに対して年相応だと感じていたはずなのに、今では弟ができた九つくらいの子供を彷彿とすることがある。
とりあえず考えないようにしたエウフェリオたちは、とにかくオリンドだ。と、手を貸したくなる気持ちをぐっと堪え、自分たちの、特にアレグの威圧で敵を退散させないよう隠遁魔法を纏って戦いぶりを見守ることにした。
しかしさすがはアレグとイドリックに鍛えられただけのことはある。普段のおっとりふわふわした雰囲気は形をひそめ、ガナニックの剣を振るう姿は様にさえなっている。もはや第一階層の魔物は敵ですら無かった。
「っひゃあぁ…なにこれ、す、スライムとか洞窟コウモリって、こんなにゆっくりだったっけ?」
以前なら何かを捕食中の間であったり体制を崩した隙なりの動きが鈍くなっているところを突いて何とか仕留めていた獲物を、今や盾と剣を軽やかに扱って迎撃もできてしまうことに感激したオリンドは、すごいすごいとアレグやイドリックに満面の笑みを向ける。
「ふっふっふ、そうだろうそうだろう!?なんせ俺が鍛えたんだ、このくらいは当然だっての!」
残念ながら隠遁魔法でオリンドにこちらの声は届かないが、代わりに立てた親指を突き出して見せると頗る嬉しそうに恥ずかしそうに笑ってから新たな魔物へ向けて駆けていった。
「…で、なんでイドはそんな涙ぐんでんの」
「いや…、感無量というか…。…うっ…」
「リッちゃんたら、子煩悩なお父さんになりそうねえ…」
斯様に温かな目を向けられつつ、その後も多少危うい場面はあったが目標の七階層どころか彼にとって起点ともなった九階層までオリンドは進むことができた。
コボルドの分厚く鋭い爪を剣身に彫られた樋の角で流し様に切先を喉元に突き込み、飛び退いてから相手が事切れたことを確認したオリンドは、ぶはあと大きく息を吐き出す。
「…ふはっ、…はあっ、はっ、…うあ、す、すご…こぼ、コボルド、はぁっ、…倒せちゃった…!」
限界は近いがまさか自分の体がこれほど動くとは思いもよらなかった。戦闘と歓喜の興奮に高揚が止まらないオリンドは、膝が笑い出したことにも気付かずエウフェリオに支えられた。
「素晴らしいですよリンド。以前とは動きが全く違います」
「こんなに息が上がってても、ちゃんと切れと余裕が残ってるじゃない、すごいわ!」
これほどの成長を見せるとは思っておらず、隠遁魔法を解除したエウフェリオもウェンシェスランも手放しで褒める。
「ほ、ほんと!?…っはぁ。…うああ、師匠たちのおかげだ!」
成長できていることも、それを大好きな人たちが認めて褒めてくれるのも嬉しくて、彼にしては大きく喜びの声を上げて両腕を天に伸ばした。
「しっ!?」
叫ばれた内容に聖剣を取り落としたアレグが絶句してオリンドを凝視する。
「待て待て待て、師匠とかいう柄じゃない」
イドリックはやめてくれと片手を振り片手で赤くなりかけた顔を隠した。
「え…、じゃあ師範?」
「じゃなくて、そういうのは四十とか五十超えたあたりで呼ばれたいかなー!?」
「いや、どっちにしろ柄じゃないからやめ…、おいそこの馬鹿笑いしてる回復魔法使い。おまえオーリンに弟子入りするとか言ってなかったか。同じように呼んでやれ」
「んっはっは、…えー?あたし?いいわよ。お師匠様!」
「うわああっ!やめてやめて!す、すごい恥ずかしい!」
「わかったか俺らの気持ち!」
「ごめんなさい!」
などと楽しそうに戯れるオリンドに、エウフェリオはこの先もずっとずっとこのまま彼にとって楽しい日々が続けばいいと目を細めた。
「おっ、あそこじゃん。オーリンが掘り当てた水晶」
