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021『戦い済んで・1』

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やくもあやかし物語 2

021『戦い済んで・1』 




 ね、やって見せて!


 ソフィー先生が席を外すと、子どものような目をして王女さまが言う。

「え、ここでですか!?」

 ネルが目を丸くする。

 わたしとネルとハイジは、デラシネをやっつけたので、その報告に王女殿下の部屋に呼ばれている。

 時々ソフィー先生が「跳んだ高さは?」とか「敵との距離は?」とか「命中率は?」とか専門的なことを聞いてタブレットに入力して、一通りまとまったんで司令室へ戻って行った。

 それで、それまで真面目に聞いていた王女さまは、自習時間に監督の先生が出て行った生徒みたいに精神年齢の下がった表情になってネルに言ったんだよ。

 耳をクルンチョと曲げて、手を使わずに耳の穴を塞ぐのを見せて欲しいって。

 ほら、デラシネとの戦いでやってたでしょ(019『デラシネの攻撃!』)、耳をクルっと巻いて耳の穴を塞いだ、あれよ。

「え、そんなのやってたのかぁ! 気が付かなかった、ハイジも見たいぞ!」

 ハイジも懸命だったので気が付いていなかったんだ。

「え、あ……では、ちょっとだけ」

 しゅんかん息をつめたような顔になると、ネルの耳はクルンと巻いて見事に耳を塞いだ。

 パチパチパチ

 お行儀のいい王女さまは、キチンと感動の拍手をされる。

「は、拍手されるときまりわるいです(^_^;)」

「おお、それでハナクソとかもほじれるのかぁ?」

 ハイジがバカを言う。

「んなことするかあ!」

「でも、見事です。見事にデラシネをやっつけて、しばらくは森も平和になると、ティターニアもお礼を言ってましたよ」

「ええ、ハイジたちにはお礼来ないぞぉ」

「森の者たちも舞い上がってしまって、気が付いたらあなたたちも帰ってしまっていたそうよ」

「アハ、でしょうね」

 たしかに、あの後の森のざわめきは止む気配が無くて、それでわたしたちも帰ってきたんだし。

「たぶん、このあとお礼を言いにくると思うわよ」

「あ、そうなんですか(^_^;)」

「はい、森の者たちは、そういうところキチンとしているから。あなたたちも、キチンと受け止めてあげて」

「「「はい」」」

「森の件はひとまず置いておいて、もう一つ伝えておくことがあるの」

 え、なんだろう?

「実は、日本から聖真理愛学院の生徒たちが修学旅行で来ることになっていたんだけど、事情で二月に伸びてしまったの。他の先生たちや生徒たちにも伝えておくけど、なにかおもてなしのアイデアを考えておいて欲しいの」

 あ、そうか。いろいろドタバタして忘れていたけど、たしかにそういう話があったよ。

 忘れたまま突然的に来られたら、アタフタして何もできなかっただろうけど、クリスマスや正月を挟んで二か月あれば、じゅうぶん準備もできるだろう。

 ちょっと楽しみが増えた気持ちになって、王宮を後にして学校に戻る。

 エリアゲートをくぐって、学校への道にさしかかると、森の方から風が吹いて来た。

 ピュゥ~

 そして道の真ん中で渦を巻いたかと思うと、背中に大きな蝶々の羽を付けた銀髪のきれいな女の人が空中に現れた!

 ティターニア女王だ(⊙∀⊙) !



☆彡主な登場人物 
やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
 
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