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 僕は死にました。長い闘病生活も虚しく、この世を去ることになりました。たとえずっとベッドの上で、時間の大半をゲームに費やした人生だったとしても、たった一つの後悔以外には、何の未練もありません。  ただ……僕にとって、その未練はどうしても晴らしたいものでした。 「……ゲームに費やした時間を取り戻したい! その十分の一でもいいから、もっと生きたかった!」  もう少し時間があれば、僕の描いた空想を漫画や小説にできた、僕の……生きた証が残せたというのに、人生は無情にも終了してしまいました。  別にゲーム自体が無益だと考えているわけじゃないです。動けない身体の代わりに、空想上だけでも運動することだってできたのですから。  でも……僕はただゲームをプレイしただけ、漫画や小説を読んでいただけ、じっと画面を観ていただけで、何も生み出してきませんでした。 『――ならば、取引をしませんか?』  薄れゆく意識の中、僕に話し掛けてくる『声』がありました。 (あなたは誰ですか?)  そう問い掛ける僕に、その無機質な『声』はただ、『神でも仏でも悪魔でも、好きに呼んで下さい』と返してきました。 『――あなたを過去へと飛ばします。あなたがゲームで培った『もの』、その全てと共に』  それが最初、どういうことなのかは分かりませんでした。しかしその『声』に、僕は藁にも縋る思いで答えました。 (お願いします……)  と。 『――分かりました。では目的の為に、よろしくお願いいたします』  そして消えゆく意識の中、僕はふと、その『声』に尋ねました。 (ところで……僕は何をすればいいのでしょうか?) 『――あなたに果たして欲しい目的はただ一つ……』  その『声』を最期に、僕は過去へと飛び立ちました。 『――どんな手段を用いても構いません。世界の未来の為に……映画上映中にスマホを点けたら死罪となる法案を、絶対に可決させて下さいっ!』  この時、一生をベッドの上で過ごした僕には……映画館が『未知の施設』から『化け物の巣』という認識に変わりました。 R15版 同時掲載『カクヨム様』 『この物語はフィクションであり、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在するものとは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

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