少し休憩を挟んでから先へ進むとそのオリンドが今日の幸せに至る起点の決定打になったとも言える晶洞が見えてきて、アレグが嬉しそうな声をあげた。二ヶ月前にエウフェリオが彼を連れてきた時は、あまりの卑下と過ぎる人見知りに正直なところ音を上げて出て行くんじゃないかと感じていたが、杞憂に済んで本当に良かった。
「ああ、もうだいぶ掘り進んでますね。…あそこからよくぞここまで整然とした坑道に…」
「ほんとよね。アルちゃんたら聖剣にモノを言わせて掘るんだから。下手したら何割か水晶ダメになってたわよ」
初めての共同依頼の日、コバルトを掘り出した後で掘削跡の奥をちらちらと見ながらあまりにションボリしているので依頼の品は手に入ったのにどうしたことかとエウフェリオが問うと、この先に大きい晶洞があるが時間が掛かるし諦めると言うものだから強化魔法を掛けたことでとても発奮したオリンドの、その目の前で聖剣でもって大人五人分ほどの距離を掘るというか斬り込んだアレグ。という、何というか台無しじみた光景の記憶も新しい。
「オーリンが途中に崩れそうな地盤があるから慎重に掘ると言った矢先にズッパリ行ってたもんな」
「あれ、俺もび、びっくりした。太刀筋が全部、ちょうどそこに鶴嘴入れると一番具合良く掘れるな、っていう境目にみご見事に入ってて。岩の目も完全に捉えて、雲母みたいに綺麗な断面にしてたの、やっぱり腕も目も勘もばつ、抜群に別格なんだなあって、や、俺が言うのもおこがましいんだけど、さすが極めた達人は違うなあって感動したというか、もう言葉に尽くせなくて表現できないのが悔しいくらい…あ、あれ?」
いつも明るく騒がしいアレグがなんだか妙に静かなことに気付いて首を巡らせ探すと四人から少し離れた先でしゃがみこんでいた。
「…えっ、お腹痛い?」
「ちがうちがう。めっちゃ照れてるのよ。ほら、お耳まで真っ赤っか」
言われてよく見ようとする前に素早く耳を隠された。
そうか、褒められすぎるとこうなってしまうのか。新鮮な発見にウェンシェスランもイドリックもエウフェリオも頗る笑顔でアレグを見ている。
なんとなく、普段自分が照れた時に視線を外した外側では、みんなこんな顔をしてるのかなあとくすぐったさを感じたオリンドは明後日の方向に顔を向けた。
「さて、どうしますリンド?もう少し腕試しをしてもよし、新階層に向かってもよしですが」
「えっと、さっきほんとにギリギリだったから、たぶん次の階層は、あかーん、ってなると思う。のと、七十九階層の半分を隠してる仕掛け、早く近くで見てみたい…」
「あー、言ってたわね、見たこともない複雑な絡繰だって。あたしも見たい!」
詳細調査に先立ち、拠点の居間で七十九から八十一階層までの地図を広げてあれこれ相談していた際にオリンドがぽつりと漏らしていた仕掛け扉は、実のところ四人とも興味津々だった。なにしろ冒険者ギルドが誇るAランク冒険者を二年も欺いてきた絡繰なのだ。興味を持つなと言う方が無理な話だろう。
「俺も!俺も見たい、すぐ行こう!」
「俺も異論はないというか実はかなり見てみたい」
「実は私も」
意見は一致した。五人とも悪戯っ子のような笑みを交わすと即座に地図を広げる。
「どうします?いくつかルートは取りましたが」
「最短は使用禁止だしな、俺は次に最短のこのルートでさっさと見に行きたい」
「俺も俺も!」
「そうねえ、色々通るのは帰りか次回でいいわ。リンちゃんは?」
「す、すぐ行ってみたいっ」
もはやわくわくが止まらないといったオリンドの様子に四人はニッと笑うとそれぞれ右手を出して拳を合わせた。
目配せされたオリンドの右拳が遅れてそこに添えられる。
「よっし、そんじゃあ行くぞ!」
「おう!」
合図と共に拳同士を小突き合わされたとき、心臓を揺さぶるような痺れがオリンドの体を走り抜けた。
うあ。これ、…これって、仲間、っていう、やつだ…!
