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041『テスト休みと終業式と』

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

041『テスト休みと終業式と』   




 テスト休みというらしい。



「え、うそっ」



 小さく叫んでしまった。

 期末の最終テストが終わったホームルーム、藤田先生が「明日から休みだけど……」と切り出した。

 で、あとの説明も聞かずに喜んでしまった。

「この間、先生たちは採点をしたり成績を付けたり会議をしたりする。出来の悪い奴は終業式までに呼び出して指導することもあるから、バイトなんかしてないで家に居ろ」

 付け加えた但し書きは気いちゃいない。

 とにかく、このクソ暑い中、冷房も無い(扇風機すら無い!)学校に来なくていいというだけでラッキー!



 テスト休みは四日間。うち二日は冷房の利いた希望が丘の結婚式場で撮影助手のアルバイト。

 

 そして、七月二十日の今日は終業式。

 家と結婚式場の冷房に慣れてしまって、ちょっとゲンナリの予感。

 それで、百均で買った携帯扇風機を持っていく。

 工夫して、日傘の柄にマジックテープで留める。

 これだと、駅のホームとかで畳んでても使える。



 パシュ



 改札を出て傘を開く。扇風機を顔の位置につけ直して、スイッチオン!

 うん、ちょっとマシ。

 信号待ちで、一瞬お巡りさんの視線を感じる。

 え、なんかした?

 お巡りさんは一瞬だったけど、信号待ちの人たちがチラチラ見てる。

 あ……ああ、JKの日傘は、ちょっと珍しいんだ(^_^;)。

 

「え、なに、そのカワイイの!?」



 机に突っ伏していると真知子の声。

「子どものおもちゃ? でも、アイデアねえ!」

「あ……」

「ああ、ピンポイントでも、けっこう涼しい!」

「あ、こっちもこっちも」

 お馴染みが寄って来て、ちょっと取り合い。

「このサイズなら単三電池なんでしょうが、どこから入れるんでしょうねえ?」

「あ、分解しないでね(^_^;)、ちなみに、充電式だから」

「おお!」

 ロコが大げさに感動する。

「この軽さで充電式! メーカーは?」

「あ、たぶん中国」

「中国?」

 え、なんで不思議? 十円男もこっち向くし。

「充電はどこから……」

「あ、そこ、USBで」

「「「USB?」」」

「え、ああ、ゲーム機とかパソコンとか……」

 言いながらしまったと思った。

 この時代、ゲーム機もパソコンも無い。きっとUSBなんかもないんだ。

「さすがは人民中国、毛沢東語録だけじゃなかったんだ!」

 変な感動をする十円男、ちょっとヤバイ。



『全校集会、全校集会、校庭で終業式をやるので、全校生徒は校庭に集合しなさい』



 校内放送がかかって、扇風機騒動は中断。

 やれやれ……。



 でも、ピーカンの校庭で終業式とかやる!?

 ついこないだは光化学スモッグとかで外に出るなって言ってなかったぁ?

『一年生は、ようやく学校生活にも慣れ、二年生は中だるみ。三年生は、いよいよ受験が射程距離に入って臨戦態勢です』

 のっけから校長はカマシてきた。

『世の中では四当五落とか言いますが、四時間睡眠では身が持ちません。昼寝も含めて六時間は寝るようにしてください。四時間五時間の睡眠では、脳が十分には覚醒しません。覚醒しきっていない状態での勉強は苦痛なものです。勉強が苦痛だと刷り込まれてしいまうと、その反動で大学に進学してから勉強も研究もしないダ学生になります。ダ学生のダとは駄目の駄、堕落の堕の云いであります。有意義な夏休みを心がけて……』

 もっともな話なんだけど、みんなあまり聞いてない。

 騒がしいというんじゃないいんだけど、選挙期間中、横断歩道で青信号待ってる間に聞きたくもない選挙演説聞かされてる感じ。

 次に朝礼台に立ったのは、生活指導の若杉先生。

『先日、駅向こうの雀荘から「授業時間中にマージャンをやってる生徒がいる」と通報があった。出かけると、本校生三人と他校生一人で卓を囲んでいたので指導した』

 三年生から、微妙に不穏な騒めき。

『未成年の雀荘出入りは、県の条例でも禁止されている。金銭を賭けていることは確認できなかったが、賭けていたとしたら賭博行為にあたり、完全に違法で……』

 次に保健室の先生の注意。

『中には万博に行く人もあるでしょうが、万博の会場は、殺人的な混雑です。六月に入ってから日射病で緊急搬送される人が大勢出ています。万博に限りませんが、夏休み中に出かける人は十分に気を付けてください。水分補給に留意するとともに、日差しを避けるように。帽子、日傘などが有効です』

 日傘のところで、クスクスと笑いが入る。

 やっぱ、この時代、JKの日傘はギャグに近いみたい(^_^;)。



「ねえ、万博の件だけど」



 教室に戻って、藤田先生が来るまでにお仲間で相談。

 話して見ると、みんな旅費を稼ぐのにバイトを入れている。

「まあ、旅費を稼ぐのに三週間以上はかかるから、出発はお盆過ぎだね」

 たみ子が副委員長らしく提案してくれて大筋が決まる。

「宿は、大阪に親類がお寺やってるから交渉してみる」

 佳奈子がいちばん気がかりな宿泊問題に解決策を言ってくれて、ほぼ解決した。

 

 一学期最後のホームルームで成績表をもらう。

 数学が平均点を下回ってたけど、まあまあの点数。

 めでたく一学期が終わった(^▽^)/。



彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
辻本 たみ子            1年5組 副委員長
高峰 秀夫             1年5組 委員長
吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
藤田 勲              1年5組の担任
先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
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