ややあって状況を認識すれば足の先から頭の天辺まで武者震いに似た感動が走り抜ける。
「どした?オーリン!置いてっちゃうぞー!」
十数歩の距離を離れて気付いたアレグに呼び掛けられるまで、心地よく震える右の拳を左手でそっと包んだままオリンドは静かに喜びを噛み締めていた。
「わ、わかっ、わかった!頑張ります!」
「敬語禁止!」
「えうぅう…」
クラッスラ第一階層に入ってすぐ、アレグとオリンドのコントが始まった。本人たちは至って真面目だが。
地上では相変わらずの見物人の押し寄せ具合だったが、周囲の初心や中上級問わず冒険者たちは先日の前夜祭やお披露目会で多少の慣れが生じたらしく、クスクスと笑いながら遠巻きに見ている。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよリンド。私たちがついてますから」
「うん…。や、やれるだけやってみる!」
そうだ、だってやっと装備が活躍するかもしれないんだ。剣も竜堅鎧もたくさん磨いて準備してきたし。すごく素敵な…なんで猫の飾りなのかわかんないけど、しっかりした鞄と地図道具までプレゼントしてもらったし!フェリの言う通りみんなが見守ってくれるんだし。緊張しないで頑張ろう!
「よし。その意気だが、とりあえず手と足を交互に出して歩けるまで落ち着こうな」
「ええっ!?」
俺、手と足同じ方出してた!?…あっ、ほんとだ出てる。あれっ、歩くのってどうやって歩くんだっけ!?
頭が熱く真っ白になって空回りしたオリンドはそのまま前方に倒れ込んだ。前日にウェンシェスランから受け取った、かぶりに付く大きな伸びをした猫の飾りも愛らしい肩掛け鞄が空を舞って後頭部の上に落ちる。四角い形のちょうど角が当たって、使用された天眼馬革の頑丈さを身をもって体感した。
咄嗟に両腕を出して顔面から地面に突っ込むことは避けられたが恥ずかしくて起き上がれず、ちょうど良く影を作ってくれた鞄を被ったままオリンドは黙り込んだ。
「…オーリン、今もしかして歩き方わかんなくなって転けた?」
躓いたのでも足がもつれたのでもなく、おかしな踏み出し方でもって転げたオリンドの傍にしゃがみ込んだアレグは鞄からちょっとはみ出て伏せたままの後頭部をつつく。と、表現し難い呻き声が漏れ聞こえて来た。
「おう。そっかそっか。緊張しまくりだなあ。緊張すんの久しぶりだもんな」
「…うあ。…うん。最近はほんとになんにも緊張してなかった…」
「あはは。そりゃ嬉しいな。まあとりあえず起きてさ、そんでアレやろうアレ、なんだっけフェリとシェスカが習ってるやつ」
「あっ、そうか」
言われてオリンドはがばと起き上がった。久しく勉強会以外では行っておらず今もアレグたちに囲まれた安心感で失念していた。いそいそと立ち上がって土埃を払うと改めて両手の指を付け、くるりくるりと素早く回す。
「ふへぁ…。おちつく…」
「…はー…。これよこれ。いまだに信じらんないわ。この速度で全身くまなく流してんのよねえ」
笑っては悪いとずっと我慢して詰めていた息を憧れの溜め息に変えてウェンシェスランは惚れ惚れと眺めた。
「シェスカもリンドの魔力量に近付けば体感できますよ」
「んぎぃい。精進するわよっ。リンちゃんのおかげでちょっと増えたんだからっ」
「どれどれ。…おお。確かに以前より少し上がってるな。…というか、これまでの一年か二年分くらいの上昇じゃないのかこれ」
ウェンシェスランの言葉にタグの絆を起動して確認したイドリックは目を丸くした。数値としては小さいが、時間を考えればとんでもない上昇率だ。
「えっ、マジで?そんな上がってんの?…うわ、マジじゃん。すげえ」
「そうなのよすごいのよっ!でもリンちゃんフェリちゃんの魔力量に追いつける気がしないわ!…あたしはリンちゃんの全力循環を体感したいのおお!」
地団駄を踏んで悔しがられてもアレグとイドリックにはいまいち分からず苦笑するしか無い。
「…ありがとう、だいぶ落ち着いた」
「おっ、行けそうかオーリン?」
「うん、大丈夫と思う」
「いよっしゃー!そしたら七階層まで頑張るぞオーリン!あかーん!って思ったら即座にイドの背に隠れろ!」
「わ、わかっ、わかった!頑張ります!」
「敬語禁止!」
「えぅ…って二回目!」
「わかった。おまえらが、めっっっちゃ楽しいのは十分わかったからさっさと行くぞ」
「はあい」
がす。と、脳天を大きな手で掴まれて二人は肩をすくめた。
気が付けば周囲には人垣ができていて、あちこちから笑い声が上がっている。悪感情では無い声が嬉しいけれど照れ臭い気持ちが高まりすぎてどうすれば良いのかよくわからないオリンドは、そそとイドリックの背に隠れた。
「…いや、あかーん、ってなるの今じゃ無くない?」
「うっふふ!照れちゃうんじゃしょうがないじゃない」
「ふぐぅう…。な、慣れるよう頑張る…」
「頑張らなくていいですよ。そのうち自然に慣れると思いますから、それまでは私たちに任せてください」
「そうそう。背中ならいつでも貸すぞ」
「あうあう…ありがとう…」
情けないけれど受け止めてもらえることがありがたくて嬉しい。
「うう、なんか、なんか役に立ちそうな物いっぱい掘る」
歩き出しながら両拳を握ると、先頭に立つアレグが笑いながら振り返った。
「あっはっは。オーリンにいっぱい掘られたらこっちが恩返ししきれねえっての。てか、オーリンと俺らが全力出していっぱい掘ったらクラッスラ空っぽにできそうだよな」
「おいおい、ここに眠ってるもん全部掘り返した日にゃ、確実に王族より金持ちになっちまうぞ」
「やややだ、それはやだ!普通!普通がいい!心配無しにご飯食べられたらそれで!」
ぎょっとしてオリンドは飛び上がった。確かに最近とんでもない金額を聞いてばかりだ。王族超えは大袈裟でもひょっとしたら中級貴族並みの大金は手に入ってしまうかもしれない。そんな身に余るというか身を滅ぼしそうというか生きるのが窮屈になりそうな未来は御免被る。
「あら、いいわねえ。もしかすると普通が一番の贅沢かもよ。…でもほんと、リンちゃんが無双したら色んなものが値崩れしそうだわ」
「六十階層の晶洞だけでもそうなるでしょうね。…公表すれば少なくともグラプトベリアと周辺の魔石単価は暴落すると思いますよ」
声をひそめるエウフェリオに、それは相当な事態になることだろうと誰もが生唾を飲み込んだ。
「えっ、…あれ、俺に渡された地図に描いてなかったっけ?なんかよくわかんねえけど、やばそうじゃん」
いや一人だけきょとんとしていた。さすがの金銭感覚だ。
「やっ、あ、あっちは罠と転送陣と魔物だけって言われたから、何が埋まってるかとか、書いてない」
「そういやフェリがそんな指示していたっけか」
「ええ。リンドの負担を減らしたかったのですけど、色々助かる結果になりましたね…。繋がる転送陣も使用禁止措置が取られましたし」
使用禁止令は魔石の晶洞へ出る転送陣の話を聞いて肝を潰したカロジェロが、商人ギルドらと話が着くまでの処置として、四翼竜でも一部を取り逃したパーティの冒険者が戻らないことを利用しない手は無いと出したものだ。今は結界が張られて誰も入れなくなっている。
「なら心配は無さそうだな。俺たちも当面のところは必要なものとオーリンの欲しいものに、依頼の品だけ探すことにして、ああ、それからオーリンがフェリに贈りたいもの、か。…自分を贈っときゃいいだろうに。ま、それ以外はそっとしとくのが良さそうだな。…はっはっは。痛い痛い」
こそりと小声で付け足された一言にオリンドは瞬間で茹で上がった。
何を言うんだこの人、フェリとはまだちゅーしかしたことないのに、何をそんな贈るって、贈るってアレのことあうあうあー!
真っ赤な顔をして二の腕をべちべち叩いてくるのに、そういうとこだぞと思いながらイドリックは子犬や子猫に向ける心持ちでオリンドに笑いかけた。
「よっし。そうしよそうしよ」
とりあえず実質のところはよくわからないまま、二人のじゃれ合いから話をダンジョンに引きずり戻すためにもアレグは賛同した。すでに気は細かいあれこれより俄然として冒険もとい調査に向いている。何でもいいからそうと決めて、さっそくオリンドの腕試しと新しい階層の探検に王ご所望の珍奇な品の目星付けといきたいところだ。
「では、そろそろアルの辛抱も堪らなそうですし、狩りに入るとしますか。もう少し行くとスライムの出る辺りですよ」
「いよっしゃー!そしたら七階層まで頑張るぞオーリン!あかーん!って思ったら即座にイドの背に隠れろ!」
「わかっ…っこれ三回目!」
「付き合わなくて良いのよリンちゃん」
「あっ、うん」
「ええー!もっと遊べよ、オーリンー!」
何故だろう、少し前まではアレグに対して年相応だと感じていたはずなのに、今では弟ができた九つくらいの子供を彷彿とすることがある。
とりあえず考えないようにしたエウフェリオたちは、とにかくオリンドだ。と、手を貸したくなる気持ちをぐっと堪え、自分たちの、特にアレグの威圧で敵を退散させないよう隠遁魔法を纏って戦いぶりを見守ることにした。
しかしさすがはアレグとイドリックに鍛えられただけのことはある。普段のおっとりふわふわした雰囲気は形をひそめ、ガナニックの剣を振るう姿は様にさえなっている。もはや第一階層の魔物は敵ですら無かった。
「っひゃあぁ…なにこれ、す、スライムとか洞窟コウモリって、こんなにゆっくりだったっけ?」
以前なら何かを捕食中の間であったり体制を崩した隙なりの動きが鈍くなっているところを突いて何とか仕留めていた獲物を、今や盾と剣を軽やかに扱って迎撃もできてしまうことに感激したオリンドは、すごいすごいとアレグやイドリックに満面の笑みを向ける。
「ふっふっふ、そうだろうそうだろう!?なんせ俺が鍛えたんだ、このくらいは当然だっての!」
残念ながら隠遁魔法でオリンドにこちらの声は届かないが、代わりに立てた親指を突き出して見せると頗る嬉しそうに恥ずかしそうに笑ってから新たな魔物へ向けて駆けていった。
「…で、なんでイドはそんな涙ぐんでんの」
「いや…、感無量というか…。…うっ…」
「リッちゃんたら、子煩悩なお父さんになりそうねえ…」
斯様に温かな目を向けられつつ、その後も多少危うい場面はあったが目標の七階層どころか彼にとって起点ともなった九階層までオリンドは進むことができた。
コボルドの分厚く鋭い爪を剣身に彫られた樋の角で流し様に切先を喉元に突き込み、飛び退いてから相手が事切れたことを確認したオリンドは、ぶはあと大きく息を吐き出す。
「…ふはっ、…はあっ、はっ、…うあ、す、すご…こぼ、コボルド、はぁっ、…倒せちゃった…!」
限界は近いがまさか自分の体がこれほど動くとは思いもよらなかった。戦闘と歓喜の興奮に高揚が止まらないオリンドは、膝が笑い出したことにも気付かずエウフェリオに支えられた。
「素晴らしいですよリンド。以前とは動きが全く違います」
「こんなに息が上がってても、ちゃんと切れと余裕が残ってるじゃない、すごいわ!」
これほどの成長を見せるとは思っておらず、隠遁魔法を解除したエウフェリオもウェンシェスランも手放しで褒める。
「ほ、ほんと!?…っはぁ。…うああ、師匠たちのおかげだ!」
成長できていることも、それを大好きな人たちが認めて褒めてくれるのも嬉しくて、彼にしては大きく喜びの声を上げて両腕を天に伸ばした。
「しっ!?」
叫ばれた内容に聖剣を取り落としたアレグが絶句してオリンドを凝視する。
「待て待て待て、師匠とかいう柄じゃない」
イドリックはやめてくれと片手を振り片手で赤くなりかけた顔を隠した。
「え…、じゃあ師範?」
「じゃなくて、そういうのは四十とか五十超えたあたりで呼ばれたいかなー!?」
「いや、どっちにしろ柄じゃないからやめ…、おいそこの馬鹿笑いしてる回復魔法使い。おまえオーリンに弟子入りするとか言ってなかったか。同じように呼んでやれ」
「んっはっは、…えー?あたし?いいわよ。お師匠様!」
「うわああっ!やめてやめて!す、すごい恥ずかしい!」
「わかったか俺らの気持ち!」
「ごめんなさい!」
などと楽しそうに戯れるオリンドに、エウフェリオはこの先もずっとずっとこのまま彼にとって楽しい日々が続けばいいと目を細めた。
「おっ、あそこじゃん。オーリンが掘り当てた水晶」
少し休憩を挟んでから先へ進むとそのオリンドが今日の幸せに至る起点の決定打になったとも言える晶洞が見えてきて、アレグが嬉しそうな声をあげた。二ヶ月前にエウフェリオが彼を連れてきた時は、あまりの卑下と過ぎる人見知りに正直なところ音を上げて出て行くんじゃないかと感じていたが、杞憂に済んで本当に良かった。
「ああ、もうだいぶ掘り進んでますね。…あそこからよくぞここまで整然とした坑道に…」
「ほんとよね。アルちゃんたら聖剣にモノを言わせて掘るんだから。下手したら何割か水晶ダメになってたわよ」
初めての共同依頼の日、コバルトを掘り出した後で掘削跡の奥をちらちらと見ながらあまりにションボリしているので依頼の品は手に入ったのにどうしたことかとエウフェリオが問うと、この先に大きい晶洞があるが時間が掛かるし諦めると言うものだから強化魔法を掛けたことでとても発奮したオリンドの、その目の前で聖剣でもって大人五人分ほどの距離を掘るというか斬り込んだアレグ。という、何というか台無しじみた光景の記憶も新しい。
「オーリンが途中に崩れそうな地盤があるから慎重に掘ると言った矢先にズッパリ行ってたもんな」
「あれ、俺もび、びっくりした。太刀筋が全部、ちょうどそこに鶴嘴入れると一番具合良く掘れるな、っていう境目にみご見事に入ってて。岩の目も完全に捉えて、雲母みたいに綺麗な断面にしてたの、やっぱり腕も目も勘もばつ、抜群に別格なんだなあって、や、俺が言うのもおこがましいんだけど、さすが極めた達人は違うなあって感動したというか、もう言葉に尽くせなくて表現できないのが悔しいくらい…あ、あれ?」
いつも明るく騒がしいアレグがなんだか妙に静かなことに気付いて首を巡らせ探すと四人から少し離れた先でしゃがみこんでいた。
「…えっ、お腹痛い?」
「ちがうちがう。めっちゃ照れてるのよ。ほら、お耳まで真っ赤っか」
言われてよく見ようとする前に素早く耳を隠された。
そうか、褒められすぎるとこうなってしまうのか。新鮮な発見にウェンシェスランもイドリックもエウフェリオも頗る笑顔でアレグを見ている。
なんとなく、普段自分が照れた時に視線を外した外側では、みんなこんな顔をしてるのかなあとくすぐったさを感じたオリンドは明後日の方向に顔を向けた。
「さて、どうしますリンド?もう少し腕試しをしてもよし、新階層に向かってもよしですが」
「えっと、さっきほんとにギリギリだったから、たぶん次の階層は、あかーん、ってなると思う。のと、七十九階層の半分を隠してる仕掛け、早く近くで見てみたい…」
「あー、言ってたわね、見たこともない複雑な絡繰だって。あたしも見たい!」
詳細調査に先立ち、拠点の居間で七十九から八十一階層までの地図を広げてあれこれ相談していた際にオリンドがぽつりと漏らしていた仕掛け扉は、実のところ四人とも興味津々だった。なにしろ冒険者ギルドが誇るAランク冒険者を二年も欺いてきた絡繰なのだ。興味を持つなと言う方が無理な話だろう。
「俺も!俺も見たい、すぐ行こう!」
「俺も異論はないというか実はかなり見てみたい」
「実は私も」
意見は一致した。五人とも悪戯っ子のような笑みを交わすと即座に地図を広げる。
「どうします?いくつかルートは取りましたが」
「最短は使用禁止だしな、俺は次に最短のこのルートでさっさと見に行きたい」
「俺も俺も!」
「そうねえ、色々通るのは帰りか次回でいいわ。リンちゃんは?」
「す、すぐ行ってみたいっ」
もはやわくわくが止まらないといったオリンドの様子に四人はニッと笑うとそれぞれ右手を出して拳を合わせた。
目配せされたオリンドの右拳が遅れてそこに添えられる。
「よっし、そんじゃあ行くぞ!」
「おう!」
合図と共に拳同士を小突き合わされたとき、心臓を揺さぶるような痺れがオリンドの体を走り抜けた。
うあ。これ、…これって、仲間、っていう、やつだ…!
ややあって状況を認識すれば足の先から頭の天辺まで武者震いに似た感動が走り抜ける。
「どした?オーリン!置いてっちゃうぞー!」
十数歩の距離を離れて気付いたアレグに呼び掛けられるまで、心地よく震える右の拳を左手でそっと包んだままオリンドは静かに喜びを噛み締めていた。
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